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2020.03.27

「久住昌之のくす玉割り千曲紀行」

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2年ぶりに長野県千曲に行った。QUSDAMAのライヴを、千曲市上山田文化会館で行うためだ。

前に行った時は真夏だった。今回はまだ風が冷たい2月29日。

千曲について、まず楽器を会場に運び込み、市の人と、お昼を食べに行く。

 

前回来た時、気になっていたけど入るチャンスのなかった「手打そば 豊年屋」。

 

豊年屋

 

店構え、暖簾がシブくて、モロ、好み。戸口に貼ってあった「名物 おしぼりそば」というのが超気になっていた。最初、飲食店で食べる前に手を拭くおしぼりかと思って、どんな蕎麦かと思った。

聞くと、大根おろしの絞り汁で食べるそばだという。なーんだ、おろしそばなら知っている。と思ったら、どうやら少し違うらしい。頼んでみる。

出てきたのを見て、驚く。つけだれが真っ白。細かい白い泡が表面を覆っている。

 

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「かなり辛いですから、注意して下さい。添えられた味噌を少しずつ汁に溶いて、蕎麦を付けて下さい」

 

言われて、箸で蕎麦を2、3本取って、恐る恐る汁につけて、外国人のように口に入れた。

うわっ、これは辛い!大根おろしの辛いのは本当に辛いが、これはさらに未体験の辛さ。強烈。いつものように啜ったら、確実にむせて、咳き込んで、大惨事になっただろう。辛子ともチリとも違う、鼻にも抜けて喉にも舌にも胃袋にもカーッとくる辛さ。

 

味噌を少し溶いてみる。確かに少しマイルドになる。が、焼け石に水だ。少しずつ少しずつ食べる。蕎麦自体はキリリと締まっていて、すごくおいしい。

隣のメンバーは「中華そば」を頼んでいた。おいしそうだったので、ひと口啜らせてもらって、思わず、

「あー、平和だぁ」

と言ってしまい、笑われた。

 

おしぼりそばは、食べ終える頃、ようやく辛さが落ち着いてきて、最後のひと口の頃、大根のおいしさもようやくわかってきた。これは何度か食べないと、本当のうまさがわからないだろう。熱いそばうどんは、さらに辛いらしい。今の時点では到底無理だ。

 

ソースカツ丼

 

一切れもらったソースカツ丼のカツも、独特のソースがしみていて、バツグン。カツとご飯の間の千切りキャベツが嬉しい。

 

 

千曲に来たら、豊年屋の向かいにある光文堂に行くのも、もうお決まりコース。駄菓子やおもちゃがギッシリ。ボクは今回「ようかいけむり」と「セミカチ」をゲット。これ、子供の頃やったなぁ。まだあったか。妖怪の絵が味があり、素通りできない。占いのついた飴を買って、移動の車内、バンドのメンバーで回し、当たってるとかハズレてるとか、大笑い。

 

02 光文堂

 

03 光文堂

 

 

さて、QUSDAMAライヴだ。今回は、去年秋の台風の復興支援の無料ライヴ。

 

新型コロナウイルスのことがあるので、入り口でアルコール消毒と、体温チェックなどがある。ボクらもこの日まで、手洗いとうがいを徹底しての千曲入りだ。

この時勢でお客さんの入りはどうかなと思ったけど、何と100人以上が来てくれた。広い会場にゆったり座れて、結果的に感染対策になったのではないかな。

前半のプロジェクタートークもいっぱい笑ってくれて、演奏には手拍子も自然に起こって、ボクらもすごく楽しかった。

 

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04 ライブ02

QUSDAMA
久住昌之(Vo,Guitar,Ukulele)
宇賀まり(Sax,Percussion,Chorus)
眞間麻美(Piano,Grocken,Chorus)
深津良輔(Percussion,Chorus)

 

 

恒例のくす玉割りだが、広いステージに対して米粒のようなくす玉が天井から降りてきて笑ったが、割ると歓声が沸いた。くす玉の不思議なおめでた力。

 

小さいくす玉

 

04 ライブ

 

作って持っていった、手描き千曲スペシャルの箸置きもたくさん売れてよかった。

 

千曲用ふらっと箸置き

 

スタッフを含め参加者全員が楽しんでくれてるのが、伝わってくるライヴだった。

 

 

さて、片付けて荷物を宿に置いたら、打ち上げだ。今回お邪魔したのは「羽衣」

さん。イタリアンで修行した息子さんが、九州からお嫁さんを連れて戻ってきていて、家族でおいしいものを出している。

 

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鍋も一品料理も全部おいしかったけど、ボクが一番おいしかったのは、前にも千曲で食べた醤油豆。しかも、ここは女将さんが自ら作ったもの。塩っぽさが抑えられていて、絶品。おかかと刻み葱をのせて食べる。この店ではおいしい山芋のスライスを敷いてあった。この醤油豆だけで、旨い千曲の地酒姨捨正宗がいくらでも飲める。

