杉咲花&若葉竜也にハマる人続出!『アンメット』人気の理由は? カンテレ・米田プロデューサーに撮影裏話を聞く
杉咲花が主演を務めるドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)が2024年6月17日に第10話の放送を迎える。第1話の放送から視聴者の注目を集め、映画・ドラマ・アニメのレビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」が発表する「2024年 地上波放送の春ドラマ 初回満足度ランキング」では堂々の1位を獲得。その後も放送の度にX(旧Twitter)で大きな反響を呼んでいる。
原作は元・脳外科医の子鹿ゆずるさんが手掛ける同名漫画。ドラマでは記憶障害の脳外科医・川内ミヤビ(杉咲)を主人公に、彼女を取り巻く人間模様や、病気と向き合う患者たちの様子を細やかに描いている。原作がまだ完結していない中、ドラマはどのような結末を迎えるのか――。関西テレビの米田孝プロデューサーに、制作の裏側や今後の見どころを聞いた。
物語の軸は「手術後の人生」
――漫画『アンメット -ある脳外科医の日記-』の実写化に至った経緯を教えてください。
米田P:企画探しも兼ねてよく本屋に行くのですが、3年ほど前にたまたま平積みされている原作の第2巻を見つけました。第2巻の表紙はミヤビの1カットで、帯に「脳外科医」「記憶障害」と書かれていたのにすごく引き付けられて。前半を読んでこれはすごいと思い、すぐに企画書を書きました。
――原作では三瓶が主人公ですが、その時点でミヤビを主人公にという気持ちがあったのですね。
米田P:主人公自身が回復の不完全な状態でも、日々を強く生きていることを彼女の目線で描いていくことにすごく意味を感じています。読み進めていく中で、脳疾患には後遺症がつきもので命が助かって終わりじゃないというところが、この作品の肝になると思いました。ドラマでも患者さんのほとんどが回復は不完全だし、その後の人生をどう生きていくのかという部分に想像を膨らませながら見ていただけると嬉しいです。
――実写化にあたり、原作者の子鹿さんとはどのようなお話をされましたか。
米田P:原作チームとは当初からキャッチボールをしながら進めていますが大枠のアレンジなどについては「ドラマのことは、その道の方にお任せします」という感じで受け入れていただいています。ただ、子鹿先生が仰っていたのが、医療的な裏打ちは守ってほしいということです。症例は珍しいものも多いですが、そこは子鹿先生がご自身の経験や様々な論文から導き出された裏打ちのあるものです。連続ドラマとして作りこんでいく中でいろいろなアレンジを加えさせてもらっていますが、そこはブレないようにしています。
――キャラクター設定も原作とは少し違う人物がいます。
米田P:原作を読んだ時から、大迫教授は主人公のそばで寄り添う部分を作っていくとさらにキャラとして奥行きが出ると感じていて。企画書を作っている頃から、新さん(井浦新)のことが頭にありました。新さんとご一緒するのは今回3回目で、柔らかい感じと怖い感じの「二面性」が見えるところや、好きな物の話をするときのちょっとかわいい感じがご本人の魅力だなと思っていました。
あとは麻衣(生田絵梨花)も、物語に「うねり」をプラスする意味でいろいろとアレンジを考えました。成増先生(野呂佳代)はキャストが決まってからセリフ回しを考えようとなっていて、パッと浮かんだのが野呂さん。ドラマはもちろん、バラエティーで活躍されている姿にも魅力を感じていました。ドラマの成増先生は野呂さんありきですね。漫画だからこそ面白いキャラクター性というのもあるので、生身の人間が演じるドラマでは、私たちと地続きの世界に存在しそうな人にしたいという気持ちもありました。
「ずっと見ていられる」杉咲&若葉の掛け合い
――杉咲さんと若葉さんのお二人はいかがでしたか。
米田P:杉咲さんからは、「内に秘めた人間の強さ」を感じます。彼女は何でもやってのける人ではあるんですが、その中でも、自分の障害と向き合いながらも、人前では軽やかに振る舞うミヤビの像とすごく重なる部分がありました。
三瓶役の若葉竜也さんは元々すごい人だと感じていましたが、『おちょやん』で二人がお芝居している姿を見て、この二人のやり取りはずっと見ていられるなと思いました。お二人の実力が非常に良い形で発揮していただけて嬉しいです。
――お二人の自然な演技が評判ですが、役作りはどのように行っていますか?
