瀧内公美が表現する「嘘のない福島」 廣木隆一監督作『彼女の人生は間違いじゃない』
『さよなら歌舞伎町』『ヴァイブレータ』などの数々の作品で知られる廣木隆一監督が、作家デビューとなった同名小説を映画化した『彼女の人生は間違いじゃない』。
廣木監督の故郷である福島県を舞台に、2011年に発生した東日本大震災によって、居場所をなくし、未来を見ることができなくなった人々の姿を描いている本作。主人公のみゆきを演じるのは、『日本で一番悪い奴ら』の瀧内公美さん。みゆきが抱える葛藤や悲しみを、強い眼差しや繊細な仕草で表現し、観る者を一気に作品の世界に引き込む。
もがきながら、現実の中に未来を見出そうとするみゆきを、どのような気持ちで演じたのか。
ロケーションジャパンでは、瀧内公美さんにインタビューを行った。
―『彼女の人生は間違いじゃない』のみゆき役はオーディションで選ばれたそうですが、オーディションにはどのように臨んだのですか?
小説と、その後に脚本を読んでからオーディションに臨みました。これまでは台詞や説明が比較的多い作品が多かったので、今回は「説明がなくても伝わる」という状況を作り出さなければいけないと思いました。
―ご自身も福島に取材に行かれたそうですが、地元の方と交流する機会はありましたか?
みゆきが父親(光石研)と住む仮設住宅は、セットではなく、実際に住んでいる方がいる仮設住宅なんです。その仮設住宅の管理者の方や、そこに住んでいるおばあちゃんたちとコミュニケーションをとらせていただきました。
―『彼女の人生は間違いじゃない』のみゆき役はオーディションで選ばれたそうですが、オーディションにはどのように臨んだのですか?
小説と、その後に脚本を読んでからオーディションに臨みました。これまでは台詞や説明が比較的多い作品が多かったので、今回は「説明がなくても伝わる」という状況を作り出さなければいけないと思いました。
―ご自身も福島に取材に行かれたそうですが、地元の方と交流する機会はありましたか?
みゆきが父親(光石研)と住む仮設住宅は、セットではなく、実際に住んでいる方がいる仮設住宅なんです。その仮設住宅の管理者の方や、そこに住んでいるおばあちゃんたちとコミュニケーションをとらせていただきました。
―撮影前に福島に行ったことで、役として入りやすい部分はあったのですか?
「それだけでは難しい」と思いました。5年という時間を、私は福島で過ごしていないので、その状態にもっていくのは想像でも難しいと思いました。
―本作では、廣木組に縁が深いスタッフとキャストが集結しましたが、廣木監督の作品に初めて参加された感想を教えてください。
最初は戸惑いもありました。台詞が少ない分、仕草の一つ一つにその人が出ることを怖いと思ってしまって、それを隠そうという気持ちができてしまったんだと思います。初日終了後に監督からは「瀧内はここで何をやるの?全然お前が見えないよ」と言われました。でも、厳しいというよりは、私のすべてを優しく受け止めてくださったと思います。
―廣木監督は具体的にはどのような演技指導だったのでしょうか?
「そのままの自分で、そこに居ていいよ」という感じでした。ダメな部分が出てしまってもそれも認めてくださる。そのダメな部分にも「人となりが出ている」と考えてくれると言うか。その人から出てきたものを大事にしてくださる監督です。
―撮影前に福島に行ったことで、役として入りやすい部分はあったのですか?
「それだけでは難しい」と思いました。5年という時間を、私は福島で過ごしていないので、その状態にもっていくのは想像でも難しいと思いました。
―本作では、廣木組に縁が深いスタッフとキャストが集結しましたが、廣木監督の作品に初めて参加された感想を教えてください。
最初は戸惑いもありました。台詞が少ない分、仕草の一つ一つにその人が出ることを怖いと思ってしまって、それを隠そうという気持ちができてしまったんだと思います。初日終了後に監督からは「瀧内はここで何をやるの?全然お前が見えないよ」と言われました。でも、厳しいというよりは、私のすべてを優しく受け止めてくださったと思います。
―廣木監督は具体的にはどのような演技指導だったのでしょうか?
