LJ特派員★伊庭野はるかのバルセロナ日記
【カタルーニャを代表する作曲家、フェデリコ・モンポウの家を訪問!
映画「スター・トレック」の音楽にもなった繊細で緻密な作品の数々】
こんにちは。今回は、カタルーニャが生んだ音楽家を紹介します!
バルセロナといえば、ガウディに代表される建築群。それらを見るために世界中から観光客が訪れます。
あまりに建築が有名なので、カタルーニャの音楽について観光客の方々が興味を持つことはなかなかないかもしれません。
でも、カタルーニャには超一流の音楽家がたくさんいるんです!
カタルーニャが生んだ音楽家、たとえば、世界三大テノール歌手の一人であるホセ・カレーラス。カレーラスはバルセロナ生まれで、バルセロナにあるリセウ音楽院という音楽学校で学びました。このリセウ音楽院からは、多くのオペラ歌手や演奏家が輩出されています。
他にも、20世紀最高のチェロ奏者といわれるパブロ・カザルスや、ピアニストのアリシア・デ・ラローチャなど、世界を舞台に活躍する音楽家がカタルーニャから多く生まれているんです。
バルセロナ出身の作曲家、フェデリコ・モンポウも、カタルーニャの音楽を語る上で欠かせない重要な人物。今回は、バルセロナ出身の作曲家であるフェデリコ・モンポウのゆかりの地、「モンポウ財団」を特別に見学させていただきました。
モンポウ財団があるのは、高級店が立ち並ぶグラシア通りという大通りの一角。ガウディ建築のカサ・ミラからほど近い建物の中にあります。
ここはもともと、モンポウが晩年に住居として使っていた部屋。
中に入ると、美しい調度品が並べられ、とても上品な空間が広がります。
モンポウは1893年にバルセロナで生まれ、1987年に94歳でバルセロナで亡くなるまで、バルセロナやパリを中心に活躍し、多くのピアノ作品や歌曲を生み出しました。
モンポウの曲は日本でもよく演奏されていますが、多くの映画や舞台でも使われているそうです。たとえば、映画「スター・トレック」。モンポウのピアノ曲《歌と踊り》第6番が映画の中で使用されています。
こちらはモンポウと妻・カルメンを収めた貴重な1枚です。
妻のカルメンはピアニストでした。、モンポウ彼の楽性の一番の理解者であり、彼の音楽を広めることに尽力していたそうです。
財団には、こんな鐘も置かれています。
モンポウの一族は、教会の鐘の鋳造業を営んでいました。ここに展示されている鐘は、モンポウの実家で作られたものだそうです。
モンポウの作品には鐘の音色をモチーフにした曲や、たくさんの鐘が鳴り響くような美しい響きがみられます。もしかしたら、少年時代から実家で聴いていた鐘の音色が彼の音楽性を創り上げたのかもしれません。
こちらは、モンポウの作品の演奏会のポスターやプログラム。
この財団は、モンポウ夫妻と生前交流のあったジュアン・ミリャさんの娘であるベルタさんが事務長を務め、モンポウ作品を守っていくための活動を行っています。
写真左がベルタさんです。
写真右は、今回案内してくださった内藤さん。モンポウの音楽の研究に取り組んできた方で、時々ベルタさんのアシスタントもしています。
内藤さんに、モンポウ作品の魅力を聞いてみました。
「モンポウの作品の魅力は、なんといってもその美しさ。短い作品が多いですが、どの作品からも透明感が感じられるんです。その響きを支えているのが、たくさん散りばめられた複雑な和音。
モンポウは、音楽を構成する一つ一つの要素に対して彼独自の考えを持っていて、それを“最小限の音でいかに多く表現するか”をいつも考えていました。一見単純で短い作品なんですが、彼のこだわりを一つ一つ解き明かしていくのがとてもおもしろいんです。
モンポウの曲は響きをとても重視しているので、ぜひ、音が発された後の“余韻”にも注目して聴いていただきたいです。」
たしかに、モンポウの音楽は美しく上品で、複雑な和音の響く作品が多いように思います。正統派な美しい旋律の中に、フランス音楽に影響を受けたようなエスプリのある遊び心があるようにも思えます。
彼はもともと内気で控えめな性格だったそうで、そんな彼の人間性が繊細な音楽を生み出したのかもしれませんね。
こちらが、モンポウの自筆譜。映画「スター・トレック」で使用された曲の手書きの楽譜で、カルメンに贈ったものです。見てください、この整然と並べられた音符の数々!音符の形も線も、手書きと思えないほど揃っていて、本当に几帳面な性格だったのだろうなぁと感じます。
さて、モンポウの作品は、日本でもCDなどで聴くことができます。
内藤さんに、モンポウを初めて聴く方のためのおすすめの作品を聞いてみました。
モンポウ作品には珍しい弦楽器の曲もおすすめしていただきました!ぜひ、聴いてみてくださいね
【フェデリコ・モンポウ 初めて聴く方へのおすすめ作品リスト】
1.ピアノ曲《子どもの情景Scènes d’enfants》より第五番〈庭にいる娘たちJeunes filles au jardin〉 |