「オロナミンC」のCMのまちはどこ? 東京から4時間の長崎県島原市が選ばれた理由
現在放送中の大塚製薬「オロナミンC」のCMは長崎県島原市などで撮影(画像はCMより)
映画・ドラマ・アニメなどのロケ地を巡る「聖地巡礼」が注目を集める昨今。映像作品に目が行きがちだが、「CM」のロケ地も実は話題になっていることをご存知だろうか。
その例として、いま脚光を浴びているのが長崎県島原市だ。
かつて島原城の城下町として栄えた同市。当時の名残が見られる街並や、市内約70か所に点在する湧水スポットなど情緒あふれる街並みが魅力的だ。
現在放送中の大塚製薬「オロナミンC」のCM「出てこい元気 2023 夏」篇は、そんな島原市の風景を映し出す(脚注)。事前にロケ場所や出演者を決めずに制作隊が市内を巡り、その場で市民の承諾を得ながら撮影された。動画は湊町付近の船着場や島原駅前のサンワ理髪館、島原鉄道列車内など、島原の日常が垣間見える内容になっている。
撮影は市民にその場で協力を仰いだ
ほかにも、昨年放送のマクドナルドCM「夏は吸い込むものだ」篇や、2021年放送のキリンレモンCM「新!無糖でた。長崎大三東篇」は、同市内にある島原鉄道・大三東(おおみさき)駅がロケ地。「日本一海に近い駅」と言われ、青い海と空に黄色い列車が映えるフォトジェニックなスポットだ。キリンレモンCMで上白石萌歌が立ったフォトスポットや、願い事を書く「幸せの黄色いハンカチ」などの仕掛けもあり、週末には家族連れを中心ににぎわっている。
しかし東京から島原市までは飛行機・バス・電車を乗り継いで約4時間と、けして近いとは言えない距離。なぜそのような状況であってもロケ地に選ばれるのだろうか。
大塚製薬の本CM担当者に聞いてみると、
「日本全国の誰もが見た時にどこか懐かしさを感じられるように、ビルの並ぶ市街地から自然溢れる景色まで、幅広いロケーションがあること、老若男女さまざまな人々を撮影できそうなこと、長崎県に縁のあるスタッフがいたこと等から、長崎県での撮影を決めました。
その中でも島原市はさまざまな素晴らしい風景があることに加え、市役所の方をはじめとした皆様の協力体制が手厚かったこともあり、結果として多くのシーンの撮影を行うことができました。」
ロケーションの豊富さが決め手になり、丁寧なロケ対応がその後の広がりを生んだという。同CMは10月まで放送予定だ。
ロケ実績を移住促進に活用
島原市は作品をシティープロモーションにつなげるべく、2020年にロケ受け入れを積極的に始めた。徐々に受け入れ件数を増やし、直近1年間では「バナナマンのせっかくグルメ!!」(TBS)や「ドキュメント24時間」「ひむバス!」(NHK)など、様々なジャンルの番組に取り上げられている。
今年8月末にはこれらの撮影実績を生かし、市のシティープロモーション課で移住定住を促すパンフレットを制作。市の紹介や地図、生活情報に加え、CMや映画のワンシーンを切り取った場面写真を掲載しているため、観光マップとしても楽しめる。市内各所に設置される予定だ。
今年8月末に発行されるシティプロモーションパンフレット
同課の担当者は、
「大三東駅はCM放送を機に『聖地化』が進み、訪れる人が見違えるほど増えました。ロケは映像作品を通して地域の魅力を全国に発信できるだけでなく、映像作品を観た市民が島原の魅力を再認識し郷土愛(シビックプライド)の醸成にも繋がっています。
来年は島原城が築城400年を迎えるので、これまでの実績も活用しながらプロモーションに注力していきたいです」
と話す。
さまざまな可能性を秘める「ロケ」に今後も注目だ。
脚注…同CMは島原市と長崎市で撮影。