「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.27 “ロケ地ツアーの案内で撮影時の写真を私物として紹介する際許諾は必要?”
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!
Q
ロケ地ツアーの案内にロケ地のワンシーン写真を使って紹介したいのですが、私物を紹介するのであれば許諾は不要でしょうか?
A
単に紹介するだけならOK。ツアーのPRや有料コンテンツとして使用するのはNG。
田中:ロケ地ツアーの案内で、このロケ地はどのようなシーンだったかを説明するのに場面写真があれば、より説得力がありますよね。でも、なかなか権利許諾事項として、そこまで忙しくて気が回りません。結局、宣伝物や雑誌の切り抜き、ロケ地記録写真を使用して案内されていることが多いのではないでしょうか。
國松:正規に入手した宣伝物や雑誌の切り抜き自体をそのまま使用することは著作権法上問題ありません。写真に出演者が写っている場合でも、大々的に有料ツアーのPRに使用するわけでなく、ツアー中に小ネタとして紹介するくらいであれば、当該宣伝物や雑誌の所有者として許される範囲の利用だと言ってよいかと思います。自分で撮影した記録写真も基本的には同じだと考えてよいと思いますが、撮影時に写真の使用方法を限定されていたような場合は、その約束を守らないと、出演者サイドから契約違反を理由にそうした行為をやめるよう注意を受けたり、写真の破棄を求められたりする可能性はあると思います。
田中:そのほか、宣伝のために「貸与」された宣伝物であれば、厳密には興行終了後に返却または破棄しなければならず、ロケ地ツアーでの利用は目的外利用となる可能性がありますよね。ちなみに、宣伝物や雑誌の切り抜きの複製物を使うのはやはり問題がありますか。
國松:そうですね。例えば「私的使用のための複製」(著作権法30条1項)など、著作物を許諾なしに利用できる方法はいくつか存在していますが、自治体や企業が主催するロケ地ツアーで使用するために複製することはそのどれにも当てはまりません。そのため、複製して使用する場合は、宣伝物を管理するテレビ局や映画会社、出版社の許諾を得て行ってください。
田中:やはりロケ地ツアーを実施する際に、本格的に宣伝物や雑誌の切り抜きを使う時には、事前に「権利処理確認書」で申し入れをして、利用許諾を得ておいた方がよさそうですね。また、掲載雑誌の切り抜きを利用するときには、出所を明示した方がより丁寧でしょう。では、ロケ地ツアーの行程中に上映する映像の利用についてはWebで詳しく説明いたします。
=====以下、Web版のみ掲載=====
田中:バスの中での映画やドラマのDVD(Blu-ray discを含む)上映は、ロケ地ツアーの雰囲気を盛り上げますね。実はバス車内での映画上映はそれ専用のDVDが存在していて、自分たちでレンタルしたDVDや個人で持ち込んだDVDをバス車内で上映するのは違法行為となります。
國松:そうですね、一般のレンタルや市販用DVDは、あくまでもレンタルや購入者による個人視聴を目的に製造(複製)や販売・レンタル及び上映が許諾されているだけで、個人視聴の範囲を超えて「上映」する行為は許諾の対象に含まれていません。どこまでが「個人視聴」の範囲かという点ですが、著作権法30条1項「私的使用のための複製」で、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」=「私的使用」という考え方が採用されているので、「個人視聴」かどうかも、この考え方をある程度参考にしてよいだろうと思います。そうすると、家族や仲の良い知人同士で出掛ける際に車内で再生するぐらいであれば、個人視聴の範囲だと判断できそうです。一方で、やはりお客さんを集めるツアーなどで上映することは「個人視聴」の範囲を超えているといわざるを得ないでしょう。
田中:それでは映画の宣伝用映像(トレーラー)をツアーバスの中で上映する場合はどうでしょうか。ほかにも、その宣伝映像をロケ地紹介の資料映像としてネットで配信するなどのアイディアもあるようです。
國松:宣伝映像は、そもそも宣伝や関連するもののPRのために制作・貸与されたもので、原則としてはその目的に沿って利用することが求められてはいます。ただ、映画緒の上映前・上映中であれば、基本的にどのような場所・シチュエーションであっても、お客さんにトレーラーを見せること自体が宣伝に繋がるとも考えられますから、その利用の範囲はそれなりに広く考えてもよいだろうと思います。したがって、「●●がこの映画にも登場します、ぜひ映画みてください!」という形でトレーラーをバスツアー中に上映したり、ロケ地紹介用の資料として使用したりすることは許容されるのではないかと思います。
田中:そうなんですね。では、映画の公開期間が終了している場合は、ロケ地紹介の資料映像として使うことは難しいのでしょうか。
國松:その場合、当該映画の宣伝という目的がなくなり、単にバスツアーやロケ地紹介のため「だけ」に使っているということになりますから、これを実施したいのであれば、映画公開前・公開中の利用とは別に、事前に権利処理確認書で申し入れされることをお勧めします。
田中:そうですね。ただ、映画はその後配信やテレビ放送、あるいはDVD化など、様々な二次利用展開が行われますし、その際にはトレーラーが再び宣伝効果を持つことになります。こうした実情を踏まえると、使用場所・方法などしっかり管理ができているのであれば、制作側としても、時期を問わず、ロケ地側がトレーラーを色んな所で回してくれるのは「アリ」だと考えることも十分あると思います。権利処理確認書などをうまく利用して、積極的に提案してみてください。
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