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権利処理
2019.09.13

「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.11 “映画製作している制作会社が場面写真の使用に関して許可出しをできない場合もあるの?”

ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!

Q
撮影時に制作会社にシーン写真の使用を依頼し、
口頭でOKと言われていました。しかし正式に打診したら、
制作会社から配給会社に回されました。
映画を製作している制作会社が
許可を出すことができない場合があるのでしょうか?

 

A

YES!

田中:映画の著作物に関する権利の課題ですね。映画制作会社と配給会社の権利について確認しましょう。今回はロケ地での映画のシーン写真を利用したいとの前提に立ちます。著作権は創作と同時に著作者に原始的に帰属するのが原則ですが、映画の著作権は「著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に著作権が帰属する」ことになっています。この仕組みにより、制作会社が映画を実際に制作していても、その制作会社が映画の著作権者とならない場合があり得ます。

 

國松:映画著作物の著作権の帰属を定めた著作権法29条ですね。著作権法16条では映画の著作物の著作者は、その著作物の「全体的形成に創作的に寄与した者」、例えば実際に撮影を指揮したディレクターや音楽監督等だとされています。しかし、主に劇場用映画については、完成後の様々な利用展開を想定し、法律で権利関係をより流通に適した形、つまり経済的・法律的に映画製作に責任を持つ者が一括して著作権を保有する形に修正しています。ここは、著作者=著作権者という著作権法の一般原則(著作権法17条)と扱いが異なるところです。今回、制作会社はあくまで映画の制作専門で、映画著作権を持ち、その全体に経済的・法律的責任を負うのは別会社ということですね。

 

田中:では映画の配給会社が著作権者になるのでしょうか。日本の配給会社には、自社製作の映画の配給を行う会社と映画の配給のみ担当する会社があります。前者は、映画の著作権者ですから映画のシーン写真を許諾する権限があります。一方、映画の配給のみを請け負っている後者は映画のシーン写真を許諾する著作権者ではないということになりますよね。

 

國松:製作に関わっていない以上は、契約により権限が付与されている修正等がない限り配給のみを請け負う配給会社が映画の著作権や利用許諾権限を持つことは原則としてないでしょうね。この場合の配給会社は法的には「頒布権」つまり全国の映画館に配給する権利の許諾を受けた単なるライセンシーだという説明になるでしょう。

 

田中:ちなみに、映画の配給のみを請け負っている配給会社の場合でも、映画の著作権者から許諾を受けた映画の一部を宣伝のために利用し、第三者への許諾する権限を与えられている場合があります。一般的には「トレーラー(trailer)」と呼ばれている予告編の利用許諾です。

 

國松:今回は配給会社に話を回されたということですから、配給会社が①そもそも映画の著作権を持っている、若しくは②配給会社として、シーン写真の利用許諾を行う権限を契約により付与されている、ということかも知れません。いずれにしろ今回はまず指示通り配給会社に問い合わせるのがよいでしょう。
田中:映画は劇中の音楽を含めて多くの権利者で成り立っています。脚本や音楽は権利者の所属する団体規程等により事前申請と利用料が発生する場合があるので留意してください。

 

実際に成功しているのはこの地域!千葉県茂原市今号(P58~)の茂原市特集でシーン写真を掲載ドラマ『チア☆ダン』やドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』などのロケ地になった茂原市は、「ロケツーリズム協議会」で権利処理について学び、今号の特集ページではシーン写真やDVDジャケットの掲載に成功している。

 

 

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権利処理_20190912_01 (1)
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