キリンレモンにマクドナルド…大手CMなぜここで撮影? 島原・大三東駅に人が集まるワケ
現在放送中のマクドナルド「マックフルーリー 濃厚マンゴー&カルピス」のCMに登場する島原鉄道の「大三東駅」をご存知だろうか。「海に最も近い駅」をうたうこの駅では、昨年のキリンレモンに続き今年はマクドナルドのCMが撮影された。
海をバックにした美しいロケーションは話題を呼び、都心から飛行機と電車で約4時間という立地にもかかわらず、大三東駅に訪れる観光客は増加。7月22日放送のドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』(NHK)でも大三東駅が紹介された。
なぜアクセスも良くないこの駅に、大手CMが立て続けに決まるのだろうか。
『有吉くんの正直さんぽ』でブレイク
長崎県島原市は長崎県南東部にある人口約43000人の市。至る所に湧水があり、島原の水は、日本名水百選にも選定されている。その地の利を活かし、清冽な水路に色とりどりの鯉を流したことから、別名「鯉の泳ぐまち」として知られている。
島原市では観光客の増加を目指し、2019年に市長の直轄の組織として「ロケツーリズム班」を立ち上げた。しかし直後に新型コロナウイルスの影響が出始め、観光業は大ダメージ。そんな中でも担当者は研修に参加し、ロケ対応の知識を身に着けるなどコツコツと体制を整えていった。
ターニングポイントとなったのは21年1月放送のバラエティー番組『有吉くんの正直さんぽ』。番組で登場した「伏見屋食堂」では、有吉らが味わった地元グルメ「皿ちゃんぽん」を求めて、連日視聴者が訪れた。この放送を皮切りにバラエティーや情報番組の映像制作者からの問い合わせも増えたという。
昨年4月からは女優・上白石萌歌が出演するキリンレモンのCMが放送。各地から観光客が訪れ、自販機でキリンレモンを買って「なりきり」をするなどして楽しんだ。構内には駅を訪れた観光客のメッセージが書かれた黄色いハンカチが風にたなびき、今や観光スポットになっている。
上白石さんの立った場所には、撮影用の『足跡』マーク
島原市ロケツーリズム班の担当者はその影響について、
「なりきり用に、上白石さんがCMで立った場所には『足跡』マークが付けてあります。また構内にあるガチャガチャで黄色いハンカチを買ってメッセージを書き、駅に残していくことができます。一見するとただの無人駅ですが、旅の思い出をいろいろ残すことができると観光客には好評のようです」
と話している。
ロケツーリズムで復活目指す観光地
このようにCM・ドラマ・映画のロケ地となった場所をファンが巡る行動は「ロケツーリズム」と称される。新型コロナウイルスの影響が長引く中、ロケツーリズムはどの地域でも課題となっている「観光業の再建」の一つの手段として注目されている。
7月14日に開催されたロケツーリズム協議会
7月14日、全国でロケツーリズムを推進し、地域のファンを増やすことを目的とする「ロケツーリズム協議会」がリーガロイヤルホテル東京(新宿区)で開催された。ここでは先ほどの島原をはじめとした各地の事例が紹介されるほか、ロケ問い合せへの対応や作品の権利処理といった実践的なスキルを自治体や企業の職員が学ぶ。
今回は協議会初の試みとして地域をいくつかのブロックに分けた「エリア別ワーキング」が行われた。参加者からは「お互いの状況を知る機会がないので助かる」「地域間連携に可能性を感じた」と好評だったという。
エリア別ワーキングの様子
観光庁観光地域振興部観光資源課の日比祐介さんは、冒頭のあいさつで次のように述べている。
「新型コロナウイルス感染症拡大により、地方経済は厳しい状況にあります。そのような中でもロケツーリズム協議会の取り組みは、地方経済・地域の活性化を図る取り組みとして実績を上げています。
海外でも、なかなか日本に来られませんが、ドラマなどの作品視聴を通して日本に思いを馳せている人が多いと聞いています。コロナ禍時代においても、ロケツーリズムは地域の魅力を効果的に発信することに成功しているといいう裏付けです」
コロナ禍3度目の夏、ロケツーリズムに注目が集まる。