「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.42 俳優がロケ地で発信したX(旧Twitter)をリツートして、情報発信をしても大丈夫?
ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!
Q. 俳優がロケ地で発信したX(旧Twitter)をリツートして、情報発信をしても大丈夫でしょうか。
A ポスト元が適法であればOKです。ただし、違法画像がある場合は要注意!
田中 出演俳優が発信したSNSの情報発信を利活用する方法を考えたいと思います。出演俳優がX(旧Twitter)でポスト(ツイート)したものをロケーションサービスがリポスト(リツイート)する場合の注意点を教えてください。
國松 Xのリポストに関しては、2020年7月21日最高裁判決(「リツイート事件」)が参考になります。この裁判では、リポストの元となったポスト(元ポスト)に、第三者が撮影した写真(作品)の無断利用などがあった場合、これをリポストした人に、当該元ポストの違法性が引き継がれてしまうのかが争われました。結論は、リポスト自体は新たに当該作品を利用することにはならないため、その点では著作権侵害を認めませんでした。
田中 ということは、リポストは特にリスクはないと考えてよいのでしょうか。
國松 判例は違う観点からリポストの違法性を認めたので、そうとは言いきれません。元ポスト・リポストに載っていた写真についてはもともと作者の表記があったのですが、これがポストやリポストでは見えなくなっていました。そのため氏名表示権という著作者人格権の侵害を認めました。つまり、たとえば出演者が何気なく投稿したポストに違法性があれば、これをリポストした側にも、権利侵害リスクがあるということになります。
田中 俳優のポストに、制作側とロケ地側約束した未公開情報が含まれている場合などはどうでしょうか。
國松 その約束はあくまでも民事のものですし、それだけでリポストまで縛れませんので、法的には問題ないかと思います。ただ、その俳優は責められるかもしれません。また、ロケ地側にもリポストを削除して欲しいとの依頼がある可能性があります。
田中 なるほど。やはり無条件にリポストするのではなく、ロケツーリズム協議会の「三種の神器」で合意した情報であるかどうかを確認して利活用するのが安心ですね。適法な利活用方法はWebで紹介いたします。
【Web解説はこちらから】
Xに関わらず、SNS(Social Networking Serviceの略でインターネットコミュニティサイトのこと)への投稿は、個人が簡単に情報発信することができるように便利になった反面、意図せずに拡散してしまう危険性もあります。Twitter事件の最高裁判所では、第三者が撮影した写真(作品)の無断利用などがあった場合に、リポストした場合は元ポストの違法性が引き継がれてしまうのかが争われました。
Twitter事件の最高裁判決は、リポスト自体は新たに当該作品を利用することにはならないため、その点では著作権侵害を認めませんでしたが(インターネットのリンク合法性の追認)、投稿したポストに違法性があれば、これをリポストした側にも権利侵害が及ぶリスクを判示しています。また、権利侵害以外にも安易にSNSの「いいね!」ボタンをクリックすることにより、名誉毀損または侮辱に該当すると東京高等裁判所判決で賠償命令の裁判例があり、誹謗中傷規制強化の動きがありますので、SNSへのリアクションは、元投稿の内容をしっかりと確認することが大切です。
ロケツーリズムの情報発信において、ロケ地に関するWeb記事やYouTubeへのリンクや「いいね!」、リポストは、ロケ地情報の拡散手段として有効ですがリンク元、リポスト元の内容をしっかり確認して行うようにしましょう。このルールを守れば情報拡散力は倍増するので、適法に使わない手はありません。(田中)
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