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2022.05.22

昨年度の広告換算額は1億3000万円! 「金田一」「ツユクサ」のロケ地・西伊豆町にオファーが絶えない理由

現在放送中の人気ドラマ『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)のロケ地・静岡県西伊豆町で、大きな経済効果が生まれている。

 

同町がロケ地に選ばれるきっかけとなったのは、映画・ドラマのロケ地巡りを推進し地域のファンを作ることを目的とした「ロケツーリズム協議会」。そこで開催された、自治体と映像制作者を引き合わせる首長参加の「トップマッチング大会」に西伊豆町の星野淨晋(じょうしん)町長と、『金田一少年の事件簿』の制作部が参加していた。

 

西伊豆町は静岡県の伊豆半島西岸に位置する、人口約7200人のまち。日本全国に数多あるロケーションの中から、なぜ西伊豆町が選ばれたのだろうか。

 

「金田一」で800万円の経済効果

 

西伊豆町がロケ地になったのは、5月8日、15日に放送された「聖恋島(せいれんとう)殺人事件」の回。聖恋島の船着き場や、金田一(道枝駿佑)一行が宿泊するコテージのセットが、穴場スポットとして知られる田子瀬浜海水浴場に建てられた。水の透明度が高く、シュノーケリングに良い環境だと評判の場所だ。

 

同町では3年前に、撮影をサポートする組織「ロケさぽ西伊豆」が始動。ロケハンの同行、撮影隊のエネルギー源であるロケ弁の豊富な取り揃えなど、あらゆる方面からロケを支えている。

 

そして西伊豆町の星野町長は昨年11月のトップマッチング大会に参加し、町長自らロケーションをアピール。制作部は町長やロケ担当者の熱意に感動し、撮影にいたったという。

 

結果、セットとは思えないほど立派な造りのコテージや桟橋の建て込み、キャスト・スタッフの宿泊費や食費で、総額800万円の経済効果を算出した。

 

同町にはこの2020年4月~2022年3月の間に200件以上もの問い合わせがあった。うち決定数は20年度が約30件、21年度が約80件と前年に比べ2.5倍以上に延び、21年度のメディア露出による広告換算額は1億3000万円にものぼるという。現在公開中の映画『ツユクサ』でもメイン舞台となるなど、制作者からの信頼関係を着実に築きあげている。

 

星野町長「ふるさとの良さに気付くきっかけに」

 

最前列左からロケツーリズム協議会・藤崎慎一会長、幸田町・成瀬町長、久慈市・遠藤市長、西伊豆町・星野町長、島原市・古川市長、茂原市・豊田副市長、ロケツーリズム協議会・田中康之さん

 

サポート体制を整えることでロケを呼び込み観光客誘致につなげる動きは、他自治体でも見られる。

 

2022年5月19日、リーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)で本年度第1回目となるロケツーリズム協議会が開かれ、西伊豆町・星野町長、長崎県島原市・古川隆三郎市長、岩手県久慈市・遠藤譲一市長、岐阜県飛騨市・都竹淳也市長、愛知県幸田町・成瀬敦町長、千葉県茂原市・豊田正斗副市長らが出席。

 

一般社団法人・ロケツーリズム協議会によるセミナーとトップマッチング大会が行われ、オンライン含め総勢207名(うち制作者34名)が参加。コロナ禍になって以降、最多の来場者となり、アフターコロナの観光客誘致に向けて盛り上がりを見せた。

 

首長によるあいさつで島原市の古川市長は、

 

「キリンレモンCMのロケ地になったことで、今では多くの人が『おおみさき(大三東)駅』と読めるほど有名になりました。市長としていろいろな人と連携し、自らが汗をかいて行動することで、制作者の皆さんに『島原がなにかやろうとしているな』と少しずつ広まっていくのではないかと実感しています」

 

と、ロケ誘致によって得られた変化を語った。

 

セミナーでは西伊豆町や島原市の事例に加え、同じく『金田一少年の事件簿』やドラマ『DCU』などのロケが相次ぐ静岡県伊東市、映画『とんび』のロケ地マップが公開前に在庫切れになり3万部増刷された岡山県、先週公開されたばかりの映画『シン・ウルトラマン』の完成報告会が開催されたロケ地のセルリアンタワー東急ホテル(東京都渋谷区)など、各ロケ地の実績が発表された。

 

参加した自治体からは「ロケ誘致はできていても実績活用が全然出来ていないと認識した」「首長の想いに圧倒された」との声が上がった。

 

西伊豆町の星野町長は今回のトップマッチング大会にも参加。登壇の際は映画『ツユクサ』の町民向け試写会に触れ、

 

「『ツユクサ』ができたことによって、町民の“自分の町”を見る角度が変わり、ふるさとの良さに気付くきっかけになったと感じている。これからも映像作品は町民の元気の源になっていくと考えているので、ロケ誘致に積極的に取り組みたいです」

 

と意気込んだ。

 

メイン観光地にとらわれない「ロケ地巡り」は、コロナ禍であっても比較的実行しやすいのが魅力の一つ。協議会に出席者した観光庁の横田愛室長は、

 

「ロケツーリズム協議会は、感染防止対策をしっかりとりながら活動を継続し、経済効果など様々な数字で実績を世の中に発信しています。地方誘客・創客事業の代表的な取り組みであり、コロナ禍で経済が疲弊してしまった地方を支える大事な取り組みだと考えています」

 

と冒頭でコメント。

 

今後の観光業を支える一手として期待が高まる。

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