「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.33 “作品公式HPからあらすじを英文翻訳して紹介する際、許諾は必要?
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!
Q
作品公式サイトからあらすじを英文翻訳して紹介したいのですが、許諾が必要でしょうか。
A
映画のあらすじを簡単にまとめたオリジナルの文章であれば、許諾をとる必要はありません。
田中 著作権の課題は「あらすじ」を紹介することと「英文翻訳」ですね。まずは、「あらすじ」ですが、著作権の保護の対象になるのでしょうか。
國松 短いキャッチコピーレベルのものであれば別ですが、ある程度の分量のある「あらすじ」は明らかに著作物ですから、公式の「あらすじ」を勝手に翻訳・転載するのはNGです(※翻訳権・自動公衆送信権などの侵害)。もっとも、映画のあらすじを自分なりの文章で短くまとめ、感想などを交えて作品を紹介するような形であれば、許諾が必要な原著作物自体の利用には当たらないと考えられます。
田中 自分の「感想」を書いていれば大丈夫なのですね。ただその場合でも、別の観点では「ネタバレ」に注意しないといけませんよね。
國松 著作権侵害とはならなくても、まだ公開されていない作品や、公開中でネタバレの禁止を要請している作品などは「ネタバレ」行為が営業権の侵害にあたるとして訴えられる可能性があります。既に公開が終わっている作品を扱った方がよいですね。
田中 分かりました。次に「英文翻訳」ですが、そもそも翻訳は著作権法ではどのような位置づけなのでしょうか。
國松 法的には、「作品の改変」や「二次著作の制作」と同じカテゴリーに入ります(著作権法27条)。要するに許諾を得て行わなければ著作権侵害になる行為です。
田中 そうなんですね。そうすると、映画のあらすじを簡単にまとめたオリジナルの文章であれば、それを翻訳・公開することは適法ということになりますね。
國松 そのような整理でよいと思います。自分のオリジナルの文章であっても、ストーリーの大部分をなぞっていたり、劇中のセリフを使用したりすれば著作権侵害になる可能性はありますので「簡単にまとめるレベル」というのがポイントです。あとは作品によっては「ネタバレ」には注意することです。
田中 「簡単にまとめるレベル」はなかなか難しいですが、どのように対応すればよいかはWebで詳しく説明します。
=====以下、Web版のみ掲載=====
田中 では、ロケ地マップやロケ地看板に掲示するための英文翻訳をするための「あらすじ」を書くことから始めましょう。「簡単にまとめるレベル」とはどのように意訳すれば良いでしょうか。
國松 残念ながら法律(著作権法)で「ここからここまではOK」といった線引きが明確にされているわけではありません。あくまでも状況に応じた個別判断ということになるのですが、最高裁判例では、「元の著作物の本質的な特徴を直接感得できるようなレベル」に至ってしまうと、著作権侵害になる(翻案権侵害)としています。自己流で「あらすじ紹介文」を作る場合は、「脚本」への著作権侵害について注意する必要がありますが、最高裁判例の基準に従えば、何ページにもわたってストーリーをなぞったり、具体的なセリフをほぼそのまま使用したりするのはNGということになるでしょう。
田中 例えば「起承転結」で4つに分けて、それぞれのブロックの中身を順番に説明する程度であればどうでしょうか?
國松 いずれも自分のオリジナルのテキストでまとめるなら問題ないと思います。抽象的なアイディアに著作権がないのと同じで、作品の抽象的な「流れ・展開」にはいまだ著作権はありません。自分の言葉で文章化する限り著作権侵害にはなりません。なので、ネタバレにならないようにロケ地となった部分のストーリー紹介を自分の言葉で簡単に説明するようにしてはどうでしょうか。
田中 映画の公開日や初回放送日などの情報も記載した方がいいですよね。
國松 そうですね。わざわざ許諾を取る必要がない範囲の行為であっても、一般に情報を公開する媒体の中で作品の要素を取り扱う以上は、トラブルを避けるという意味でも、作品の基本的情報は必ず掲載した方がよいだろうと思います。
田中 基本情報というと、①作品名②公開年月③映画の著作権表示④脚本家の氏名表示といったものですね。
國松 そうですね。あとは原作モノであれば、原作の表記もあった方がよいかと思います。
田中 分かりました。英文翻訳は「あらすじ」をコンテンツ専門の英文翻訳事業者の方に依頼すると安心です。「あらすじ」のダイレクト翻訳よりも、作品の「コンテクスト(本質)」を翻訳して伝えるようすることで、海外の方々にもロケ地遺産としての価値を伝えることができますので、検討してみるといいですよね。
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