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インタビュー&コラム

■クリエイターインタビュー

小田隆一郎プロデューサー×バラエティ番組『夜の巷を徘徊する』

マツコ唯一のロケ番組『夜の巷を徘徊する』番組の個性はどうつくられた?

20154月にスタートした、マツコ・デラックスさん初となる全編ロケ番組『夜の巷を徘徊する』。レギュラー番組を週に8本抱えるマツコだが、その中で自身がロケに出る唯一の番組である。過剰な演出も音楽もテロップも一切ない、バラエティらしからぬバラエティはいかにして生まれ、作られ、巷の人々に受け入れられていったのか。裏話満載でプロデューサーの小田隆一郎さんが語ってくれた。

 

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■闇の中から突然現れるマツコ・デラックスさん

自分が出演しているどの番組にも似ていない番組。それが番組スタートにあたってのマツコさんからの要望だった。それを前提に番組内容を話し合うも、「こんなのはどうですか?」「それだとあの番組に似るなぁ」が繰り返される。そんな中……。「もうヤケクソ気味に、こんなのはどうだみたいな企画を並べている中に〝マツコが真っ暗な闇の中を歩く〞というものがあって。黒いドレスで突然闇の中からマツコさんが出てきたらびっくりするんじゃないかみたいなことで、ご本人も含めておもしろいかもって話になったんですよ。散歩番組はたくさんありますけど、夜というのは少ないですし、ましてやマツコさんがロケに出るのは、ほかではやってないこと。じゃあ、やってみるかということで生まれました」

 

■音楽もナレーションも過剰なテロップもなし

実際に番組では、マツコさんが突然目の前に現れて驚く人の姿が度々見られる。そもそもマツコさんが街を歩いていること自体が貴重。では、その〝街〞は、どう選ぶのか。基本的にはスタッフが、個性やいじりどころのある街を探す。そこにいる人との出会いも番組の大切な要素。それをふまえて下見して提案すると、マツコさんからは、「おもしろそう」とか「ここなら隣の駅のあのあたりのほうが」といった返しが。実は、マツコさんはときにナビに代わってロケバスを誘導するほど地図や道に詳しい。また、スタッフが提示するものとはまるで別の「あれやってみる?」なんて案が出てくることも。千葉の工業地域や林家ペーさんを探した赤羽は、マツコさん発信だったという。

マツコさん発信はロケ先だけにとどまらない。小田さんいわく、この番組は「いわゆるバラエティの作り方をしていない番組だと思います」。台本もなければ、カンペも一切出さない。さらに、音楽もナレーションも過剰なテロップもない。このシンプルさもマツコさん発だそう。

「余計なものはいらないというオーダーでした。マツコさんに、この番組はこうしたいというビジョンがあるのかなと思うんですけど……。こう言うとマツコさんに怒られるんですよ。おまえが私を語るなって(笑)。だから、あくまで想像ですけどね」

 

■偶然の積み重なりが番組の個性に

オーダーとはいえ、そこまでシンプルなバラエティ番組はほぼ見ない。それだけに、「大丈夫かなっていう不安はありましたし、どんな感じかなってドキドキ感でもって放送を迎えました」と小田さん。それでも今は「ありがたいことに多くの方に観ていただいて。続けていく中で、これでよかったんだなと思うようになりました」。SNSでは、番組を観ながら「一緒に飲んでるみたいな感覚だ」とつぶやく人もいるそうで、「お酒でも飲みながらゆったり観るのが心地いい番組なのかなと思います」。

ここに行けばおもしろいかなという想定はあれど、「偶然の積み重ねになることが多いですし、そのほうがより良い気がします」。強い意思、特に制作の意思が入らないことが、結果として「この番組の個性になっているのかな」という小田さんには、行きたい場所もやりたいこともまだまだある。「マツコさんが歩ける限り、マイペースに長くやっていきたいですね」

 

 

×バラエティ番組『夜の巷を徘徊する』

マツコ・デラックスさんが夜の街を徘徊するバラエティ。街をさまよい、気になるお店に立ち寄ったり、街ゆく人に声をかけたり、その人についていったり……。ときにはマニュアル車の運転、料理、ゴルフなどさまざまな体験をすることも。行き着く先はマツコさんの気の向くまま、足の赴くまま。それゆえに、毎回何が起こるのか予測不可能。スタジオトークのイメージが強いマツコ・デラックスさんが全編ロケに初めて挑んだ。

 

テレビ朝日:毎週木曜深夜0時15分~0時45分

※一部地域をのぞく

 

 

【PROFILE】 小田隆一郎プロデューサー

京都府出身。1996年テレビ朝日入社。現在、『夜の巷を徘徊する』ほか、『くりぃむナントか』を担当。過去担当作品に『シルシルミシル』などがある。

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