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2022.06.02

脚本開発チーム「WDRプロジェクト」立ち上げメンバーに独占インタビュー!

NetflixやPrime videoなど、近年ドラマや映画などの映像コンテンツを制作・配信するサービスが右肩上がりに需要を伸ばしている。その勢いはコロナ禍でさらに加速。特に韓国のドラマシリーズの人気に火が付き、再生ランキングの上位ランクには軒並み韓国ドラマのタイトルが並ぶ。

 

もはや国境がなくなったドラマ業界の現状に危機感を覚え、「日本のドラマ業界は既存の開発方法を見直し、変革を起こす必要がある」と1人の演出家が立ち上がった。NHK放送局でさまざまなドラマを制作してきた保坂慶太さんだ。NHKではこの夏、保坂さんをリーダーとした「世界を席巻するドラマを作る」ための『WDRプロジェクト』が始動する。今回はその立ち上げメンバーにロケーションジャパンが独占インタビュー!

 

脚本家が切磋琢磨して、才能を磨き合える業界に

『WDR(Writers’ Development Room)プロジェクト』の「Development」は「開発」という意味。公募して選抜した最大10名のメンバーが、オリジナルの企画で脚本を開発するチームを発足するのだ。作品の構想段階からメンバー同士でアイデアを出し合い、ブラッシュアップを繰り返して執筆。1人1作ずつ、連続ドラマの第1話となる脚本を仕上げる。そしてそれらをNHK局内の提案会議にかけ、採択されれば放送が決定する。

 

保坂さんはドラマづくりを学ぶため、2019年に渡米。プロジェクト発足の背景には、その際に感じた脚本業界の文化の違いがある。「海外では、複数の脚本家が『ライターズルーム』に集い、一つのドラマシリーズを共同執筆するのが一般的。才能を持ち合って切磋琢磨する中で、人材が育っていきます。日本にはそのような枠組みはなく、若い世代の芽が出にくい。私たち制作側の問題なのですが、大きな番組になるほど失敗はできず、安心できるベテランの脚本家に頼りがちです。でもそのような考え方では、この先、日本のドラマ業界の未来は決して明るくないだろうと思います」。

 

海外のドラマが日本にいても気軽に見られるようになり、戦う相手が国内の作品だけではなくなっている今、「このままでは自分たちの作るドラマが見られなくなってしまうのでは」という危機感も大きいという。「目指すのは、世界で通用するドラマ。無謀なことを言っているように聞こえるかもしれませんが、僕はあきらめていません。だからこのプロジェクトをやるんです」。

 

ドラマは「文化」。そこにNHKが改革を起こす理由がある

同プロジェクトでは、映像化や放送が確定していない段階で脚本を書き、それを持って放送枠を取りにいく。これは、日本のドラマ業界としては稀なやり方だ。「アメリカでは、例えば50人の脚本家から第1話の脚本を買い、そこから選抜した10本を映像化。さらにその中から出来の良い5本だけを『パイロット版』として放送し、評判が良かった1本だけをシリーズ化する方法をとっています。たくさんの選抜を経ることで、質の高い作品が世に出る。フィルタリングする仕組みがあるわけです」と保坂さん。

 

日本のドラマ業界では、放送が決まっている作品の脚本にしかギャランティが発生しないのが普通。「でも5年後、10年後をつくっていくためには先行投資が必要」と、このプロジェクトでは脚本開発にしっかりと予算を投じているのも特徴だ。

 

プロジェクトメンバーの1人、広報プロデューサーの川口俊介さんはこう話す。「NHKがこのようなプロジェクトを立ち上げる意義は何か。放送は『文化』だからです。かつて景気が落ち込んでいた時期に時代劇が作られなくなりましたが、NHKは作り続けることを決めました。日本のドラマ業界を改革する使命が、NHKにはあると思っています」。

 

世界と対等に戦える、夢中になれるドラマを共に作ろう

プロジェクトへの応募には、オリジナル脚本の提出が必須だが、審査で最も重視しているのは「続きが気になる物語」かどうか。プロジェクトのプロデューサー・中山英臣さんは、「僕はいち視聴者としてNetflixでドラマを見ますが、海外ドラマは知っている俳優がいなくても続けて見てしまう。それはちゃんと脚本がおもしろいからなんですよね。しっかり突き詰めて中身で勝負できるものを作りたい」と話す。

 

プロジェクトには、脚本を書いた経験がなくても物語を作ることを生業にしたいと思っている人なら誰でもチャレンジすることができる。「私は以前から、地方の魅力を発信できる脚本家がいたらいいのにと思っていました。ドラマは地域活性化にも大いに貢献します。地方に根を張っている人にしか書けないものが必ずありますから、ぜひ全国各地から応募してほしい」と川口さん。

 

とは言え、プロジェクトが目指すのは世界基準。「求めているのは本気度です。それは書いた文章に表れますよね。海外ドラマを見て、何が日本のドラマと違うのかをしっかり分析した上で書いてほしい。桁違いの予算や時間をかけて開発される海外ドラマと戦うためにはすさまじい改革が必要で、僕たちはその第一歩を踏み出そうとしています。仲間になりたいと思ってくれる人と共に高みを目指したい」と保坂さん。「いいじゃないですか、戦いましょうよ。世界と」と中山さん。

 

この熱い意気込みに乗った!という人は、ホームページ(https://www.nhk.or.jp/wdr/)で応募の詳細をチェック。

 

 

【プロフィール】

 

 

保坂慶太さん(中央)

朝ドラや大河ドラマ、よるドラなど数多くのドラマの演出を手掛ける。現在は『鎌倉殿の13人』を担当。2019年、渡米しUCLAでシリーズドラマの脚本執筆コースを履修・修了。本プロジェクトのディレクター。

 

中山英臣さん(右)

制作会社を経てNHK入局。『SONGS』や『紅白歌合戦』などの音楽番組を担当。これまでコント、バラエティ番組など様々なジャンルを経験。本プロジェクトのプロデューサー。

 

川口俊介さん(左)

「鎌倉殿の13人」「ちむどんどん」広報プロデューサー。番組の情報発信や地域おこしにも尽力。本プロジェクトのPR担当。

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