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インタビュー&コラム

SPECIALインタビュー

押井監督×竹内プロデューサー

かつて感じていた科学に対する
ワクワク感を子どもたちがまた、
取り戻してほしい

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アニメの巨匠が科学!?
もう一度夢のある時代へ

 

インターネットがまだなかった90年代に人々がネットワークでつながれた世界を描いた『G H O S T I N T H ESHELL/攻殻機動隊』( 95年)、近未来東京が舞台の『機動警察パトレイバー the Movie』(89年)などでジャパンアニメの力を国内外に知らしめた巨匠・押井守監督が、大型科学プロジェクトの応援団「ILC Supporters(ILCサポーターズ)」の発起人になったことが話題になっている。
押井氏と二人三脚で活動するのが、多数のアニメを制作し、映画『マトリックス』(03年)のアニメ版『アニマトリックス』の日本サイド総合プロデューサーを務めて世界的にヒットさせたことでも知られるアニメーションプロデューサーの竹内宏彰氏だ。
そもそも、ほとんどの人が耳慣れないであろうILC(国際リニアコライダー)。なぜ、日本のアニメ界を代表する二人が、型破りな科学の世界に足を踏み入れることになったのだろうか。

 

 

「僕らクリエーターはたいてい理系が駄目というイメージがあるように、僕は高校1年で物理と数学で赤点を取って、それ以来、大嫌いになって勉強もしなかった(笑)。でも、『鉄腕アトム』や『鉄人28号』で育った世代だから、〝科学の子〞というほどでもないけれど、日本の成長は科学にかかっているとどこかで信じていたんです。科学が育む文化に興味があったからこそ、大人になって攻殻機動隊のような作品もつくりました。でも、かつて感じていた科学に対するワクワク感が、最近は全く感じられなくなってしまった。そんなときにILC計画を知って、日本の子どもたちに、そして日本の未来に必要なのはこれだ、と。アニメという妄想を糧に飯を食べてきたのだから、恩返しをしたい。一度くらい人類、社会の役に立ちたいとの思いもありました」(押井氏)

 

もう一度夢を見ることができる、
カッコいいものであってほしい。
ただそれだけなんです……押井氏 

I L Cサポーターズの構想段階で真っ先に声を掛けたのが竹内氏。

「押井さんとは仕事を通じて出会ってからもう20年くらいの付き合いで、未来のために手伝えと頼まれたら断れない(笑)。でも、ILC計画を聞いて、僕も子どもの頃、70年の大阪万博で動く歩道や携帯電話、空飛ぶ車を見て、20年後、30年後の自分の将来に夢をはせていたことを思い出しました。それに対して今は、インターネットによって情報はあふれているけど、大人たちが新しい夢を与えていない。ILCのチャレンジは面白いことになると思いました」(竹内氏)

二人の巨匠の言葉から浮かび上がるのは、アニメづくりの原点でもある科学への憧れを形にすることで、未来の子どもたちに誇れる日本の文化をつないでいきたいという強い思いだ。

 

ILCで日本に元気を
東北復興の期待も担う

ILCは押井氏いわく「地上でビッグバンを再現すること」。 具体的には、宇宙誕生の瞬間を再現可能にする超大型加速器で、ILC サポーターズは、岩手県から宮城県にまたがる北上山地でのILC建設を後押しするために立ち上げられた団体だ。全長約20kmの地下トンネル内で、電子と陽電子を光速に近い速度にまで加速させ、正面衝突させると、宇宙誕生から1兆分の1秒の世界が作り出される。 スイスにも同様の円型加速器があるが、円型ではなく直線型のILCが完成すれば、より分かりやすい反応が得られ、宇宙の謎や素粒子の世界が解明される可能性が高いという。日本が初めて科学技術の国際研究でリーダーシップを取るチャンスにもなる。

「I L C を造る目的はいろいろあるでしょうが、応援団として僕が強く願っているのは、日本の科学が文化として残り、世界に影響を与える存在になること。
例えば、東京タワーは戦後日本のシンボルになっていて、東京スカイツリーがどんなに最新で高さがあっても及ばない。その理由はエッフェル塔があるパリのように、戦後日本が文化の国として生まれ変わろうとした象徴が東京タワーだったからです。しかも、映画でゴジラが何度も破壊したから(笑)、世界中の人々の心に永遠に刻まれることになりました。ILCも研究のために使うだけでなく、ものすごくでかいものをつくって科学から文化を育むことができれば後世に残る。でかいからこそわくわく感も大きいし、そこから世の中が変わっていきます」(押井氏)

 

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日本にとって、ILCを誘致する意味は他にもある。誘致が実現すれば、世界中からILCを建設する加速器の研究者、技術者たちが東北に集まってくる。さらに、研究が始まれば、3000人近い研究者とその家族が暮らすようになり、多文化が共生する国際都市が東北につくられる。ILCは知のフロンティアとして東北復興や地域創生の期待も担っているのだ。
「最先端の研究を身近で見られることは、子どもたちに夢を与えます。勉強のような真面目なカードを切るだけでなく、エンターテインメント性のある体験の提供も重要です。地下に建設されるわけだから、地底探検だったり、VRで見せてあげたりするのも面白い。ワクワクするものを見に行こうとか、科学に興味がある人たちが集う日本の聖地、ビッグバン級の聖地と考えると、ロマンにあふれるじゃないですか」(竹内氏)

 

「どこからでも見られるのではなく、地下に潜らないと見えない部分があるというのがミソ。子どもたちはそういう〝匂い〞が大好きだから。そんな経験をたくさんできる機会にもなればいいですね」(押井氏)

 

僕もILCを知れば知るほど、
子ども心が刺激された点が大きいですね……竹内氏

 

科学とアニメーション――。一見、あまり関係ないような2つの領域だが、未来への危機感と希望は驚くほど共通している。押井氏がILCに魅せられたのも、その親和性に着目したからだ。

「残念ながら、今の若者たちは映画に何も期待していない。せいぜい、自分の好きな俳優が出ているから、ご当地だから観に行こうというくらい。日本が先行したアニメーションにはまだ可能性が残されているのかもしれないけれど、配給の問題もあってそもそも世界で観られていないんです。科学も同じ。日本人は目に見えるものしか評価しなくなってしまったから、日本の科学に未来はない、つまり日本人である自分にも大した未来はないと思うようになってしまった。でも、それってまずいですよね。誰も困らないかもしれないけれど、根源的な世界への関心は人間の初歩的な欲求。だからこそ、科学もアニメも子どもたちや若者たちがもう一度夢を見ることができる、カッコいいものであってほしい。ただそれだけなんです」(押井氏)

「その意味では、僕もILCを知れば知るほど、子ども心が刺激された点が大きいですね。宇宙って、人間ってなんだ、日本これからどうするんだってところから始まっていて、至極明快だからです。ILCや宇宙、ビッグバンに対しても、ハリウッド映画の世界だけで爆発していると思わずに、そこで起きていることが自分たちの10年後、20年後、さらには子どもや孫にどう影響を与えるか想像を膨らませてほしい。そうすれば、必ずI L Cプロジェクトのファンになるはずです」(竹内氏)

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大人になってアニメを作るようになってからも約40年間にわたり、子どもの頃に憧れた科学と縁が切れたことはないという押井氏。押井氏の呼び掛けによって作家やクリエーター、アイドル、ゲームディレクターといった人たちも続々とILCサポーターズへの参画を表明し、一般の応援メンバーも増えつつある。 日本の夢を担う世紀のプロジェクト。あなたも子どもの頃夢見た科学の世界に一歩踏み出してはいかがだろうか。

 

 

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