「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.40 “過去撮影した俳優の写真を再利用する際に権利処理は必要?”
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!
Q
過去にロケ作品関連イベントで撮影した俳優の写真を、再度HPに掲載したいと思います。俳優の事務所に権利処理をする必要はありますか。
A 作品に関連したものであれば報道・広報利用とみなされるため権利処理の必要はありません。
田中 アニメ・ドラマなどのロケや舞台設定の作品関連のイベントを自ら取材したときの写真や映像を再度、報道・広報目的で使用する場合に出演者の権利処理は必要でしょうか。
國松 イベントを自ら取材をして撮影した写真・映像を、そのイベントの内容を紹介する記事の中で使用するのであれば、基本的に権利処理をする必要はありません。
田中 イベントを正規のルートで取材したのであれば、その際に写真や映像を撮影し、それをWEB記事などで配信することは当然最初から許可・許諾の範囲に入っているといえますよね。また、そのイベントを伝える記事の文脈の中で、その作品を紹介したりすることもあると思うのですが、その際に必要最低限の範囲で作品の写真など使用することは基本的には問題とはされないことが多いと思いますがいかがでしょうか。
國松 後者の部分は、著作権の権利制限である「時事の事件の報道のための利用」だと説明が可能です。「写真、映画、放送その他の方法によって時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴って利用することができる」(著作権法第41条)とあります。
田中 ロケ作品のイベントは「時事の事件」に相当するのでしょうか。
國松 「時事の事件」に関しては、何も政治や事件報道に関連するものに限定されてるということはないです。その時々世の中で起こったある程度社会的にも関心を持たれている出来事なのあれば、その情報は伝える価値があります。
田中 分かりました。一方で、「時事の事件」に名を借りた観賞用目的の記事や映像の目的外利用は認められないので,気を付けたいです。また、写真素材の提供を受ける際は、きちんと出所明示などができるように,担当者から表記を確認するようにしておきましょう。
田中 電車の中釣り広告で週刊誌などが政治家や俳優の顔写真を使ってますよね。本誌でも掲載されていることも多いと思いますが、おそらく事前許諾は取ってないですよね?
國松 実際のところは分かりませんが、不祥事を伝える記事や批判的な記事の中でも使用されていますので、基本的に本人や事務所などの許可は取ってないだろうと思います。写真の著作権の問題でいえば、週刊誌のいわゆる「ゴシップネタ」であっても、それが「時事の事件」に当たるのであれば著作権法41条の適用はあります。よって、取材の真偽についての争いはありますが、掲載写真についての争いはあまり聞きませんね。そんな中でも、タレントさんのプライベートを切り取った写真を掲載した週刊誌が、肖像権の侵害だとして訴えられた裁判(東京地方裁判所平成18年3月31日判決)はあります。ある店舗からタレントが映っていた防犯カメラの映像が流出し、それが写真週刊誌に掲載されてしまった、という事案でしたが、さすがにこれはやり過ぎだということで、原告の肖像権を侵害したと判断されました。「ここまではOK」といったような、はっきりとした線引きがないので、どういうときにどのような判断が出るのか、結構予想が難しいんですよ。
田中 「時事の事件の報道」や「引用」といった著作権法の制限規定は要件該当性の判断が難しく、思わぬところでクレームを受けることがあり得ますので、専門家の判断を経ておく方がよいですね。ロケ地やイベントでの取材は、重要な広報アーカイブ映像なのでしっかり対応しましょう。今後再利用することがあるのでメタデータ(映像取材記録)を残しておくのも大切です。撮影時に今後の利用媒体に制限がかからないようにタレントの事務所サイドへ事前に依頼して利用承諾を得ておくことも一案ですね。
國松 そうですね、映像の再利用を想定するのであれば、取材許可を得る際にしっかりと確認しておきましょう。
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