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権利処理
2023.03.17

「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.35 “市の広報誌などに場面写真を使用する際、写真の加工は可能?”

ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!

Q
ロケ地マップやロケ地看板、市の広報誌に場面写真を使用したいと思っています。写真をトリミングしたり、文字を重ねるなど、加工することはできますか。

 

 

A

許可なくやるのはNG。著作隣接権の中で保持を得ていれば大丈夫です。

 

 

 

田中 「場面写真(ワンシーン写真)」をロケ地マップやロケ地看板に権利処理をして利用する場合に注意することがあります。それは、許諾を受けた「場面写真」を何も加工せずに使うことです。

 

國松 そうですね、許諾があれば何でもOKとはいきません。「著作権者」から写真という著作物の利用許諾を受けても、著作権法には、ほかに「著作者」に認められた「著作者人格権」という概念が別に存在するため、著作物を適法に利用するためには、そのこともきちんと意識しておく必要があります。

 

田中 著作者人格権とは、具体的にはどのような権利なのでしょうか。

 

國松 現在我が国の著作権法で認められている著作者人格権は、①公表権、②氏名表示権、③同一性保持権、④名誉声望保持権の4つ。著作権者ではなく「著作者」に認められている権利だというのがポイントです。極端なことをいえば、「著作権者」からOKをもらって加工使用していても、「著作者(写真であれば撮影者)」が別にいて、その著作者から「写真の加工はNG」などと主張されたら、著作者人格権侵害だと判断されてしまうということです。

 

田中 実際はこれを避けるため、著作権者から許諾をもらう際に、著作者からの人格権行使がないことを保証してもらうなどしますよね。いずれにしても、著作者のことを意識して、トリミングや文字を乗せるなどの加工を行ってよいのかどうか、行う場合はどの程度までやってよいのか、といった点を許諾元に確認しておくことをお勧めします。現場写真に俳優が写っている場合、他に何か気を付ける点はありますか。

 

國松 俳優が写っている場面写真であっても、制作責任者やPR担当者などから写真利用の許可を受け、ロケ地マップやロケ地看板のように、その作品に関係する形で利用するのであれば通常は問題ないと思います。しかし、関係のない商品の宣伝利用や俳優の切り抜きはもちろんNGです。

 

田中 「場面写真」の利用も著作権法のことをある程度きちんと押さえておく必要がありますね。Webでは、「場面写真」の有効な利用方法について紹介します。

 

=====以下、Web版のみ掲載=====

 

田中 写真を第三者に提供する際、宣伝部が一番気をつかうのは、提供先がやってしまいがちな安易な「改変」行為です。宣伝利用に提供されたものであっても、それを加工・編集するには改めて「改変」の許諾が必要ですよね。

 

國松 そうですね。著作物をそのままの状態で複製したり、配信する権利と著作物に色々と装飾・加工を施したりする権利は、種類の異なる権利です。また、よくある例としては、写真の上に大きく図画や文字を重ねてしまうことです。これを勝手にやってしまうと著作権者からそのような使い方は認めていないというということで、クレームを受ける可能性があります。

 

 

田中 そういう使い方の代表例といえば、雑誌の表紙(表1)などで、俳優やタレントの写真に目次やキャッチコピーなどの文字を上書きする場合がありますが、これらはもちろん写真家に「改変」の許諾をとっているわけです。あとは、写っている俳優さんとの関係ではいかがでしょうか?

 

 

國松 俳優さんは写真自体には何の権利もありません。もっとも、実際は著作権者と同レベルで、宣伝担当は貸出先の装飾や加工について気を配っていると思います。

 

田中 そうですね、イメージが大切な俳優さん(あるいは所属事務所)からすれば、自分の肖像にどんな装飾や加工がされるかは、非常に重要な関心事ですからね。写真を貸し出す宣伝担当の立場からしても、出演者である俳優さんや事務所の意向は当然大切にします。そういう意味でも、写真の貸し出しを受けるときは、宣伝担当には現場写真をどのような企画で使用し、その際どのような加工を施すのかといった点について、しっかり確認しておくのがよいと思います。

 

國松 いわゆる「私的使用」の範囲内であれば、「場面写真」を加工して自分で楽しむための「なりきり写真」や「オリジナルロケ地ガイド」を作成することができます。ただし、作成したものをSNSなどにアップロードした途端、違法となってしまいますので注意してください。

 

 

 

■ 回答者プロフィール
権利処理_20190912_01 (1)

 

 

 

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