米田P:役作りというより、二人はミヤビと三瓶という人間を、感情から言葉遣い、所作に至るまで身体に染み込ませているような感じです。例えばミヤビの日記も、映像に映らない部分も含めてかなりの分量を本人が書いています。これは脚本を元に僕が原稿を作り、ミヤビならこう書くだろう、何をどこまで書くだろうと杉咲さんとキャッチボールして修正しながら構築していったものです。日記だけでなく、そういったことの積み重ねがミヤビや三瓶を身近にいる人のように感じさせるのかもしれません。現場でも日々いろいろなディスカッションが行われています。
――小物1つとっても、こだわっているのですね。
米田P:わかりやすいものだと三瓶先生のグミは、どういう形状のものだったら面白いかをあれこれ監督が模索して見つけました。大迫教授は枯れた植物や持て余した植物を預かって再生させることが好きな人で、教授室の中でも「まだ枯れているゾーン」と「元気になったゾーン」が実は分かれています。
ミヤビたちが通う病院や居酒屋のロケ地は?
――映画のような撮り方も注目されています。
米田P:テレビドラマとして楽しんでもらえることが大前提ですが、Netflixなどいろいろな媒体で並んだ時に見劣りしないよう、質感にこだわりたいという気持ちは当初からありました。エンターテインメントのあり方が時代とともに変わっていく中でどういう形がベストなのかを模索していった結果、普段やっている民放連ドラの規模感ではなかなかできないようなスタッフ・機材とともに作り上げています。個人的には映画畑の技術チームとドラマ畑の美術・制作・演出部がごっちゃになって作っているのが面白いですね。韓国でも評判はいいと聞いています。
――ロケ地はどのように選ばれましたか。
米田P:病院は複数の施設をお借りして撮影しています。丘陵セントラル病院に使っている彩の国東大宮メディカルセンターはYuki Saito監督がロケハンに行って会心の表情で帰ってきました(笑)院長のお考えで、木目調の明るく温かみのある作りにしていて、建物の空気感が丘陵セントラルにすごく合うなとなりました。対する関東医大は近代的でちょっと大きい硬質な建物。画(え)としても効果が出ていると思います。
――ミヤビたちが仕事終わりに集まる居酒屋も印象的です。
米田P:ここは結構迷いました。あれだけ登場数が多いとセットで作るという手もありますが、リアルな場所に勝るセットは難しいということで、実際に営業しているさいたま市内の店をお借りしました。店内の雰囲気もぴったりで、大きな水槽があるのも含めて、写真を見た時点でこれは来たなと。結構な人数のシーンになるので広さを心配していましたが、検証したら撮影可能ではないかと判断して決定しました。病院もお店も感謝してもしきれないです。
食事シーンやゲスト出演が話題に
――物語も終盤ですが、これまでの反響も大きいと思います。キャストや制作者さんはどのように受け止めていらっしゃいますか。
米田P:朝日新聞の春ドラマ記者座談会(5月22日付)で「語りたくなる今期作品」一位に選んでいただいたときは、プリントアウトして現場に貼りました。大小様々な反響をいただいていますが、いちいちみんなで共有して喜んでいます。
――初回放送後は杉咲さんが「そばかす」に言及し、ニュースになりました。
米田P:杉咲花の俳優としてのあり方やシーンの意味を考えたら、ありのままでいくのが自然な考えでした。何かを飾ろうとするよりもミヤビであろうとする人なので。その感じがいいねと世間で言ってもらえるのは、すごく素敵なことだなと思います。
――杉咲さんはご飯を食べているシーンがおいしそう、という声もありますが何か意識されていますか。
米田P:それはあまり難しく考えてないです。人が美味しそうに食べている姿は単純に見ていて気持ちが良いので、僕は主人公を食べるのが好きな人にしたがる傾向があります。それだけでなく、ミヤビの生活を辿っていくと自然と食べるシーンができました。生きることの最も根源にあるような感じが伝わってきますし、一口が大きいのがすごく魅力的です。
――今泉力哉監督がゲスト出演した際も話題になりました。
米田P:今泉監督は若葉さんと関係が深いこともあり『アンメット』を見てくださっていました。二人のやり取りが面白かったですよね。正式なオファーは僕からしましたが、まさか本当に来ていただけると思いませんでした。
――そうだったのすね。原作はまだ未完結ですが、今後どう展開されていくのでしょうか。
米田P:『アンメット』では疾患や障害を抱えながらも人がどう生きていくのかを描いてきました。全11話を通してミヤビがそれを体現していくので、彼女の疾患や記憶がどうなっていくのか、最終的にどういう希望を得て、11話より先の未来をミヤビがどう生きているのかを想像できるような終わりに向かっていきたいです。
最終回に向けて盛り上がりを見せる『アンメット』から目が離せない。