映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』木村真人監督インタビュー

FANTASTICSの八木勇征が主演を務め、鈴木おさむの人気朗読劇を映像化した映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』。
今年2月に公開され、多くの観客に深い感動を与えた話題作がついに10月8日(水)に円盤化!
”人生で一度だけ魔法を使える”と伝えられた青年4人の人生の選択は…?
“魔法”を通して大人への階段を上ってゆく、4人の青々しい姿を撮影した木村真人監督に、作品の見どころやこだわり、ロケ地について聞いた。
(C) 2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会
Q 公開後、改めて伝えたい本作のみどころは?
この映画は、タイトルだけみると一見ファンタジーのようですが、家族への思いや深い友情、そこに流れる果てしなく慈悲深い愛情がメインになっていて、高校生4人の蒼々しい姿を存分に楽しんでいただける物語となっています。どこか自分の人生にリンクする部分もあると思いますし、観た後にきっと少しだけ心が優しくなる映画です。そこに着目していただけたら嬉しく思います。
映画館で既にご覧になった方々には、作品のテーマカラーなんていうものも探しながら観ていただく楽しみ方もあるかと思います。僕はいつもタイトルと脚本から、世界観を作るテーマカラーを必ず決めるのですが、今回は、不安と葛藤がないまぜになる世界の中で、高校生たちの背中を追い風のように吹いて押してくれる色が合うなと思い、「あさぎ色(浅葱色)」をテーマカラーに用いました。そんな若葉が芽吹く色を劇中にたくさん忍び込ませていますので、是非探しながら観てみてください。
(C) 2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会
Q 今作の映像化にあたり、大事にしたポイントやこだわりを教えてください
元々朗読劇として完成されているものを映像に落とし込むということになりますので、朗読劇では表現しきれない「映画」だからこそ感じられる、景色の広さ・靡く風・通り過ぎる匂い・流れる音とか、そういうものを存分に活かすということを大事にしました。台本が本当に真っ直ぐで素晴らしかったので、映像で脚色しすぎて原作の大切な部分を壊してはいけない。この脚本の良いところを最大限に引き出すということをまずは念頭にとても意識していました。原作・脚本の鈴木おさむさんとお話しした際に、もともとおさむさんが住まれていた南房総市が舞台のイメージだと仰っていましたので、まず南房総市を巡るところから始めました。
―ロケ場所から入っていったのですね
場所からでしたね。制作部さんと2人で南房総市を端から端まで全部回り、シナリオハンディングを行っていきました。観てくださる皆さんが、すっと世界に入り込める、そしてその中にほんのりと香る非現実感みたいなものが違和感なく作れる場所をずっと探していましたね。
―かなりこだわって撮影されたんですね
そうですね。全スタッフの思うこだわりをたくさん詰め込みました。公園で鬼ごっこをするシーンがありまして、台本上は子供たちがおんぶをしながら鬼ごっこをしているシーンと大人たちが自転車で鬼ごっこをしているシーンは区切られているのですが、どうしてもそこの10年を越える時間経過を表すには、ぼくまほ特有のファンタジーが必要だなと思っていまして、子供と高校生合わせて8人を1カットの中に一緒に登場させ、現場で実際に交差させて撮影をしました。8人が同時にいると、ほんのり香る魔法と、登場人物たちが地続きで生きている感じがより活き活きと伝わると思いまして、その流れをワンカットで見せるということは大事にしたポイントです。
あともう一つ、桜が舞っているラストシーンですが、台本には桜が窓外を舞うと書いてあるのですが…彼らが少年時代鬼ごっこをしていた時に桜が舞っていた素敵な情景と同じラストにしてあげたくて、ハルヒが寝ているベッドの上に桜を降らせて、手のひらに桜が1枚乗って…というシチュエーションを実現させていただきました。ファンタジー感を強くしすぎず、でも確かにそこには魔法がかかっているという感覚はとても意識して撮影をしていました。
(C) 2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会
Q 今作は原作・脚本の鈴木おさむさんの地元である南房総市が舞台でしたが、その中でも監督的いちばんお気に入りのロケーションはどこですか?
アキトとハルヒのシーンの駅舎が大好きです。いすみ鉄道を一駅ずつ停まって、写真を撮って回り、どれが一番この物語の世界に適しているかをみんなで議論しました。決め手は「一番メルヘンだから」ですね。春になると駅の周りに花がたくさん咲いて、水色の駅舎と相まってとても綺麗なんですよ。ここで撮りたいなと思い、お願いをして撮らせていただきました。
―全部回ったんですね!
はい、端から端まで全部回りました。南房総の観光課の方もたくさん協力していただいて、心強かったです。実際に造園業をされているお家だったり、建設業をされている会社やそのお家をお借りしたのですが、よりリアリティーのある嘘のないロケ場所探しをずっと一緒にやってくださり、皆さん人が優しくて本当にありがたかったです。
魔法会議の部屋は最初に決まったロケ地で、実は普段はレストランなんですよ。テーブルを全部移動させてしまったのでピンとこないと思いますが…。
あとは高校ですね。ちょうど廃校になった翌月にお貸していただきました。木の質感含めとても温かい雰囲気の学校で撮っていて楽しかったです。
Q 撮影中の印象深いエピソードはありますか?
