ホーム > インタビュー&コラム

インタビュー&コラム

TOPRUNNERに聞く!

トップランナーに聞く!
地域を救った「地域おこし協力隊」の生みの親
地方創生のキーマン・椎川忍氏に迫る

一般財団法人地域活性化センター常任顧問 椎川忍氏

秋田県出身。東京大学法学部卒業後、自治省入省。大臣官房国際室長・財政局調整室長、内閣府・
総務省大臣官房審議官などを経て、現在は一般社団法人移住・交流推進機構業務執行理事、一般財
団法人地域活性化センター常任顧問などを兼ね、「地域活性化伝道師」として活躍中。著作「地域に
飛び出す公務員ハンドブック」(今井書店/2012)、「地域旅で地域力創造」(学芸出版社/佐
藤喜子光と共編著)ほか連載等多数。

 

地方創生で重要視されている関係人口の増加において、注目されているのが「地域おこし協力隊」の存在だ。隊員は、都市部から地方に一定期間住み、地域活性化に取り組む。給料、活動費などの特別交付税対象額は最大で年間480万円。ヨソモノ、ワカモノの視点が地域に大きな刺激を与えるとともに、理想とする暮らしや生きがいを発見した隊員がそのまま定住するケースも少なくない。そんな「地域おこし協力隊」の生みの親が、元総務省官僚で地域活性化センターの常任顧問(2013年6月から常務理事、2014年6月から2023年6月まで理事長)を務める椎川忍さん。まさに地域活性化の第一人者である椎川さんに、地域づくりに対する思いやこれまでの仕事人生を振り返っていただいた。

 

出典:一般財団法人地域活性化センター
センター内は全国各地から集まった職員がフリーアドレスで働いている

 

Q.これまで様々な形で地方創生に取り組んでこられましたが、子ども時代をはじめどのような原体験が影響していますか。

思い返すと、私の祖父母は父方、母方合わせて4人とも、それぞれ小学校、中学校、高校、大学と学校の先生。子どもの頃は特に双方の祖母が厳しくて、夏休みに帰省すると、常に「勉強しなさい」と言われていました。夏休みだからこそ、勉強するわけです。総務部長として出向した島根県時代などに、地域づくりに取り組んでいる人たちを集めて一緒に勉強会を頻繁にしていたのは、そうした経験が染みついていたからかもしれません。

地域との関わりでいうと、子どもの頃から父親の転勤で日本各地に住んだ経験から、もともと旅行をしたり、地方に行ったりするのが大好きで、出張の際は必ず自分で切符や宿の手配もしていました。単なる観光旅行ではない、自分の力で“旅”をするのが好きなんです。暮らすように旅をするのが私のテーマで、少し長めに逗留して、地元の人が経営している居酒屋に行ったり、地元商店街や街並みを歩いたり、ジョギングしたりするのが好きですね。地元の居酒屋では、地場ものが食べられるし、店主やお客さんの会話からもその土地がどんなところかうかがい知ることができます。また、商店街や街並みを見て歩くとその街の人々の生活が感じられます。

 

Q.椎川さんが果たされた大きな仕事のひとつである「地域おこし協力隊」の制度は、どのように誕生させたのですか。

2008年に初代の地域力創造審議官に就任して命じられたのが定住自立圏構想の制度化、すなわち人口5万人程度以上の都市が中心市となり、周辺の市町村と協定を締結して定住自立圏を形成するものです。もちろん、こういった制度も重要なのですが、それだけでは不十分だと感じていました。なぜならば、島根県時代に現場をつぶさに見たり、話を聞いたりしてきた経験から、具体的に都市から地方に、直接若者の移住を後押しする仕組みが必要だと考えたのです。例えば、当時、酪農をしている牧場が若者を研修生として受け入れないと経営が成り立たないと話していました。
このように具体的に都市から地方に、直接若者の移住を後押しする仕組みが必要だと考えたのです。

 

地方に直接、都会の人間を移住させる制度はないか。調べたところ、農林水産省の「田舎で働き隊」、NPO法人地球緑化センター「緑のふるさと協力隊」といった先行事例がありました。こうした事例も参考にしながら、有識者や関係者の意見を聞き、その欠点を補う制度とし、わずか半年ほどで「地域おこし協力隊」の枠組みを制度化しました。実施主体は地方公共団体で、総務省は特別交付税で隊員1人あたり年間480万円上限などの支援をしています。半年などの短いスパンでは根づかないため、こと活動期間は3年まで認めることとしました。

もっとも、補助金制度ではないため最初はなかなか自治体の理解が得られず、始まった2009年度の隊員数はわずか89人。ただ、この1期生が頑張ってくれたため、多くの自治体、マスコミから注目され、歴代の総務大臣も「この制度はいい」と力を入れるようになり、2022年度には6447人にまで増えました。現在は2026年度までに1万人を目標としています。

 

地域活性化センターが毎月発行する、地域の取り組み事例を掲載する情報誌

企業研修やグループワーキングを行い実践的な学びの場に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q.最後に、「地域おこし協力隊」をはじめ、椎川さんのこれまでの成果、そして地域への思いをお聞かせください。

役人生活の間で、大きな仕事をしたなと思えるのは、国際消防救助隊の発足、救急救命士法のもととなった消防法改正、地方公共団体金融機構の設立、地方債の市場公募化の推進のための共同発行債の創設、そして地域おこし協力隊の制度化です。たとえば、救急救命士法については、医師会とも随分やり合いましたが、世論の後押しもあって、現在、救急救命士は気管挿管といった医療行為もできるようになり、救急搬送のたらい回しによる窮状を救う手立てとなっています。そして、地域おこし協力隊の隊員の定住率は今や65%。行政ではできなかった柔軟な地域おこしとともに、着実な地方への住民の増加につながっています。

私は現役時代から、平日土日にかかわらず全国を駆け巡り、地域おこしとそのための人材育成の支援を行ってきました。首長とも直接会わなければ、物事を動かすことはできませんから、年間何十人の方と会うようにしています。補助金、助成金を地方に配布する仕事も随分やってきましたが、やはり大切なのは人をどう育てるか、そのことを理解してくれる首長さんをどうやって増やしていくかがもっと重要です。常務理事として1年間、理事長として9年間、現在は常任顧問として勤める地域活性化センターでも、地方創生や地域活性化のために必要なイノベーターとも横串人材ともいえる人材の育成を事業の中心にすえ、すべての事業を見直した結果、自治体からの派遣職員が3倍に増え、経営も完全黒字化しました。

あらためて申し上げたいのは、課題はすべて現場にあるから、それを解決できる制度を作っていくことが大切だということ。また、地域の人材を育てるとともに、外からも呼び込んでその人材を大切にし、地域資源を再生することが重要です。これからも地方の現場に密着しながら人材育成にチャレンジし続けたいと思っています。

この記事をシェアする

©Location Japan. All rights reserve