寅さんの“ふるさと”あの団子屋はなぜうまい? 葛飾区柴又「高木屋老舗」
映画『男はつらいよ』の舞台となった東京・柴又。
なかでもロケ地散歩に欠かせない、明治から続く高木屋老舗は寅さんの実家のモデルとなった和菓子店だ。
葛飾区の柴又は古くから帝釈天への参拝客が絶えない江戸の名所。しかし昭和に入ってその名が全国的に知られるようになったのは、映画『男はつらいよ』の舞台になったのがきっかけ。
誰もが知る〝フーテンの寅さん〝がひょこっと帰ってくる故郷・柴又は、いわば日本人みんなのふるさとのような場所。山田洋次監督はかつて本誌のインタビューで「柴又は第二の故郷のような場所」と称した。
6代目女将の石川雅子さんは撮影時の思い出を懐かしそうに語る。
「山田監督はたった一言のシーンで何時間も使うこともあって、寅さんの出番はいつも最後の方だったので、渥美さんは一日のほとんどをここで過ごされることもありました」
寅さん役で見せる豪快な表情とは対照的な渥美清さんの実直な人柄や、ロケ時には先代の女将が温かい食事を作り、必ずヒット祈願の赤飯を用意していたことなど、ここで起こった裏のドラマは数知れない。
お店の壁には当時の写真が飾られており、当時が偲ばれる。
柴又名物といえばヨモギの薫る草だんご。石川さんによれば、水郷地帯の柴又は米作りが盛んだった土地で、米を潰して団子をつき、江戸川沿いの土手で摘んだヨモギで香り付けしたのが草だんごの始まり。それがやがて参拝客をもてなす茶屋の甘味として親しまれる名物になったという。
寅さんも愛した高木屋老舗の草だんごは、新鮮なコシヒカリの挽いたばかりの米粉を使っていることがおいしさの一番の秘訣。時間が経っても瑞々しくモチっとした食感が生まれている。上品な甘さのあんこがヨモギの香りを引き立てる老舗の逸品は、いくつでも食べられるような、昔懐かしい味わいだ。
寅さんも、演じた渥美清さんも好きだった高木屋老舗のお団子を味わいながら、寅さんワールドを歩いてその世界を堪能してみてはいかがだろうか。