「そのままの自分で、そこに居ていいよ」という感じでした。ダメな部分が出てしまってもそれも認めてくださる。そのダメな部分にも「人となりが出ている」と考えてくれると言うか。その人から出てきたものを大事にしてくださる監督です。
―廣木監督は、瀧内さんとみゆきを重ねて見ていらっしゃる部分があったと聞きましたが、ご自分ではどのように思われますか?
監督があるインタビューで「迷っているところが良かった」と仰っていましたが、私自身も悩みを抱えていることも多いので、もしかしたら私の中に監督が求めているものがあったのかもしれません。
―「みゆき」で居続けるために、撮影中は自宅に帰らずにホテルに滞在していたと聞きました。
自分の生活に戻るとみゆきが抜けてしまうような気がして、みゆきに近づける状態を保つことを心がけました。でも何よりも、周りの方々にサポートしていただいて乗り切ることができたと思います。スタッフの方に「頭で考えると考えた風になるから、そこで感じてやりなさい」って何度も引き戻していただきました。
―他のキャストの方々はいかがでしたか?
本当に、皆さんに助けていただきました。三浦役の高良健吾さんが仰っていたのが「廣木監督は役者の手柄にしかしないから。役者の手柄だけ映すから」という言葉です。「だから全部監督のことを信じて向かっていった方がいいよ」って。その言葉には助けられました。
―撮影はほとんどが福島で一部だけ都内と聞きました。ロケ地が変わることでみゆきのように気持ちが切り替わる事はありましたか?
東京のシーンになると、監督が「みゆきじゃないよYUKIちゃんだよ」って言うんです。でも、バスや三浦の車など、乗り物に乗っている時間は自分がどっちなのかわからなくなることがありました。
―長距離バスのシーンは非常に印象的でした。あれはずっと長回しだったのでしょうか。
そうです。でも、合図を貰うことなくずっとカメラが一定の距離から撮っている状態で、自分でも撮られていることを意識することがないシーンでした。アップのカットも少し離れて撮影しているんです。
みゆきにとってバスはどういう場所なのかと考えた時に、やはり唯一の一人になれる時間だと思ったので、彼女が東京までの道のりと福島までの帰り道で何を思うのか、福島に帰るというのがどういう意味なのか、気持ちを探りながら演じました。
―バスの車窓に映る福島の風景も印象的です。
福島での撮影前に、福島の現状を知りたくて図書館に通って新聞を読み漁りました。すると、「東北は復興に向かっている!」っていうポジティブな内容が多いんです。でも、福島で実際に観たものは全然違う。「復興している、ってどういうことなんだろう」と感じました。現地の方たちが、自分ではどうにもできないことが多いんです。
出会ったおばあちゃんが、私が東京に帰る時に「嘘をつかないで生きてくださいね」と手を握ってくれて、その意味を考えてしまいました。福島で必死に生きてきた人の言葉というか…胸が詰まって帰りのロケバスの中で泣きました。
―本作は、日本、世界の皆さんに見ていただく意味があると思います。福島の方が見ても嘘はない、伝わる作品なのかなと思いました。
正直、みゆきは答えを見つけられていないと思います。でも、希望に向かっていって欲しい気持ちもあります。皆さんには、みゆきの今を、ぜひ認めて、受け入れて欲しいと思います。
瀧内さんが魂を込めて演じた渾身の作品。
廣木隆一監督が描きたかった福島の現状を、瀧内さんは痛々しいほどリアルに表現している。
福島の現状とそこで生きる人々を、ぜひ見届けて欲しい。
『彼女の人生は間違いじゃない』
7月15日(土)公開
http://gaga.ne.jp/kanojo/
(C)2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会