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2023.08.04

【インタビュー】監督初の長編作品にして早くも6冠達成! 話題の映画『はこぶね』大西諒監督と主演・木村知貴さんに迫る!

目の見えない元漁師と彼を取り巻く人々の日常を描いた映画『はこぶね』が本日テアトル新宿にて公開される。本作は第16回田辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリ、第22回TAMA NEW WAVEグランプリを含む6冠を獲得するなど新進気鋭の映画として今注目されている作品だ。今回は大西諒監督と主演の木村知貴さんに作品の見どころやロケ地についてインタビューした。

 

―この映画が誕生するに至ったきっかけを教えてください。

大西監督:「『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)という本を読み、目の見えない人の世界を第三者の目線で描くところから着想を得ました。脚本を書き上げオーディションサイトにUPしたところ、木村さんが読んでくださって。木村さんのことは二ノ宮隆太郎監督の映画『枝葉のこと』を見ていて元々知っていましたが、まさか一緒に映画を作ることになるとは思いませんでした」

木村さん:「当時サイトに上がっていた脚本は現在のような長編ではなく、登場人物も少ない短編でした。短編としてまとまっているし、お話として好きだなと感じたので応募しました」

 

 

―元々短編だったとは驚きです!
   “目が見えない人の世界”を描くにあたり作品・演技でこだわった点はありますか。

大西監督:「映画は主観映像と言いますが「この人はこう考えています」「こう見えています」と映像を明示的に示すこともできます。ただ今回目の見えない人の見える世界を第三者的に映すにあたりそこを映像化するよりは「その人は何をどう見ているのだろう、何を考えているのだろう」というように見てもらう人に想像してもらいたいという思いがありました」

木村さん:「撮影前に支援センターのところにお邪魔させていただいて、いろいろお話聞きました。その後、監督と話した際に「目が見えない、見えにくいという共通点はあっても、ものの見方や感性はみんな人それぞれだから」ということを最初に言われて。だからこそ今回は「もし自分が見えなくなったらどうするか」をベースに演技しました。役の設定としても途中で目が見えなくなった人なので、見えていたときの感覚がなんとなくわかるじゃないですか。目が見えなくなったことにより人の優しさに触れることで変化する西村の性格も想像して演技しました」

 

―本作のもう一つの見どころなのが小さな港町の風景です。
   ロケ地には神奈川県真鶴町を選ばれていましたが、撮影時町にどんな印象を受けましたか。

大西監督:「元々真鶴は好きな場所で、友達と釣りをしに行ったこともあります。ただそこまで詳しくはなかったので短編の脚本が書き終わった段階でふらっと立ち寄ってみました。バス停などを見かけた瞬間に話が思い浮かんだので、そこからは当て書きをしていましたね。町には独自に制定している美の基準があるのですが、それの「町の尺度は人だ」というところなども含め『はこぶね』のテーマに合っていました」

木村さん:「初めて訪れたのは2020年5月のコロナ下でした。当時は誰も人が歩いておらず、「寂しい町だな」というのが最初の印象です。町内を周り景色の美しさに気付き、それが演技に役立ちました。今自分がリアルに見えていて、真鶴の風景がわかるからこそ、この情景が見えなくなったら辛いなと。綺麗なものが見えなくなったら、何が自分のモチベーションになるのかを考えるきっかけになりましたね。映画を見る人にとっては景色がきれいだからこそ、目が見えないという絶望感をより引き立てているとも思いました」

 

 

―キャスティング、ロケ地を含め様々な巡り合わせによって作り出された本作。
   最後に作品を見る方へ向けてメッセージをお願いします。

木村さん:「見ていただいた人から感想を聞くと、自分たちが演じたり作ったりしている中では気がつかなかった声もあったりするんです。だからやっぱり作品を見てもらった人の感想が一番うれしいですね」

大西監督:「本作は脚本を自分が思うままに描いたので、見た人によって感じることが三者三様で面白いと思います。また、見た人から「優しい映画」や「人生を肯定している作品」などといった感想をいただくことで、僕自身もぼんやりと捉えていた本作の魅力を言語化してもらい「『はこぶね』はこういう映画だったんだな」といま腑に落ちています。ぜひスクリーンで見て皆さんの感想や意見を聞かせてください」

 

Profile

監督(写真右)・大西諒
1989年兵庫県出身。映画美学校フィクションコース修了生。IT企業の営業から映画配給会社への転職を模索して映画関連のワークショップに参加した際、制作に魅力を感じて30歳で映画美学校に入学。映画制作未経験で一から学び、在学中に複数の短編作品を制作。本作は卒業後に制作した初長編作。

俳優(写真左)・木村知貴
1978年秋田県出身。自主・商業の枠に捉われず、映画を中心に活動。本作『はこぶね』にて第23回TAMA NEW WAVEベスト男優賞受賞。

主な出演作品:『ケイコ 目を澄ませて』(22/三宅唱監督)、『ラーゲリより愛を込めて』(22/瀬々敬久監督)、『ちひろさん』(23/今泉力哉監督)、『SEE HEAR LOVE』(23/イ・ジェハン監督)など

 

【映画『はこぶね』】
出演:木村知貴、高見こころ、内田春菊、外波山文明、五十嵐美紀、愛田天麻、森海斗、範多美樹 ほか
監督・脚本:大西諒
撮影・音楽:寺西涼
配給:空架 -soraca- film

2023.8.4(金) テアトル新宿にてロードショー、その後シネ・リーブル梅田などで全国順次公開
©2022 空架 -soraca- film

 

<STORY>
事故で視力を失った西村芳則(木村知貴)は小さな港町で、ときに伯母(内田春菊)に面倒を見てもらいながら生活している。
かつて同じ通りの家から一緒に通学していた同級生の大畑(高見こころ)は、東京で役者をしながら、理想と現実の狭間で憂鬱なときを過ごしていた。ある日、西村は大畑と偶然再会。
窮屈で、美しい、その町を眺める二人は、その景色にそれぞれの記憶と想像を重ねる。

 

 

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