舞台は埼玉県秩父市。アニメ映画『空の青さを知る人よ』で描かれる風景
絶賛公開中のアニメ映画『空の青さを知る人よ』は、長井龍雪監督の埼玉県秩父市を舞台にした『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがっているんだ。』に続くファン待望の「秩父三部作」の新作だ。
あかねとあおいという2人姉妹が暮らす秩父に、あかねの元恋人で、鳴かず飛ばずのミュージシャン・金室慎之介が帰郷、姉妹と再会する。しかし、そんなあおいの前に“しんの“が現れる。しんのは時空を超えてやってきた、18歳の慎之介だった!
慎之介・しんのの声を担当しているのは、ここ1年で急激に存在感を増している俳優・吉沢亮さん。昨年公開となった出演映画は8本に上る人気俳優だ。そんな吉沢さんは今回、初めての声優に挑戦している。また、あかねの姉であり、市役所に勤めているあかねの声を担当するのは吉岡里帆さん。両親を事故で亡くした後、あかねを親代わりになって育ててきた、優しく芯が強い女性を見事に演じている。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがっているんだ。』そして『空の青さを知る人よ』の舞台が秩父である背景には、原作者の・岡田麿里さんの出身が秩父であることが関係しているという。アニメの聖地と呼ばれる埼玉県だが、秩父三部作に他作品とはどこか違う独特な存在感があるのは、岡田さんの故郷への想いも影響しているのかもしれない。
『空の青さを知る人よ』の聖地として外せないのは、やはり「旧秩父橋」。
長井作品ではお馴染みの橋で、『あの花』『ここさけ』『空青』聖地巡礼と言ったらまずここ! という方も多いのではないだろうか。
埼玉県の指定有形文化財でもあり、ロケーションも抜群だ。他にも劇中には実際に存在する場所が数々登場する。
音楽祭が行われる「秩父ミューズパーク野外音楽堂」、演歌歌手・新渡戸団吉をあかねらが迎えに行く「西武秩父駅」、あかねたちが訪れる焼肉店「高砂ホルモン」などは、スタッフもロケハンで実食している。
登場キャラクターたちと実際に同じ場所に立ち、シンクロした体験をできることも秩父三部作の魅力の一つだ。
『空の青さを知る人よ』の聖地巡礼では前2作と異なり「作品で描かれていない秩父」を巡るファンも出てきた。画面に描かれたピンポイントな聖地だけではなく、作品の世界観全てを感じ取るため「秩父」全体を聖地と考える流れも出てきたようだ。
今作『空の青さを知る人よ』は前2作が若者たちを描いた作品なのに対し、「かつて子供だった大人」のあかねや慎之介の揺れる想いも描いた作品となっている。
山に囲まれた秩父をあおいが「巨大な牢獄」と称する場面もある。何があおいにそう思わせたのか。かつてのあかねや慎之介はどうだったのか。そして物語の最後で彼らの目に映る秩父はどう変化していくのか。様々な視点で聖地・秩父に注目したい。
聖地巡礼の楽しみ方として、一つ心にとどめておきたいことがある。
本作には誰もが入れる場所以外に、個人宅や私有地といった外部からの立ち入りをお断りしている場所も数多く登場する。公式ではそういった場所への立ち入りはもちろん、情報の拡散を固くお断りしている。
台風19号の被害により巡礼できない場所もあるとのこと。ファンには言うまでもないことではあるが、巡礼の前には情報を調査し、注意して欲しい。
『空の青さを知る人よ』で描かれた「秩父」は実在する場所ではあるが、観る人一人ひとりの「故郷」の鏡像でもある。映画を観た後、自分の故郷の風景も思いだしてみて欲しい。