キャスト・スタッフ全員で山登りをしたことが印象深いですね。冒頭から出てくる、葉っぱを投げると願いが叶うと言われている山がありまして、それを青梅で撮影したのですが、キャスト・スタッフ全員で荷物を背負って山登りをしました。みんなヒーヒー言っていましたね(笑)
あとは、広い公園で自転車で二人乗りをするシーンがあるのですが、キャストの方々が二人乗りの経験があまりないようで「どうやって乗ったらいいの?」と言いながら撮影をしていました。乗ったら乗ったで走っている途中で自転車が壊れてしまって、新しいものを急いで買いに行って付け替えて撮影をするというトラブルも楽しい思い出です(笑)
―鈴木おさむさんも少しだけ出演されていましたね!
そうなんです!おさむさんの中で、アドリブは毎回違うことを言うというルールがあるそうで、ぼくまほでもテストと本番でもちろん違うことを仰っていました(笑)
ずっと和気あいあいとした現場でした。
(C) 2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会
Q ロケ地において、現地の方々からたくさんの撮影協力を得られたとか
はい。実際に生活で使われている小道具などをたくさん貸していただきました。南房総市に根付く場所や普段実際に使われているものはやはりシーンに信憑性を強く持たせてくれるので、そのままお借りした部分はとても多いです。魔法の書をしまってある重厚な木箱は、ロケ場所に実際にあったものをそのままお借りしています。造園業お営んでいるお家も作業道具やトラックなど全てそのまま貸していただきました。すごくありがたかったです。
Q これまで木村監督が携わられた作品で印象に残っているロケ地はありますか?
色々あります。原作ものをやらせていただくときは、原作者の方がイメージして書かれた聖地と呼ばれる場所があるじゃないですか。そこをしっかりと撮るということは意識しています。以前担当しましたWOWOW連続ドラマの『アオハライド』では、咲坂伊緒先生が神奈川県のとある沿線沿いの風景をベースに書かれているんです。そのため、ロケ地となる神社などは原作の「聖地」に行き、漫画のコマを意識しながら撮影をしていました。
ロケ場所は“質感”と“色味”で決めることが多いです。例えば以前撮影した『ウソ婚』というドラマで結婚式場のシーンがあったのですが、本当は広く大きく豪華なところでやるところを、この物語は木の質感がとても合うのではないかと思い、全面が木とガラスでできているような場所を探していただき撮影をしました。そういうロケ地の探し方は心がけています。
―よくある広さや雰囲気だけではなく、質感と色味を大事にされているのですね
作品の世界観を表す、特徴的な質感や色味を個人的にすごく大切にしています。
最近撮影したドラマで、すごく象徴的な電車のシーンがあるのですが、静岡県に黄色・白・青の3色の電車が走っていて、その電車もホームもすごく綺麗で。制作部さんが探して来てくださり、是非そこで撮りましょうと、静岡へ行き撮影をさせていただきました。
Q 最後に、監督を目指す若手制作者たちに、メッセージをお願いします。
僕はこの仕事が楽しくて楽しくて仕方ないタイプでして、辛いとか大変とかマイナスな感情が全くないんです。なので、少しでも興味があるなら絶対この仕事はやった方が良いと思っています。どこかで聞いたことある言葉だと思うのですが「やらない失敗よりやって大成功」って言うじゃないですか(笑)やったら大成功が待っているかもしれないし、やってもし失敗したとしても、それは失敗でなくエラーですし、それさえも自分の人生にとって前向きで後悔のない出来事だと思うので絶対やった方が良いと思います。でもそこには、ただ「映像を撮りたい」ではなく「自分はこういうことがやりたいんだ!」という気概があることが大事かなと。何か一つで良いので自分が突き詰めたい大好きなものがあれば、それはとても強い力になるので、そういう確固たる意志を持って入ってくれば、この業界はすごく楽しいと思います。
最近では学生が参加できる映画祭も増えています。学生だって監督になれる。足を踏み込もうと思えば、いくらでも踏み込める業界になっていると思います。ただその分ハードルは高いです。そこを乗り越える胆力は必要だと思います。僕はまだできているかどうか分かりませんが、監督として作れる世界観というか、色というか、そういうものをちゃんと突き抜けるところまでいくと、刺さる人には刺さると信じています。映像は賛否あっていいものだと思っていますし、叩かれたり、褒められたり、様々なことがあって、その中でくじけることも絶対ある、それでも這い上がる、むしろそこからが監督としてのスタートラインだと思っています。それぐらいの精神でいること。大好きなものに、真っ直ぐに、まずは足を踏み込んでみてください。
(C) 2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会
作品情報
映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
<Blu-ray&DVD商品情報>
映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
2025年10月8日(水)Blu-ray&DVD
発売・販売元:ポニーキャニオン
■Blu-ray/DVD 初回製造限定 特別版[2枚組:本編+特典]
Disc①本編111分+予告編
Disc②特典映像:メイキング、完成披露&公開記念舞台挨拶ほか108分
■DVD通常版[1枚組:本編]
収録:本編111分+予告編
■法人別オリジナル特典
Amazon:各特別版購入者→L判ブロマイド3枚セット
通常版→L判ブロマイド2枚セット
楽天ブックス:各特別版購入者→チェキ風ブロマイド4種セット
※通常版は対象外となります。
※商品内容、特典、仕様などは予告なく変更になる可能性がございます。
出演:八木勇征
井上祐貴 櫻井海音 椿 泰我(IMP.)
カンニング竹山 阿部亮平 髙橋 洋 馬渕英里何 平野宏周 工藤美桜
笹野高史 田辺誠一
原作・脚本:鈴木おさむ
監督:木村真人 音楽:横山 克
主題歌:「春舞う空に願うのは」 FANTASTICS
エンディングテーマ:「魔法みたいな日々」 FANTASTICS
制作:共同テレビジョン 配給:ポニーキャニオン
©2025 映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』製作委員会