黒澤武蔵が「愛を叫ぶ」のはなぜ? 『おっさんずラブ』瑠東監督に聞く「こだわり」
幅広い層から人気を集める、現在放送中のドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』。
『おっさんずラブ』シリーズは16年放送の単発ドラマが深夜帯にも関わらず注目を集め、18年放送の連続ドラマは大ヒットしたことに始まる。翌19年には『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』が公開、同年には『おっさんずラブ-in the sky-』として再び連ドラ化され、シリーズを通して人気を博している。
3度目の連ドラとなる本作では、アラフォーになった“はるたん”こと春田創一(田中圭)と牧凌太(林遣都)の新婚生活を描く。天空不動産を早期退職し、家政夫となった元上司の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)や、春田らの隣に住む和泉幸(井浦新)と六道菊之助(三浦翔平)を巻き込んだ衝撃展開が続き、またしてもSNSで反響を呼んでいる。
ロケーションジャパンでは放送当初から『おっさんずラブ』シリーズを手掛ける瑠東東一郎監督にインタビュー。シリーズの制作背景やロケ地選びについて話を聞いた。
瑠東監督「BLブームは関係ない」
――放送当初から日本中に社会現象を巻き起こした『おっさんずラブ』シリーズですが、ヒットの背景には何があったとお考えですか。
瑠東監督:正直、わからないです。ただ、この作品は必ず伝わるはずだ、という「熱量」だけは当初からずっとキャスト・スタッフみんなが高く持っているということでしょうか。
――当時はまだBLドラマがそこまで多くなかった中で、本作は「BLブームの先駆け」とも言われていますね。
瑠東監督:BLブームはあまり関係なく、愚直にまっすぐやってきたつもりです。『おっさんずラブ』はシンプルに「真っ直ぐに愛を描く」話で、誰かが誰かのことが好きということに差もなければ、珍しいこともない。そんな当たり前のことを、熱量を持って人に届け、ズレた時には笑いが生まれ、真っ直ぐ当たれば心が動く。そんな作品を目指しました。
――続編制作にあたり、意識したことはありますか。
瑠東監督:「二作目は一作目を超えにくい」とよく言われ、どうしても意識してしまいましたが、貴島彩理プロデューサーは「楽しもうよ」という感じで。素敵な感覚だな、と。気負い過ぎず、まずは現場の僕らが全力を尽くして全力で楽しむ。またこのチームで一緒にやれる事は決して当たり前ではない。喜びや、感謝を噛み締めて一つ一つ紡いでいます。
告白の場所は「心をさらけ出せるような場所」
キャスト・スタッフ一丸となって取り組んでいるという本作は、コメディーに振り切ったシーンから、登場人物たちが相手への想いを打ち明ける真剣なシーンまで、幅広い面で楽しめる。彼らの魅力を最大限に引き出す、監督のこだわりとは。
――シリーズを通して、武蔵が春田への想いを「叫ぶ」シーンが多い気がします。これは何か意図があるのでしょうか。
瑠東監督:「愛を叫ぶ武蔵」をはじめ、登場人物たちは感情の爆発が多いかもしれないですね。人の心を動かす事って本当に難しいんです。笑いであっても感動であっても。僕はそこに圧倒的な熱量が必要だと思っていて。作り手にも演じ手にも。愚直に熱を持って生きる人を描く事を大切にしています。それが『おっさんずラブ』の高いギアに繋がっているのかもしれません。
――そんな中でも、ここぞという場面のロケ地選びはどのようにされていますか。
瑠東監督:一般的には「本当にそこに登場人物が生きていたとしたら、多分こういう場所だろう」という選び方があると思いますが、『おっさんずラブ』ではそこも凌駕して吹っ飛ばしたい気持ちがありました。例えば、シーズン1で武蔵が春田に振られた、お台場の有明北緑道公園。
武蔵が春田に想いを告げるシーンは主にこの場所だったのですが、夜景やレインボーブリッジが抜けて凄く綺麗で。2人の関係性を考えた場合、突き抜けてドラマチックであればある程、熱が上がると思いこの場所を選びました。
――背景が綺麗すぎることで、より魅力的なシーンになっていますね。
瑠東監督:キャスト陣がその場所で感情に乗れるかどうかも選ぶポイントです。何かを伝える時、話をする時、環境はすごく大切で。それは日常生活でもそうだと思うんです。こんな場所だからこんな話になった、とか想いが高まった、とか。告白シーンでは、より心をさらけ出せるようなロケーションはどこかを考えています。
――シリーズが続く中で、特に思い入れのあるロケーションはありますか。
瑠東監督:現在放送中のリターンズでは、シーズン1のロケ地を上手く重ねたいと考えていました。横浜国際プール前の階段は、シーズン1の1話で春田が牧にルームシェアを持ちかけた場所なんです。なので、リターンズの1話で春田と牧が再会する場所もここを選びました。俳優部本人たちも、見てくれてる視聴者も、気持ちが盛り上がって欲しいな、と願いを込めて。今後も展開に合わせて、シーズン1のロケーションは上手く重ねて行きたいなと考えています。
怒濤の展開が続くストーリーからも目が離せないが、前作と背景を見比べてみるのも面白いかもしれない。