“涼”を求めて、ロケ地へ脱出! ~長野が舞台のドラマ編~

ドラマ解説者・木村隆志ならではの鑑賞ポイントで観る、ロケーションジャパン連載コラムから、「“涼”を感じるドラマ」を3作ピックアップ! ドラマを見た後に、涼しいロケ地へ行ってみるのもおすすめだ。
01 ドラマ『青い鳥』(1997年)
日本列島を南北に縦断
純愛と凶愛を描いた大作
今回のテーマは「涼を求めて」。暑い時季に見たくなる、涼しい地域で撮影された3作を挙げていく。地方ロケがベースだけに大型企画の名作ぞろいだ。
1作目は日本列島を北へ南へと縦断した大作『青い鳥』(TBS系、1997年)。物語は長野県の田舎町で駅員として働く柴田理森(豊川悦司)が、町の権力者・綿貫広務(佐野史郎)の内縁妻・かほり(夏川結衣)と出会うところからスタート。共に悲しい過去を持つ二人は徐々に距離を縮め、かほりの娘・誌織(鈴木杏)を含めた逃避行が始まる。怒りに震える広務の追跡によって岩手、八戸、北海道と北へと向かうが、悲しい結末が待っていた……。さらに時は流れ、今度は理森と誌織が下関、鹿児島と南へ向かう逃避行の幕が明ける。
本作は単純な不倫モノと言うより純愛と凶愛が交互に描かれる壮絶な愛憎劇と言ったほうがいいだろう。視聴者は終始ハラハラさせられ、時にアッと驚く展開があるなど野沢尚の脚本が光った。これほど配信での“一気見”向きの作品は少ないだろう。豊川悦司と夏川結衣の色気、鈴木杏のあどけなさ、佐野史郎の異常性、さらに永作博美、前田吟、りりィの存在感も抜群だった。
ロケ地観光の一番人気は理森の勤務先だった長野県のJR中央本線信濃境駅。その他では岩手県の小岩井駅と理森の母が営む牧場、青森惧八戸の魚市場と鮫駅、北海道室蘭の地球岬と、ストーリーを追うように北へ旅する人もいたという。ロケ地をめぐるほど人、金、時間をかけたことがわかるはずだ。
ドラマ『青い鳥』(1997年)
脚本:野沢尚 出演:豊川悦司、夏川結衣ほか
Story
長野県で駅員として勤める理森(豊川悦司)。
夫の暴力に苦しむ人妻のかほり(夏川結衣)とその娘に出会い、互いに引かれ合う。
かほりの夫の策略もあり困難に直面しつつ、真の幸せを求めてさまようラブストーリー。
02 ドラマ『カルテット』(2017年)
軽井沢の美しいロケ地と
4人の洗練された会話劇
2作目は長野県北佐久郡軽井沢町でロケが行われた『カルテット』(TBS系、2017年)。いずれもアマチュア演奏家であり、専業主婦の巻真紀(松たか子)、サラリーマンの別府司(松田龍平)、路上演奏者の世吹すずめ(満島ひかり)、フリーターの家森諭高(高橋一生)が東京のカラオケで出会い、弦楽四重奏「ドーナツホール」を結成する。4人は司の祖父が所有する軽井沢の別荘で共同生活を送りながら演奏する機会をうかがっていく。
真紀の夫が失踪、片想いの連鎖、来杉有朱(吉岡里帆)への殺人未遂、全員の嘘が発覚など、牧歌的なムードながら物語はめまぐるしかった。恋愛、ヒューマン、コメディ、サスペンス…。最後までどんなジャンルなのかわからないが、あえてあげるとしたら会話劇か。放送中、「唐揚げにレモンは不可逆」「質問に質問で返す時は正解らしい」「センキューパセリ」などの会話がネット上で話題となり、ファンが増えていった。ネット上に名言集がアップされるほど坂元裕二の脚本が際立っていたことは確かだ。
視聴率以上にファンたちの熱は高く放送中からロケ地めぐりをする人が続出。彼らが演奏するレストラン「ノクターン」に加えて軽井沢タリアセン、ハルニレテラス、軽井沢ユニオン・チャーチ、ブランジェ浅野屋、旧軽井沢銀座などの観光スポットを1~2日でめぐる人が多かった。男女4人メインの物語だけに配役して同ポジ撮影するグループが目立ったことも熱気を物語る。
ドラマ『カルテット』(2017年)
脚本:坂元裕二 出演:松たか子、満島ひかりほか
Story
長野県軽井沢町を舞台に偶然出会った30代の男女4人が弦楽四重奏団を
結成し共同生活を送る物語。それぞれが秘密を抱えながらも、
音楽を通して絆を深める4人のユーモアと切なさが入り混じる大人のラブサスペンス。
03 ドラマ『白線流し』(1996年)
風情ある松本が舞台の
甘く切ない青春群像劇
3作目は長野県松本市が舞台の『白線流し』(フジテレビ系、1996~2005年)。松本北高校に通う七倉園子(酒井美紀)は、ある日、自分の机に不思議な点を見つけ、ふと星座を描いた落書きであることに気づく。それは定時制のクラスで同じ机を使っている大河内渉(長瀬智也)が書いたものだった。
残りわずかな高校生活をどう過ごすのか。夢が見つからない中、将来をどう考えたらいいのか。恋と友情と未来を追い求め、ぶつかり合い傷つきながらも心の距離を縮めていく、純粋で不器用な青春模様で支持を獲得。連ドラ終了後、「19の春」「二十歳の風」「旅立ちの詩」「二十五歳」「夢見る頃を過ぎても」と2時間ドラマが制作され、俳優の実年齢通りに進んでいくリアリティも共感につながった。
ロケ地めぐりでは、舞台となった松商学園、松本電鉄上高地線、富山慎司(中村流)の実家である深志神社、小川天文台、白線流しをした薄川などが人気を集めた。さらに特筆すべきは松本の街並み、歩道、橋、公園、神社などの何気ない風景を求める人が多かったこと。みずみずしいキャストと物語にほれ込んだ人が多かったことの証だろう。
「涼を感じるドラマ」を見て、ロケ地へ旅をしてみるのもおすすめだ。
ドラマ『白線流し』(1996年)
脚本:信本敬子 出演:長瀬智也、酒井美紀 ほか
Story
長野県松本市の全寮制高校を舞台に、卒業を間近に控えた男女7人の高校生を描いた青春群青劇。
将来への希望や不安、友情、恋愛、そして家族との葛藤を抱えながら大人へと成長していく姿が描かれる。