「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.8 “撮影後であればロケ地になったことを市民に情報発信していいの?”
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!
Q
私のまちで映画の撮影が行われました。
ぜひ、ロケ地になったことを市民に紹介したいのですが、
撮影後であれば情報発信をしても
大丈夫でしょうか?
(フィルムコミッション担当)
A
OK!
(但し、制作側と情報発信の取り決めができている場合)
田中:作品の情報発信は、ロケの受け入れを行った自治体がよく悩むことですよね。ロケが行われたのは事実だとしても、情報発信によって作品に影響を与える可能性があり、制作側とどのような取り決めをしているかが重要です。制作側の宣伝担当は撮影前、撮影中、撮影後、上映前、上映中、上映後などに時期を分け、時期に合わせた戦略的な宣伝計画を立てています。その計画に沿うように、制作側から情報制限を要請される場合もあるので配慮が必要です。そもそも制作側が情報制限を設ける意図はなんでしょう?
國松:作品の公開時期を軸に、いつどのような情報を解禁すれば、一人でも多くの方に作品に対して興味を持ってもらえるか、つまり宣伝効果の最大値化が目的です。作品によっては、厳密なスケジュールのもと、徹底したかん口令が敷かれるなど戦略は様々です。それが勝手に発表されてしまった場合、メディア対応やPR戦略の見直しはもちろん、場合によっては視聴率や興行収入など経済的側面に大きな影響を与えてしまう場合もあります。
田中:最近はSNSを宣伝ツールとして積極的に活用している自治体も多く、個人の拡散力もあるので情報の取り扱いには更に十分な配慮が必要ですね。
國松:あとは、契約書を交わしていなくとも、口頭の約束で契約が成立する点も注意が必要です。例えば、出演者やロケ地情報など、制作側から「この時期まではこの情報を発表しないでください」と言われて承諾したのに、契約書がないからといって故意に約束を破って発表した場合、契約違反として損害賠償を請求されてしまう可能性もあります。
田中:情報は出せば出すだけ良いというわけではなく、小出しにすることでより興味を引くという宣伝手法もありますね。また、口頭の取り決めでも契約が成立することを基本的な法知識として覚えておきたいですね。
國松:そうですね。今や作品のヒットにとって宣伝戦略は欠かせない要素なので、不用意に情報を発信すると思わぬトラブルを招く恐れがあります。
田中:そのような問題を回避するためには、できれば紙の契約書を交わすことが望ましいですが、多忙な制作の現場では難しい場合も多いです。他の手段として何がありますか?
國松:紙の契約書がなくても、メールで一言「このような情報発信をしたいのですが良いですか」という問い掛けに対して、「はい、わかりました」というやり取りを残すだけでも効力があります。「言った言わない」という状況を回避するために、できる限り、形に残すことを意識していただけたらと思います。
田中:ロケが行われた自治体としては、シティプロモーションに繋げたい。そのためには、制作側の宣伝計画を理解し、双方にメリットがある効果的なプロモーションを行いたいですね。
國松:そうですね。制作側にとっては、作品のプロモーションに繋がるかどうかが重要なので、自治体としても遠慮することなく、どんどん提案することをおすすめします。制作側としても、効果的と思えば自治体と積極的に連携し、プロモーションを行いたいと思うでしょう。
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