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権利処理
2022.03.17

「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.29 “映画やテレビの紹介動画のHPに埋め込んでいいの?”

ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!

Q

映画やテレビの紹介動画をホームページに埋め込んでいいのでしょうか?

 

A

公式紹介動画については、動画共有機能を使ってホームページに埋め込むことができます。

 

田中:紹介動画を「埋め込む(み)」手法について、いわゆる「通常のリンク」との違いはなんでしょうか。

 

國松:動画の「埋め込み」は別名「インラインリンク」とも呼ばれ、ユーザーにリンクをクリックなどさせ、動画が置いてある別のウェブサイト(リンク先)に飛ばす「通常のリンク」とは違い、ユーザーを飛ばさずに、もともとのウェブサイト上(閲覧ページ)で、リンク先の動画ファイルがユーザーの端末上に自動表示される仕組みのことを言います。要するに、ユーザーから見れば、閲覧ページに、リンク先の動画が再生可能な状態でそのまま設置されているように見える状態のことですね。

 

田中:紹介動画を自分のホームページ上で情報発信に使えると、ロケ地になった地域の情報発信と、ロケ地作品のPRのどちらにもメリットがありますね。この手法を使うためには何か配慮すべき点はありますか。

 

國松:「インラインリンク」は、見た目には閲覧ページで動画が再生されているように見えても、実際はユーザーに対して動画ファイルを送信しているのは閲覧ページではなく、もともと動画が置いてあるリンク先になります。なので、著作権法的には閲覧ページで著作物を配信しているとは判断されません。つまり、原則としてインラインリンクを行う上で、動画ファイルの著作権を気にする必要はないということですね。

 

田中:「原則」ということは「例外」もあるということでしょうか。

 

國松:リンク先の動画が違法配信だと知っていたり、または当然そう気が付くべき状態であったのに、うっかり自分のウェブサイトにインラインリンクを設置していたような場合、その行為がリンク先の違法配信を助長したとして、著作権侵害の幇助(ほうじょ)に当たる可能性を示唆した裁判例があります。なので、インラインリンクを行う際はリンク先の動画が違法配信ではないことをよく確認しましょう。

 

田中:紹介動画の埋め込みはとても効果的なマーケティング手法なので是非使いたいですね。また、ロケ地となった製作側とのコミュニケーションについても重要であると思います。違法配信に関してリンク先の楽曲利用許諾状況や相互リンク連携、オリジナル動画交渉についてWeb版で詳しく説明します。

 

=====以下、Web版のみ掲載=====

 

田中:「インラインリンク」などのコンテンツDXは、受け皿となるデバイスの進化と共に複雑になりますね。

 

國松:そうですね。技術の進歩や新機能の開発などによって、デジタルコンテンツの扱い方はどんどん多様化・複雑化していて、法律の方が後追いになっているのが現状です。

 

田中:そのような状況の中では、何が適法で何が違法なのかきちんと見分けられるリーガルマインドを持つことが、ますます重要になってきます。リンク先の動画サイト運営者の楽曲利用許諾状況も確認する必要がありそうですね。

 

國松:そのとおりです。「リンク」に関していえば、広告収入目当ての違法動画への安易な誘導が後を絶たず、社会問題になっていた状況を受け、令和2年の著作権法改正で、違法アップロードサイトに殊更に誘導するサイト(いわゆる「リーチサイト」)が違法化されました。リンク提供者の行為は著作権等を侵害する行為とみなされ、差止請求(著作権法112条)、損害賠償請求(民法709条、著作権法114条)等の対象となるほか、刑事罰の適用もあります。また、インラインリンクに関しては、先ほど述べたように場合によっては著作権侵害の幇助に当たる可能性があります。つまり、これらの行為はいまや立派な犯罪行為になるということです。かつて適法だったことが、ある日から犯罪になることがあるのがこの世界ですから、気を付けてください。知らなかったでは済まされませんからね。

 

田中:一方で、適法なサイトへの無断リンクは法律上問題ありませんが、リンクにもマナーがあります。ロケ地となった自治体などは、製作側とのコミュニケーションもできるので、より良好な関係を築くためには、事前にリンクしたい公式ウェブサイトなどのサイトポリシーをよく確認して、必要であれば通知をお勧めします。そうすると、たとえばコンテンツの移動情報があれば、先方のサイト管理者が教えてくれてデッドリンクになることが避けられるなど、色々なメリットもあり得ます。また、うまくいけば相互リンクを実施してくれるかも知れません。こうしたお互いにPR効果を高めるような情報発信は有効なので是非提案してみてください。出演者からのメッセージやオリジナル動画を製作委員会から提供を受けられるとPR効果も高まります。

 

 

■回答者プロフィール
権利処理_20190912_01 (1)

 

 

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