「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.7 “ロケ地に設置されていた映画ポスターと一緒に撮った写真をSNSで拡散していいの?”
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!
Q
作品のロケ地になった施設に設置されていた、
映画のポスターと一緒に写真を撮りました。
これをSNSで拡散してもよいのでしょうか。
A
OK!
田中:ロケ地に設置されている映画のポスターであれば、それを背景に写真を撮影し、SNSにアップロードして拡散しても問題はないと考えます。そもそも、映画のポスターは情報伝達として宣伝の役割を担っているので、拡散されることはウエルカムでしょうね。
國松:そうですね、映画のポスターに含まれている権利として考えられるのは映画のタイトルやロゴ、出演者や登場するキャラクターの写真・イラスト、および背景の写真やデザインといったところでしょうか。ポスターは「販促物」といって、その映画を宣伝するために制作・設置されているものなので、映画の宣伝という目的に沿った使用方法であれば、法的には包括的な許諾があると説明ができそうです。
田中:最近ではSNSで情報拡散を積極的に呼び掛ける宣伝の手法もありますよね。
國松:はい。設置場所や設置方法、あるいは宣伝担当が表明している宣伝方針などからトータルで見て、当該ポスターの設置が「作品の販促が目的」と判断できるかどうか、という点がポイントです。
田中:宣伝の目的で作品のロケ地に説明文とともにあるロケ地看板の場合は目的が分かりやすいですね。では、特に宣伝目的ではなく、撮影者が別の目的で写真を撮った場合はどうでしょうか。例えば、映画館で友人と写真を撮ったら、偶然映画のポスターが写り込んだという状況があり得ますが、その場合は包括的な許諾の対象からやや外れるようにも思います。本来の撮影目的はポスターではなく、意図せず写ったと判断できれば「写り込み」としてSNSで拡散しても問題はないでしょうか。
國松:そうですね。おっしゃるとおり、その場合は包括的な許諾の範囲というよりは、付随対象著作物の利用(第30条の2)、いわゆる「写り込み」として許される、と説明する方がしっくりきます。
田中:注意しなければならないのが、どちらのパターンにせよ、ポスターが写った写真を商業利用等してしまうケースですよね。著作権者の利益を不当に害する、あるいはプロモーションの範囲を超えた無許諾の行為であるとして、映画会社から利用料を請求されたというケースがあります。また、写真に写っているポスターの画像をむやみに改変した場合、著作権や著作者人格権の侵害になる可能性がありますね。
國松:例えば、ポスターが写った画像データに、単に矢印を書き込んで「面白かった!」とテキストを付けるなど、明らかにポスターの元デザインだと思われないような形で加工することは、そもそも法的な意味で改変に当たらず、問題にならないと考えてよいでしょう。しかし、ポスターの画像上に元デザインと似せた文字やイラストを書き込んだり、レイアウトを変更したりするなど、まるで元からそういうデザインだったと思われるような形で加工を加えることは、違法な改変に当たる可能性があります。
田中:以上をまとめると、改変や商業利用にならないように配慮すれば、拡散してもトラブルになることはないということですね。
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