北アルプスの麓・長野県小谷村で営まれる共働学舎の暮らし~『アラヤシキの住人たち』
北アルプスの山裾、長野県小谷村。 車の通わない山道を1時間半歩いたところに、40年前からある真木共働学舎。食べる、働く、眠る、そしてまた朝がくる――。自然深い小さな村の1年を描く写真家・本橋成一氏の6年ぶりの監督最新作。
さまざまな場面で「個」や「多様性」が叫ばれる現代社会の中で現代社会に生きづらさを抱える人々が増え続けています。本作はそのような生きづらさを抱える人たちと障がいを抱える人たちが一緒に暮らすことを実践する真木共働学舎の1年を追いかけたドキュメントムービー。
2014年に創立から40周年を迎えた共働学舎。
1974年、 長野県北安曇郡小谷村立屋集落で、「競争社会ではなく、協力社会を」という理念のもと、社会で弱い立場にある人たちと農業・酪農・工芸などを基礎として共に働き、自立した生活を目指す場所として、宮嶋眞一郎氏によって共働学舎が設立されました。
電気も水道も通らない、小さな小屋一つから始まった共働学舎は、現在では、北海道に二か所、信州に二か所、東京に一か所の五つに増え、それぞれに特徴を活かしながら運営されています。
共働学舎では、身体的、精神的あるいは境遇上のさまざまな差異を持つ人たちが、自分たちの得意とすること、苦手とすることを協力して担い合い、お互いに支え合いながら、共同生活を送っています。 ここでは特筆すべきは、一般の福祉施設のような世話する人・世話される人という関係性は見られないということ。人間一人一人が持つ、個性や能力を尊重し、誰もがメンバーとして、農作業や動物の世話などの日々の仕事と向き合っているのです。
集落全体の高齢化などによって廃村となった後の真木集落で、共働学舎の創設者である宮嶋眞一郎氏と数人の同志が生活を始め、真木共働学舎がスタートしました。 ひときわ立派な2階建ての茅葺きの家「アラヤシキ(新屋敷)」に、現在、20代~60代の男女十数人が、犬や猫、ヤギや鶏などの動物たちと共に暮らしています。
先の村人たちが先祖代々使ってきた畑や田んぼ、数軒の古い茅葺き屋根の家をそのまま受け継ぎ、米や野菜作りなどの農作業、家畜の飼育などを生活の中心に据えた生活が続けられてきた。一番長く真木で暮らしている人は、37年目になるのです。 昔から車が入ることができない真木集落へは、山道を1時間半歩いて行かなければなりません。
メンバーたちは、週に何度も、多い時では一日に何度も生活に必要な荷物を背負い、麓からの山道を往復するのです。「荷上げ」と呼ばれるその作業は、彼らの日々の仕事として、生活の一部となっています。
真木集落は今村昌平監督作品『楢山節考』(1983年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞)の撮影地となった場所でもあります。 雨に崩れた道を直し、屋根に降り積もる雪下ろす。 長野県小谷村を舞台に四季を通して繰り広げられる営みは、観る者に生きることの本質を問い掛けてくるのです。
▼詳細
『アラヤシキの住人たち』
監督:本橋成一 プロデューサー:大槻貴宏 撮影:一之瀬正史
編集:石川翔平 録音・MA:石川雄三 制作進行:中植きさら
特別協力:NPO法人共働学舎 宣伝:ウッキ―・プロダクション
製作・配給:ポレポレタイムス社、ポレポレ東中野
http://arayashiki-movie.jp/