青森県つがる市 市制20周年記念映画『じっちゃ!』千村利光監督にインタビュー

青森県つがる市の市制施行20周年を記念して制作された映画『じっちゃ!』が10月17日(金)青森にて先行公開、10月31日(金)からは池袋シネマ・ロサほか全国順次公開される。
つがる市を「第二の故郷」と称する千村監督に、作品の見どころと共につがる市の魅力について語ってもらった。
Q1.映画『じっちゃ!』という作品が生まれた経緯を教えてください
今回お話をいただいたきっかけは、僕が13年前に監督した『けの汁』という短編映画からのご縁でして、当時から付き合いのあるつがる市フィルムコミッションさんから、今年市制20周年ということで、何かやりませんか?と2年半前にお声がけいただきました。通常、ご当地映画といわれるものは誰かが出資をし、制作会社が権利を持ち制作することがよくあるパターンなのですが、今回の映画はフィルムコミッションさんが製作として入られて資金調達まで行ったという少し珍しい形となります。フィルムコミッションに所属する方は皆さん地元への愛情が深く、今作においては市内で撮影をして、さらに作中に市のPRになるような要素を入れたいというご要望をいただきました。そこから何度か現地に足を運んでシナハンを行い、『じっちゃ!』という物語が生まれました。
-メロン農家やIターン移住という設定はどのように生まれたのですか?
青森のメロンは東北の方では割と有名で、全国的にはあまりそのイメージがなかったため、そのギャップに着目してメロン農家の話を作りたいと思っていたんです。
シナハンで2、3日つがる市の方に行かせていただいた際、フィルムコミッションの方にこの話をしたところ、地元のメロン農家を紹介してくださいました。実際にメロン畑を見に行き、ここは画になると思いました。象徴的なものがあると、やはりロケーションは決めやすいですね。このメロン畑には象徴的な1本松みたいなものもあり、雄大な自然との関わり方も見えたので、ここで話を作りたいと思いました。実は劇中にも出てくる神楽坂の「メロンとロマン」というアンテナショップは、つがる市が実際に運営している店舗なんですよ。
また、Iターン移住に関しては、『けの汁』を作った時から繋がっています。当時はまだつがる市に馴染みがなかったため、つがる市の良いところについて現地の方120人くらいと話をさせていただきました。大体は定番の観光地の話が出てくることが多かったですが、そうではない話がいくつか出てきたのを繋いだ時に、この土地の人のマインドや文化がなんとなく見えてきました。それで当時作ったのが『けの汁』だったんです。
今回の『じっちゃ!』に関しては、私が初めて青森に行った時の感覚に近い主人公と、そこに暮らしている人たちという対比の物語が作れたらと思っていた時に、言葉でしか知らなかったIターン移住や地域協力隊に結び付いたという感じでした。実際制作中に「これIターンのお話ですね」と言われて「あ、そうか、これがIターンなのか」と。狙ったというより自然とそうなったという感じでした。

映画『じっちゃ!』場面写真
Q2.つがる市の魅力を伝えるためにどのような点にこだわりましたか?
今回の映画の中でトピックとして作っているのがつがるの人間の明るさです。根明さというか。東北の人は大体そうなのですが、最初は人見知りというか、仲間内に入らないとジョークなどは言わないといった印象があるんです。それが、だんだんと馴染んでいくと、どんどん人懐っこい人たちになっていくんです。その感じを劇中では市役所で働いている人たちの雰囲気に映し出しました。
最初中村静香さん演じる主人公のゆきとも距離を感じる様子なのですが、ゆきがつがるの人たちや仕事に向き合っていくうちに、皆さんだんだんと自慢話が始まって和やかなジョークのような会話になり、弱みを見せられるようになってくると、仲間になっているという。そういう人のつながり方を表現しました。
ですので、物語や表現の部分での映画の狙いどころとしては、そこにいる人たちがどういう風に変わっていったかや、その人たちの魅力を知ってほしいというところにあります。
また、地元の方々って自分たちの住んでいる場所に対して映画になるような題材や魅力があるのだろうか?と思われがちですが、人が生きているところには必ず物語があり、その場所にしかない魅力があります。それを制作していく中でつがるの方々に説明していきました。
僕は、つがる市というのは四季がはっきりしていて折々に見どころがあると思っています。
まずはじめに撮りたかったのが冬のシーンでした。冬の凛とした空気がすごく綺麗な場所で、1週間のうち4~5日間くらい吹雪くのですが、たまに太陽が出る日があって、そんな時の雪原がすごく綺麗なんです。平坦なところにずっと雪原が広がって。その凛とした空気をカメラマンにフレームの中におさめてもらいました。
あとあまり知られてはいないのですが、つがる市には桜が多く咲いています。その桜をゆきが最初に赴任した時に撮影に行った桜まつりのシーンに盛り込みました。そのシーンを撮影した平滝沼公園は、実際に毎年桜まつりが行われている場所で、20年前から植樹した1200本の桜が、5年・10年と育ってきた様子が素敵だったため、そこを撮りたいと思っていました。冬から春に移り変わる幕開けの場所なので、ゆきが赴任してすぐという物語のはじまりの場面にもぴったりです。
その後の撮影は、7月のメロンの収穫期に合わせて、夏の始まりを表しています。秋のシーンとしては、物語の中盤戦にあるお祭りのパレードのシーンを再現してもらいました。教育委員会や商工会の皆さん、フィルムコミッションの方々がいろいろと声をかけて集めてくださり、200人超えの市民のボランティアエキストラの方が来てくださいました。
地元の方々にお力添えをたくさんしていただいたおかげでこのシーンをはじめ四季折々を表現する撮影ができました。

