映画『コーヒーが冷めないうちに』
低音や映像の広がりなど、映画だからこその
魅力が発見できました(塚原監督)
しっぽまで〝あん〞が詰まっている
たい焼きのような映画でしたね(八木さん)
ドラマ『アンナチュラル』の監督が
“泣ける映画”に初挑戦!
『Nのために』『リバース』『アンナチュラル』など数々のヒットドラマを作ってきた塚原あゆ子監督が、初めて映画を手掛けた。ドラマとは似て非なる映画の世界。アウェイ感漂う現場をどうホームに変えたのか? 映画ならではの魅力とは? 八木さんが迫ります!
八木:初めまして。小柄で可愛らしいんですね。バーンっとした方かと勝手に思っていました。
塚原:そうですか。最近、現場では女らしくしていた方がいいんじゃないかと思っているんです。
「この人には大きな声出さないほうがいいな」と思ってもらった方が得かなって(笑)。
八木:アハハハ! 確かに、優しくしてもらえるかも(笑)。それはそうと、映画初監督、おめでとうございます。ドラマと映画はやはり違いました?
塚原:そうですね。楽しんでもらえるものを作るという意味では、作業にあまり違いはなかったように思います。
八木:塚原監督はドラマ作りでは長いキャリアをお持ちですが、ベテランになってからの初体験ってそうそうないですよね。
塚原:社会人になってからは、初めてドラマの監督をした時以来ですね。このような機会を頂けてありがたいです。
八木:覚悟は要りました?
塚原:テレビの場合、基本的に視聴は無料ですが、映画はお金を払って2時間かけて観るもの。つまらないと言われたらどうしようとは考えました。ただ、プロデューサーも脚本家も一緒にドラマを作ったことのある人たちだったので、現場に入るまでは、初めて2時間ドラマを撮る、くらいの感覚だったんです。
八木:そうだったんですか。
塚原:現場で初めて、スタッフが総取り替えになるとはこういうことかと実感しました。これは迷惑かけないようにしなくては、と(笑)。
八木:大御所のスタッフも多かったそうですね。
塚原:そうなんです。恐れ多いことに、その方たちが私に合わせてくれようとしている感じが半端なくて。テレビと映画は、使う用語も含め、いろいろな点で違うんですよ。ドラマの場合、俳優さんの1回限りの表情を撮り損ねないように、テストからカメラを回すのはよくあることなんですね。でも、映画の世界の人たちは、フィルムを回す=本番、の感覚。「テストから回します」と言ったときのざわつき! あの怒られそうな空気と緊張感は忘れません。
八木:ハハハ! 役者さんがすごくいい表情をしていたとしても、照明さんやカメラさんにとっては、調整段階のものが使われるということですものね。
塚原:そうなんです。設定を完璧に整えて美しく撮るために集まっている人たちですから。
八木:でも、その大御所さんたちが歩み寄ってくれたんですね。
塚原:気を使っていただいていたと思います(笑)。
八木:映画ならではの発見や楽しさはありましたか?
塚原:ありました。テレビだと低音が出づらいんですよ。たとえば、「3年前」というテロップを出すようなときにつける「ドーン」という低い音。
八木:胸に響くような?
塚原:そうです。現場で聞いていた臨場感が薄れる。それが、映画では聞いたままの音が伝わる感じがあって感動しました。今回、水にドボンと入り込む音も、「これが欲しかった!」という音が出てうれしかったですね。
八木:じゃぁ、ドラマはたくさん撮ったから、これからは映画だ!と思っていたりして?
塚原:それはないです(笑)。作品によりますね。私はこれまでワンクール10〜11時間の連続ドラマばかり撮ってきましたが、これは登場人物が成長できる長さなんです。積んでいく感じが楽しい。だから、人を育てるという意味では2時間は物足りない印象があります。
(続きは本誌を御覧ください)
過去に戻れると噂の喫茶店「フニクリフニクラ」。ただし、過去に戻ってどんなことをしても現実は変わらない。しかも過去に戻れるのは、そこで働く時田数がコーヒーを入れたときだけ、そしてそのコーヒーが冷めるまでの間だけ。幼なじみとケンカ別れをしたキャリアウーマン、若年性アルツハイマーの妻を見守る夫、故郷に妹を残してきた常連客――それでも過去に戻り、再会を望む人々。彼らを待っていたものとは? そして数が抱えてきた過去とは?
【作品詳細】
映画『コーヒーが冷めないうちに』
監督:塚原あゆ子
原作:川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』(サンマーク出版)
キャスト:有村架純、伊藤健太郎、波瑠、林遣都、深水元基、松本若菜、薬師丸ひろ子、吉田羊、松重豊、石田ゆり子 ほか
(C)2018「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会
2018年9月21日全国ロードショー