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インタビュー&コラム

ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!

 

 

Q
【愛知県幸田町の事例から】
魅力ある観光マップを作成するために、
人気タレントに町のロケ地スポットを巡ってもらい、
着地型「ロケ地マップ」を作成しました。
制作した「ロケ地マップ」を宣伝するために、町の広報紙へ掲載したいと思います。
その際に、「ロケ地マップ」で使ったタレントの写真を別途使いたいのですが大丈夫でしょうか?
※タレントの芸能事務所と商用カメラマンに「ロケ地マップ」を作成するために
町役場がそれぞれ発注した経緯がある。

 

 

 

A
田中:このケースの場合①「ロケ地マップ」自体をそのまま町の広報紙に掲載するという行為と②「ロケ地マップ」用に撮影したタレントの写真を別途転用したい意向に分けられます。対象となるタレントの写真は商用カメラマンに撮影された写真の著作物です。先ず、①の「ロケ地マップ」を町の広報紙に掲載することを検討すると、掲載には「紹介」と「転載」があります。このふたつの態様について著作権法上の違いどのようなものでしょうか。

 

國松:メインとなる記事があり、その記事の内容に沿って必要な範囲で使用する場合、例えば「こんなロケ地マップができました」と伝える記事や「より面白いロケ地マップの研究」といったような特集を紙面で行い、その際に、記事の内容にしっかりと紐づける形でロケ地マップを掲載するのであれば、いわゆる「引用」(著作権法32条第1項)や「時事の事件の報道のための利用」(同41条)にあたるとして、著作権者(ロケ地マップに使用されているテキスト、イラスト、写真などの著作物の権利者)の許諾がなくても著作権侵害にはならないと説明ができます(これが「紹介」のパターンですね)。
次に、単なる「転載」、つまり,メインとなる記事などがなく、紙面上にロケ地マップを単純に張り付けるような形で掲載するような場合は、上記のような著作権法上の理屈は使えません。写真やテキストがちゃんと認識できる形で掲載する限り、それぞれの著作権者に許諾を取らなければ,著作権侵害になると考えてよいでしょう。
なお、「引用」や「時事の事件の報道のための利用」は、あくまでも著作権,つまり写真を撮影したカメラマンの権利の問題であって、写真に写っている人気タレントの「肖像権・パブリシティ権」には応用が利きませんので注意してください。
こうした人気タレントの権利は「転載」に関する考え方と同じで,法的に無許諾でOKだとする理屈は存在しません。したがって、当該タレントや事務所と契約する際にちゃんとケアしていない限り、肖像権やパブリシティ権の侵害を主張される可能性がありますので注意しておいてください。

 

田中:広報紙での記事の扱い方の違いにより、著作権法では許諾が不要であったり、必要であったりするんですね。そのためには「ロケ地マップ」を制作する場合には、利用方法について事前に十分検討をして契約をしておくことが必要ですね。

 

國松:そうですね。せっかく広報紙という拡散媒体があるのに、同じ広報ツールのロケ地マップと連携ができないというのはもったいないですよね。これは広報用のウェブサイトやツイッターでも同じことがいえます。なので,ロケ地マップを制作する際の各権利者との契約の中で、ロケ地マップのPRに繋がるような形での利用はあらかじめ許諾の範囲に含めておくというケアをしておくことをお勧めします。著作権法の定めこそありませんが,現実の社会では成果物自体を宣伝PRする場面で,当該成果物の中で使用されている著作物がいわば必然的に使用されるのはOK、権利者も特に文句は言わない、といった合意は珍しくありません。決して図々しいお願いというわけではないんです。
広報紙への掲載や,ウェブでの紹介はロケ地マップのPR方法として非常にポピュラーですから、担当者としてよく意識して、ロケ地マップ制作時の各種契約に臨みましょう。もちろん,人気タレントの肖像・パブリシティ権に関しても全く同じことがいえます。

 

田中:②の「ロケ地マップ」用に撮影した人気タレントの写真だけを別途転用したい意向については、事前に契約事項に含まれていない場合には「目的外利用」に相当すると思います。この場合、改めて利用許諾をタレント事務所と商用カメラマンに許諾申請をする必要がありますね。

 

國松:カメラマンの権利に限って言えば,あくまでもメインテーマを設定した上での「引用」や,「時事の報道」という枠組みの中で利用するのであれは、ロケ地マップごと利用しなくても①のケースと同様に許諾を得ないまま使用することができます。気を付けなければならないのは、人気タレントの肖像・パブリシティ権の問題と「転用」のケースです。
契約の時点で「ロケ地マップ」のPR利用であれば転用がOKだという契約をカメラマンやタレントサイドと結んでいても、写真だけを転用的に利用する場合は、一般論としては「ロケ地マップのPRのため」という契約条件を満たさないと判断される可能性が高くなるでしょう。そのため、写真のみを抜き出して利用する場合は契約に定めのない新たな利用行為として、改めて許諾をカメラマンやタレントサイドから得ておく方が良いでしょう。

 

田中:「目的外利用」については、許諾申請をすれば使えると考えても良いでしょうか。

 

國松:自己の権利をどうコントロールするか、というのは基本的には権利者の自由です。よって許諾申請すれば必ず使えるとは限りません。追加の費用が生じることもあり、利用媒体によってはNGと判断されることもあります。これに関しては権利元(本人や所属事務所など)に個別に問い合わせるしかありません。但し、一般論としては,成果物(今回でいえばロケ地マップ)のPR目的に限って利用するのであれば許諾してくれるケースが多いのではないでしょうか。

 

田中:写真の被写体であるタレントの場合には、所属事務所の方針でロケ地マップ以外での利用の制限をされることがあるかも知れないということですね。確かに、タレントのマネジメントの観点からその都度判断されるので、タレントの出演契約時には、想定される利用について事前に良く検討しておく必要がありますね。

 

國松:そうです。写真に写っているタレントの権利は「引用」や「時事の事件の報道のための利用」といった著作権法上の制限規定が使えません。つまり、どの範囲で利用できるのかというのは全て契約条件次第ということです。契約書を作成する際に想定される利用範囲をしっかりと確認し、文言などについても弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。インターネットなどで公開されている契約書の雛形を利用するのも一つの手ですが、定型的な契約書を除き、契約書はあくまでも具体的な合意・条件をもとに都度個別に作成するのが原則です。利用条件に合わせて起案する作業を怠らないよう気を付けましょう。

 

田中:「ロケ地マップ」の作成は、ロケツーリズムの第一歩です。単なる観光チラシではありませんので、伝えたいことを分かり易く、そして臨場感と追体験が出来るような仕組みを入れてください。そのためにも「ロケ地マップ」で使うコンテンツ(タレントや俳優写真、シーン写真、場面写真)の利用については、①目的②期間③範囲④回数を十分検討して申請及び契約書の作成をする習慣を心がけてください。また、万が一検討漏れで「目的外利用」する場合には、必ず事前に申請許諾を受けるようにしましょう。

 

 

■回答者プロフィール
権利処理_20190912_01 (1)

 

 

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ロケーションジャパン10月号吉沢亮

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