舞台・広島ロケのこだわりは? 映画『ミステリと言う勿れ』松山博昭監督インタビュー
ファンに人気の広島編が映画化
累計発行部数1800万部を突破した田村由美の大人気漫画『ミステリと言う勿れ』の実写映画が9月15日に公開された。22年1月にフジテレビで放送された同名ドラマが話題を呼び、主演の菅田将暉さんをはじめとした豪華キャスト陣が物語を彩る。
描かれるのは原作ファンの間でも人気の高いエピソード、通称“広島編”。22年12月にクランクインしてから、約2か月に及んだ撮影を松山博昭監督に振り返ってもらいながら、作品にかける想いを聞いた。
菅田も熱望の「広島編」
松山監督(左)と菅田将暉(右)
――待望の映画化ですが、なぜ広島編なのでしょうか。
松山監督:ドラマでは初回のエピソードから放送していましたが、いわゆる「広島編」の物語のスケール感と放送スケジュールの都合でとばしていました。ただ広島編は原作ファンに人気ですし、個人的にもとても好きなエピソードだったので、映画化するにあた
ってぜひにという思いがありました。
また菅田さんと、映画はどのエピソードがいいかディスカッションする機会があって、広島編が良いよねと話をしていました。
――ドラマと映画で、演出面で変えたところはありますか?
松山監督:ドラマを映画にするときって、大体は映画なりの豪華さを出すように言われますが、今回は全くそれがなかったです。すでに『ミステリと言う勿れ』という世界観ができあがっているので、その通りに作っていくことを意識しました。
汐路(原菜乃華)と整(菅田将暉)の掛け合いに注目
――ドラマから続投の菅田将暉さんはどのような存在でしたか?
松山監督:全ての中心になっていましたね。菅田さん演じる久能整(くのう・ととのう)の発するものに対して皆が変わっていくので。
――キーマンの一人となる狩集汐路(かりあつまり・しおじ)役の原菜乃華さんは、かなり厳選して選ばれたのですか?
松山監督:オーディションを6日間ほど行い、かなりの方にお会いしました。原さんは我々が思っていた汐路のイメージに一番近かったのと、それに付随する実力を持っていました。明るさの裏に傷や悲しみを背負っている難しい人物像を表現できる方でしたね。
――その心の傷を、固まる前のアスファルトで表現しているのが印象的でした。
松山監督:今回は汐路の「傷」を強調したかった。子供の頃につく心の傷というのは、誰にでも何かしらあるものだと思います。そういう意味では汐路の心の傷に、整くんの言葉が何度も何度も響いていきます。
広島電鉄を貸し切って撮影
雪降る中での撮影も
――撮影は全国各地で行われましたが、原作と同じ広島でのロケもありましたね。キャストの皆さんの心持ちも違っていましたか?
松山監督:その場所に立って感じる空気や、お芝居に与える影響は何かしらあると思います。例えば、原爆ドームの前で整が手を合わせるシーンも、グリーンバックと実際の場所とでは当然違いが生まれます。
また、本作の舞台となる倉敷の旧野崎邸は、キャストの皆さんが最初に見た時に「うわっ」とのまれるような反応をしていました。場所というより、歴史や時代の重みみたいなものを感じられたのが大きいかもしれません。
――整が広島電鉄の車両内にいるシーンがありましたが、そちらも本物の車両ですか。
松山監督:そうですね。戦時中に走っていた車両を特別に借りて使っています。1人で原爆ミュージアムに行った時に、ガイドさんに教えていただきました。
なので劇中で整が乗っていたのは第二次世界大戦の頃に走っていた、レトロで重厚な雰囲気の車両です。
「灯り」で感情を表現
喫茶店のシーンに隠された「灯り」のこだわり
――監督が一番印象的だったシーンは?
松山監督:喫茶店での撮影ですね。ロケでよく使われる西新井の店舗ですが、あそこまで作り込んだのは初めてじゃないかというぐらい、ステンドグラスや壁を全部作り込みました。物語自体が転換するとても大事なシーンだったので、菅田さんも「今日はここが勝負ですね」と仰っていました。
――演出上の意図した作りこみもあったのでしょうか。
松山監督:ステンドグラスの灯りをどう作るかは結構気にしました。夕焼けが差し込む緊張感のある雰囲気で、悲しみだとかを感じていただけたなら良かったです。
――ほかにも灯りを意識したシーンはありましたか。
松山監督:終盤に登場する松井家ですね。原作だと庭のクライマックスのシーンです。内容的に明るすぎず暗すぎず、明け方に微かに日が差し込んでいる空間で撮影したいと思っていました。ロケでは見つからずセットを作りましたね。
――最後に、これから映画を見ようとしている皆様へメッセージをお願いします。
松山監督:連続ドラマを見ていただいた方も、そうではない方も、きっとこの整という人物の言葉に考えさせられることや、心動くようなことがたくさんあると思います。ぜひ劇場に整さんに会いに来てください。
【作品情報】
2022年9月15日(金)公開
出演者:菅田将暉
松下洸平 町田啓太 原菜乃華 萩原利久 柴咲コウ
監督:松山博昭
脚本:相沢友子
原作:田村由美「ミステリと言う勿れ」(小学館「月間フラワーズ」連載中)
配給:東宝
製作:フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社
©田村由美/小学館 ©2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社