映画『春に散る』で大分市をPR 「聖地巡礼」促す取り組み各所に
ドラマや映画の舞台となった場所を巡る「聖地巡礼」。作品を追体験し、作品の感動を再び味わうことができるものとして、今日いっそうの注目を集めている。今年3月には、閣議決定された「観光立国推進基本計画」にそれと近しい行為である「ロケツーリズム」(注)が盛り込まれ、その需要が加速している。
9月21日、「ロケツーリズム協議会」(場所・渋谷キューズ)が開催された。100人を超えるロケツーリズムに取り組む地域・企業と映像制作者が参加し、ロケ対応やPRのノウハウを実践的に学ぶ機会となった。
空港でも作品をアピール
協議会で紹介された事例の一つが、佐藤浩市と横浜流星がW主演を務める映画『春に散る』。大分市ロケーションオフィスが全面的に協力し、お祭りのシーンは地元エキストラを150人以上動員した。
市内で行われた舞台挨拶には大分県出身の瀬々監督が登壇し、撮影の裏側などを語ったほか、大分市美術館では監督やキャストのサイン、衣装や小道具などを展示した。また、市内のロケ地や監督・星野秀樹プロデューサーのコメントが掲載された「大分市ロケ地ガイド」を5万部発行。大分空港では予告動画を流し、オリジナルポスターやロケ地ガイドを展示するなど、まち全体で作品のPRを行った。SNSではロケ地巡りに行っている人も見られる。
また、今年7クール放送のドラマ『週末旅の極意~夫婦ってそんな簡単じゃないもの~』(テレビ東京系)ではオリックスホテルズ&リゾーツが制作協力した事例も紹介。本作は全8話でオリックスホテルズ&リゾーツのホテルが登場し、SNSでも話題を呼んだ。
ホテルではドラマ放映に合わせ、「ドラマ追体験プラン」やロケ地になったホテルを紹介するパンフレットを展開。今後の誘客につなげていく方針だ。
ロケツーリズム協議会の様子
このようにロケツーリズムの効果は一過性に留まらず、協議会の冒頭であいさつした、観光庁・文化・歴史資源活用推進室の中本聡一さんは、ロケツーリズムが「インバウンドの回復」に効果的なものであると期待を寄せる。
「観光庁としてはこれまで取り組んでこなかったような特別な体験や、地域に根差した消費拡大につながるようなコンテンツ造成に対して支援を行い、観光立国推進基本計画の戦略のひとつであるインバウンドの回復に注力していきます。ロケツーリズムはその回復にとっても効果的なものであると期待しています」(中本さん)
ロケツーリズムが持つ今後の可能性に期待が高まる。
(注)ロケツーリズム…映画・ドラマのロケ地を訪ね、風景と食を堪能し、人々の“おもてなし”に触れ、その地域のファンになること。観光庁が2016~18年度に取り組んだ「テーマ別観光による地方誘客事業」に採択されていた。