読者の代弁者として映像業界の名だたる先輩方にインタビュー! 作品についての質問をきっかけに、映像業界、そしてこの世界を生き抜いていくためのヒントを探っていきます。第3回目のゲストは、切なく儚い“人間の業”を描いた映画『冬薔薇(ふゆそうび)』の公開が控える阪本順治監督です。
自由な解釈ができるのも
映画の楽しみのひとつ
辻「阪本監督の最新作『冬薔薇(ふゆそうび)』を拝見しました。主人公はごく一般的な家庭に育った男の子に見えるのですが、友人関係や周りの環境によって道を誤ってしまうのは、誰にでも起こり得ることだなと思いました。あと、孤独が人を変えてしまう怖さも感じました」
阪本「自分の前に壁があるのが見えているのに、脇から回ろうとしたりする。主人公は考えることをせず、行き当たりばったりに生きていますが、実は周りの人間も自分の問題と向き合わず漂流しているんですよね。それこそ『(解釈は)お客さんに委ねます』という言い方をすることがありますが、観てくださるかたが、自分なりの結末を想像してくれたらいいし、それが映画を見る楽しみのひとつだと思います」
辻「私は今回の結末に少し困惑してしまったのですが、感じ方は人それぞれということですね」
阪本「もっと言えば、作り手の解釈がすべて正解なわけじゃないから。自由に感じてもらえれば、それでいいと思っています」
—-続きはロケーションジャパン2022年6月号で—–
https://www.fujisan.co.jp/product/1281680383/new/
最新作 映画『冬薔薇(ふゆそうび)』
専門学校にも行かず、不良仲間とつるんでいる淳(伊藤健太郎)。彼の両親は埋め立て用の土砂を運ぶガット船の海運業を営んでいるが、淳は両親の仕事にも興味を示さずにいた。そんなある日、淳の仲間が何者かに襲われる。
©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS
阪本順治監督
1958年生まれ、大阪府出身。
1989年に『どついたるねん』で映画監督デビュー。2000年の『顔』で各映画賞を総なめにし、その後、『亡国のイージス』『大鹿村騒動記』『北のカナリアたち』『団地』『エルネスト』『半世界』『弟とアンドロイドと僕』などを監督。
女優・辻凪子
1995年生まれ、大阪府出身。
NHK連続テレビ小説『わろてんか』、『おちょやん』など朝ドラに数多く出演するほか、自身が監督と主演を務めた映画『ゆれてますけど。』など映像の世界で活躍を見せる新進女優。