「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.9 “撮影の立ち合いで撮った写真をキャストが写っていなければ使用してもいいの?”
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!
Q
撮影立ち合いの際に制作側に許可を取って現場をデジカメで撮影したいのですが、
キャストが写っていなければ、
フィルムコミッションのWEBやパンフレットに写真を使っても大丈夫ですか?
(フィルムコミッション担当)
A
OK!
(事前に撮影と掲載の許可を貰うこと。
また公式カメラマンの写真の使用を推奨)
田中:この質問の場合、①撮影した写真にある権利②制作側と宣伝側の考え③ロケ写真の入手方法の理解が必要です。
國松:①ロケ現場を撮影した場合、写真自体の著作権は撮影側に帰属しますが、俳優のパブリシティー権やスタッフの肖像権、絵画や彫刻等が写っていればそれらの著作権が発生し得ます。
田中:通常撮影現場には、ロケ隊の撮影カメラ以外に、宣伝目的で撮影風景を収める宣伝カメラとDVD特典映像用のカメラが入る時がありますが、公式以外のカメラが入ることは一般的には歓迎されません。また、出演者が写り込む写真は使えないことが多いです。被写体の権利が働くことでトラブルに繋がる可能性があるからです。自治体の広報がロケ地マップや市の広報誌及びウェブサイトで撮影風景写真を使いたい場合は制作サイドから写真の貸出しを受けることを検討するとよいでしょう。
國松:②出演者や制作側は、写真の仕上がりや何が写り込んでいるかといった点を非常に気にします。制作側から見れば第三者にあたる自治体が撮影した写真は何が写っているかの確認作業や拡散のコントロールが困難なので、諸条件が既にクリアになっている写真を使って欲しいのが本音でしょう。③写真はどのような手順で入手できますか?
田中:入手方法はロケ受け入れ時に確認をすることです。「三種の神器」(注1)の実行をお薦めします。写真の利用方法が事前に分かっていれば、希望写真リストを文書で制作プロデューサーに依頼します。その後宣伝プロデューサーとやり取りをすることになります。
國松:公式写真をシティプロモーションに利用している自治体はありますか。
田中:神奈川県綾瀬市が成功している自治体のひとつです。綾瀬市はロケ実績を市のサイトで掲載する他、撮影風景写真を使ったロケ地マップを作成しています。事前に「このシーンの撮影風景写真が欲しい」「差入れグルメをスタッフの皆さんが食べている写真を自治体広報に掲載したいので撮りたい」と具体的に申し入れることで、写真提供や撮影許可に成功しています。
國松:なるほど。一方、貸出された写真については、情報解禁時期等の指示を守ることも重要ですよね。撮影風景写真には作品の重要な情報が含まれる場合もあり、注意が必要でしょう。
田中:注意点としては他に、映画やテレビの上映・放送後の写真貸出しは、番組の宣伝部から、写真・映像貸出しを事業とする部門に移管されます。その場合写真の権利以外の権利処理は、原則として借りる側に求められるので、貸出しの依頼時期や利用条件は予めよく確認するようにしましょう。
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