「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.32 “ホテルがロケ実績を活用し「部屋でDVDを楽しめるサービス」を提供することは可能？”
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開！「撮影風景を写真で撮ってもいいの？」「お店の宣伝に使ってもいいの？」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます！
Q
ホテルで映画が撮影されました。作品を多くの方に知ってほしいので、部屋でお客さんにDVDなどで楽しんでもらおうと思っています。サービスとして提供していいものでしょうか？
A
業務用DVDを購入すればサービスとして提供することが可能です。
田中 ロケ地となったホテルの作品映像をお部屋で楽しんでもらうサービスは、良いアイデアであると思います。では、市販DVDをホテルで正規に購入して宿泊客に貸与したり、ビデオサービスのプログラムに入れたりすることは大丈夫でしょうか。
國松 市販用DVDは個人的な視聴用に制作されるものであり、権利者はその範囲でしか許諾を出していません。つまり、市販用DVDを購入したとしても、購入者に、「映画の著作物」に係わる著作権法上の権利のうち、「上映権（上映会）」や「頒布権（DVD貸出）」といった権利が許諾されたことにはならないんですね。市販用ＤＶＤを使って上映会やレンタルサービスを行うには改めて著作権者の許諾を得る必要があります。
田中 宿泊客に無償で鑑賞してもらう場合でもダメでしょうか。
國松 難しいですね。確かに、著作権法には「非営利・無償・無報酬」の上映には許諾が不要とする規定があります。しかし、ホテル宿泊に付帯するサービスであれば、それは顧客誘因の営利的行為だとみられるか、宿泊費に利用対価が含まれているだけで無償ではない、として当該規定の適用は受けられないでしょう。また、この規定はDVDを顧客に貸し出して部屋で鑑賞させる「頒布権」への適用はありません。
田中 そうすると、ロケ地となったホテルの作品映像をお部屋で楽しんでもらうことはやはり難しそうですね。
國松 いわゆる「業務用ＤＶＤ」を購入して使用する方法があります。ＤＶＤ販売会社では、市販用ＤＶＤだけでなく、まさにこうした商業的サービスに使用できる「業務用」ソフトを取り扱っている場合があります。このような業務用ソフトは、市販用ＤＶＤとは異なり、購入者による「上映」や「頒布」などの行為についても、予めきちんと権利処理された上で販売されているものですから、安心して使用できます。
田中 DVDの外見は同じように見えていても用途によって許諾範囲が異なるのですね。
では、ロケ地となったホテルの効果的な作品映像の紹介の仕方については、Webで紹介します。
＝＝＝＝＝以下、Web版のみ掲載＝＝＝＝＝
田中 ロケ地となったホテルの作品映像の紹介の方法としては①ロビーなど公衆の場所で上映する方法、②部屋で鑑賞してもらう方法がありました。
國松 そうですね、これらはそれぞれに適した「業務用ＤＶＤ」を仕入れることで実現することができます。
田中 ただ、「業務用ＤＶＤ」は、上映や頒布などによる商業利用の許諾の分だけ、権利者に支払われる著作権使用料が上乗せされているので、通常は市販用DVDよりも高額になります。そうすると、付帯的な宿泊サービスという枠の中で、多くのタイトルを揃えるというのはなかなか難しい側面があります。そこで、たとえば映画本編ではなく、興行前、興行中、ほか市販DVD販促期間中に、その作品のホテルロケ部分をメインとしたトレーラーの上映を承諾してもらえるよう、プロデューサーに提案する方法もあります。
國松 広告宣伝に繋がるのであれば、ロケ受け入れの条件として承諾してくれる可能性もありますね。ただし、期間は限定されてしまいますが。
田中 確かに期間は限定されるのですが、こうした上映が可能になることによって、宿泊者は作品に興味を持つだけなく、まさに「この作品に登場するホテルに今自分がいる」という特別感を味わうことができますし、いい思い出にもなりますよね。また、ホテルロケ場所での「なりきり写真」が撮れるので、こうした作品のＰＲにも繋がる写真をSNSでアップロードしてもらえば、作品にとってもホテルにとっても良いと思います。
國松 残念ながらホテルでの上映等ができなくても、たとえばAmazonプライムやNetflixなどで配信されている作品であれば、作品を鑑賞された方を対象に、ホテルのロケ場所を案内するなどのホテルツアー企画があったら、作品のファンは喜んでくれるかも知れませんね。
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