映画『じっちゃ!』場面写真
Q3.地方ロケならではの裏話はありますか?
お祭りパレードのシーンでは、地元の婦人会の方々が実際に参加してくださいました。その会の方に指導してもらって、中村静香さんにも踊りを覚えていただきました。教育委員会の方たちが文化を作るんだと積極的に市内に声をかけていただいたおかげで、パレードのシーンに子供たちが参加してくれたことがありがたかったです。映画という形に残ることで、何十年後かに振り返るような思い出になっていればうれしいです。
―まさに地元の方と作り上げた作品ですね。
そうですね。地元の方とどう手を組むか、我々プロとしてどこまで要求するかのせめぎ合いが今回すごく大変でしたが、大切にしなきゃいけないことだと思いました。僕らは作品作りのために一過的に要求をしますが、地元の方は撮影後、作品公開後も何十年と暮らしていくわけなので、その方々がこの作品に参加したんだと、胸を張って終われるようにしなくちゃいけないと自分に課していました。

映画『じっちゃ!』場面写真
Q4.監督的いちばんお気に入りのロケーション・シーンはどこですか?

映画『じっちゃ!』場面写真
Q5.地元の方からのありがたかった協力等があれば教えてください
ありがたいことにたくさんいただき、普段たべる三倍の量のメロンやスイカを食べた気がします!(笑)
Q6.今回の映画は全国順次公開されるということで、これからご覧になる方への
メッセージをお願いします。
僕は神奈川県民で特別田舎という場所に帰るということをしてこなかった人間ですが、どこかそういうことに憧れていました。この映画は、田舎にこだわっている、住むことにこだわっている、家族というものにこだわっている人が出てくる映画になりました。その理由は、多分僕の中にそういう田舎や家族というものが希薄だったので、憧れと願いがあるのだと思います。映画の終盤、小野武彦さん演じるじっちゃが田舎になんでこだわるのか?と聞かれるシーンがあるのですが、皆が帰ってくることができる「ここが故郷だ」という言葉が、僕が一番大切にしたいセリフだと思っています。是非、田舎を持つ方でも、持たない方でも家族というものを見つめなおしながら見ていただけたらいいなと思っています。特別大きな出来事が起きるわけではないですが、家族の繋がり、大切さがこの映画を通じて感じられると思います。
【作品情報】

映画『じっちゃ!』
⼩笠原海(超特急) なだぎ武 しゅはまはるみ 篠⽥諒 ⽊﨑ゆりあ 望⽉雅友
エグゼクティブプロデューサー:坂本憲彦 川嶋⼤史
プロデューサー:堀尾星⽮
撮影:オカザキタカユキ 照明:早坂伸 録⾳:久野貴司
⾐裳:⿑藤あかね ヘアメイク:近藤あかね
編集:⽬⾒⽥健
⾳楽プロデューサー:安藤友章
⾳響効果:桑野春花
ピアノ演奏宮津邦彦
助監督:屋代晴⾹
宣伝:平井万⾥⼦ プロデューサー補:若井恵利⾹
製作:つがる市フィルムコミッション
制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
配給:S・D・P
協賛: つがる市
特別協賛:つがる市建設業協会 つがるロータリークラブ
つがる市市制施⾏20周年記念作品 ©つがる市フィルムコミッション 本編93分公式ホームページ ▶jiccha-movie.com X アカウント▶https://x.com/jiccha2025
10月17日(金)青森にて先行公開
10月31日(金)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開


