 

醤油豆

 

このおいしさが忘れられず、ボクは東京に戻ってから、千曲の「味噌蔵たかむら」からネットで取り寄せたほどだ。

 

05 羽衣02

 

 

飲んだ後は、温泉街さんぽ。店がたくさんあって面白い。スナック「らぶ&ちびくろ」、どうしてそんな名前になったのか、笑って考えながら歩く。「バー ウルワシ」も、ちょっと思いつかない店名だ。

そして、酔い心地で射的!この温泉街の射的場は、ちっともうらぶれた感じがせず、明るく現役感ピチピチ。やっぱりコルク弾がマトに当たって、落とせると快感だ。みんなでやって、いい大人がやんやの小騒ぎ。かわいい景品を二つもらって帰る。

 

射的

 

 

泊まった宿は「梅むら旅館 うぐいす亭」。入口の太鼓橋が印象的。帰ったら、浴衣に着替え、顔を洗って手を洗って歯を磨いて寝るだけ。あっという間にぐっすり。

 

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そして翌朝6時。宿で目覚めたボクは、急いでひとり4階の大浴場へ。

温泉の朝風呂、最高! しかも入浴客はこの時、ボクひとり。大浴場独占。露天風呂独占。ライヴの疲れが、溶けて消える。誰もいないから「あー!」って声に出すと、なお気持ちいい。

 

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本当にいい湯だった。戸倉上山温泉の少し白く濁ったお湯、大好き。温泉は、やっぱりあったまり方、疲れの取れ方が全然違う。いつもライヴとセットにしたい。

 

 

帰る日の早めのお昼に「料理倶楽部 ろっかてい」に連れて行ってもらう。

ここがまた何とも独特不思議のムードに包まれた、古い店だった。

 

ろっかてい外観

 

建物は立派な日本家屋なのだが、店は入口からして洋館ぽい。宮沢賢治の童話に出てきそうだ。店の中の作りも、すごく変わっていて、カウンター席が小物がたくさんあって楽しいので、メンバーと横並びで座る。テーブル席も個室っぽい和室もある。

 

ろっかてい店内

 

店の中に飾ってある古いものがいちいち目を引く。ランプ。燭台。大きな絵皿。中身の入った古い古いビール瓶。竹久夢二の絵。番傘。革の旅行カバン。全部アンティーク。雑然としているけど、それらは、ここにあるべくしてあるように収まっている。

この店は、市民に昔から親しまれる洋食屋さんだそうだ。今年で開店58年。年季が黒光りしている。

いろいろなものを注文して、分けて少しずつ食べることにする。

 

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洋食屋と言ったらオムライス。デミグラスソースで。まず見た目が美しい。大きくて、形も、ソースのかかり方もきれい。絵本に出てきそうだ。懐かしいおいしさ。

 

オムライス

 

 

そしてこの店で一番人気という豆腐ステーキ。これは、見たこともない分厚いもので、ソースが甘塩っぱく、ご飯に合う! みんな写メを撮りながら食べる。

 

豆腐ステーキ

 

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ハンバーグもおいしかった。これもライスをモリモリ食べてしまう味。付いているじゃがバターがまた侮れないおいしさで、気がつくと無くなってる。

角煮丼も、刻み海苔と温泉卵がのっていて、おいしそうだった。でも、どの料理もボリュームたっぷりで、ボクはそこまで辿りつかなかった。

 

お腹いっぱいになって、車で上田まで送ってもらった。

途中、千曲川を見に行く。去年歩いた橋のたもとに行って、ビックリ。川の風景が全然違う。倒れた草、洗われたような河川敷。物凄い激流だったことが、今でも生々しくわかる。その範囲が土手の上から川の周辺、見渡す限りといった印象。堤防決壊ギリギリだったというけど、想像するだけでゾッとする。温泉街の人々はさぞ怖かったことだろう。

 

08 千曲川

 

 

台風19号の時、千葉などの映像はニュースでたびたび流れたが、千曲のこの地区までがこんな風だったとは、東京では全然わからなかった。まだ復興には時間がかかりそうだ。また来ます、千曲!

 

09 メンバー

(戸倉上山田温泉旅館組合青年部の皆さんと)

 

 

久住昌之さんプロフィール
東京都出身。作画・和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」で描いたマンガ『夜行』でデビュー(81年)。実弟・久住卓也とのユニットQ.B.B作の『中学生日記』(青林工藝舎)で第45回文藝春秋漫画賞を受賞。原作マンガ『孤独のグルメ』(扶桑社)『花のズボラ飯』(秋田書店)『食の軍師』(日本文芸社)『昼のセント酒』『野武士のグルメ』(幻冬舎)『のの湯』(秋田書店)『サチのお寺ごはん』(秋田書店)がドラマ化されている。
千曲ではおしぼりそばの大根に驚かされたが、昨年2019年、絵も文を書いた絵本『大根はエライ』(福音館書店)で、第24回日本絵本賞を受賞した。

 

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