LJ特派員★伊庭野はるかのバルセロナ日記
美食で町おこし!
小さな避暑地が“世界が絶賛する食の街”に!
サン・セバスチャン
すっかり夏模様のスペイン。今回は、週末を利用してスペイン北部のバスク地方、フランスとの国境近くにあるサン・セバスチャンという街に行ってきました。
バルセロナからは飛行機で50分ほどで到着します。
この街は人口18万人の小さな街ですが、“美食の街”として世界的に有名。それもそのはず、人口あたりのミシュランの星付き店が世界一だそうなんです!
そして、美味しいピンチョスやタパスを楽しめる100軒以上のバルが並んでいることでも有名なんです。
バスク地方は海に面しており、切り立った崖と山に囲まれており、スペインでは珍しく雨が多い街でもあります。そのため、海や山から豊かな食材が集まります。
ここではバスク地方独自のバスク語という言語もあり、独立運動も盛ん。スペインとは違った文化を持っている特色ある場所なんです。
丸い湾を囲んで街が広がっており、ビーチは大賑わいです!
こちらが旧市街の街並み。たくさんのバルが軒を連ねています。
それぞれの店が色とりどりの自慢のピンチョスをカウンターに並べています。
じつはこのピンチョスと、それをカウンターに並べるというスタイルの発祥は、ここサン・セバスチャンなんだそうです!
こちらが、カウンターに並べられたピンチョスの数々。店の人に声をかけてお皿をもらい、自分で好きなものを選んでとります。どれにしようか、選ぶのもとても楽しい時間です!
街のバルにある普通のピンチョスが、この美しさ!どれもおいしそうで迷ってしまいます。
店員さんにオススメを聞くと、「これは店の看板メニューだよ!今日はこれがオススメ!」など、軽快に答えてくれました。
バルでは、こういったピンチョスが1つ2ユーロほど。店の自慢のピンチョスをスタンディングで少しつまんで、次のバルに行って…と、いくつかのバルをハシゴするのがバスク流。地元の人達の食文化が海外の観光客に受け、今では観光アクティビティとしても大人気なんです。
このバル文化はサン・セバスチャンだけでなく、バスク地方の他の街でも同じ。今ではこの気軽さが受けて、スペイン中に広がっているんです。
夜になると、バルの前には美味しいピンチョスとお酒を楽しむ人々でいっぱい!地元の人もいますが、多くはヨーロッパ中からバカンスで集まった人々。様々な言語が飛び交っています。
さて、どうしてこの小さな街が“美食の街”として世界から注目されるようになったのでしょうか?
もともとヨーロッパの避暑地として栄えていたサン・セバスチャンですが、40年ほど前から、地元のシェフたちが、「新しいバスク料理」という意味の「ヌエバ・コシーナ・バスカ」という取り組みを始めたのがきっかけだそうです。それは、泡状の料理や新しい調理法、見た目に美しい新たなレシピを開発する取り組みだったのですが、彼らの挑戦はそれだけではありませんでした。
普通はレストランごとにオリジナルのレシピがあり、それを守ることで店を繁盛させていくはずなのですが、サン・セバスチャンのシェフたちは違いました。
なんと、あえて店の秘伝のレシピや新しい料理のアイデアを他のレストランの料理人たちと共有することで、「店だけでなく街全体に人を呼ぶ」ことを実現しようとしたんです!
それは、街のバルだけでなくミシュランの星付き店でも同じだそう。
せっかくなので、そんな高級レストランにも足を運んでみました。
ここは、スペインでは知らない人はいないというスターシェフ「マルティン・ベラサテギ」のレストラン。15年連続ミシュラン3つ星を獲得しているそうです。
1つ1つの料理のビジュアルも味も、驚きに満ちていました!
そんなスターシェフも「レシピは弟子たちにも伝える」と公言しているほど、ここでは「アイデアをみんなで共有する」ということが自然にされていて、その結果として美食の街として世界中から観光客が集まるようになったのです。
さらに、地元の男性たちが集まってレシピを開発したり、みんなで新しいレシピを試したりする「美食倶楽部」という集まりがいくつもあるんだそうです。料理人だけでなく、地元の一般の人々も食に対する意識が高く、それがこの町おこしに繋がったようです。
新鮮な食材という大事な資源を最大限に活かして“美食の街”に育てあげた地元の人々の努力と意識の高さ、見習うべきとことがたくさんあると感じました!
文字通り“食い倒れ”の旅で、翌日は何も食べられませんでした…!