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2022.12.08

「食べない」「働いてない」以外にNGはナシ! 10年以上続くNHK『サラメシ』の舞台裏 

#サラメシ
『サラメシ』では働くオトナの「昼ごはん」を紹介(写真は2022年11月24日放送)

『サラメシ』では働くオトナの「昼ごはん」を紹介(写真は2022年11月24日放送)

 

「ランチをのぞけば、人生が見えてくる」をコンセプトに、様々な働くオトナたちのありのままの姿を描く『サラメシ』(NHK総合、毎週木曜19時30分~)。2011年5月のレギュラー放送開始から全国の職場に足を運び、働く人々の「昼ごはん」を、俳優・中井貴一の軽妙洒脱なナレーションで、その仕事やパーソナルと共に紹介してきた。

 

10年余りも視聴者に愛される理由はどこにあるのか。本番組の制作を手掛ける㈱テレビマンユニオンの松葉直彦プロデューサーに、ロケでの裏話やこだわりを聞いた。

 

「働くオトナ」の探し方はディレクターそれぞれの方法で(写真は2022年11月24日放送)

 

ディレクターも「収録でびっくりしたい」

 

――「働くオトナの昼ごはん」を伝える中で、様々な職種の方が登場しますね。どのように探されていますか?

 

松葉:ディレクターによってバラバラです。地方版の新聞を読むとか、下見に行って隣の座卓のおじさんたちと仲良くなって「こんな会社もあるぞ」と教えてもらうとか。

下見のやり方も人それぞれです。事前に食事を見せてもらう人もいれば、それは本番の時に楽しみにするので、見なくていいですっていう人もいます。仕事の話もあえて深くは聞かずに帰ってきて、「多分こうだと思うんですよね」と、ロケハンに行ったくせに全部予想でしゃべるディレクターとかも(笑)。ロケのときに、自分でもびっくりしたい…というか楽しみたいんですよね。

 

――番組の公式サイトからも「みんなのサラメシ」投稿で自薦できますね。ここからはどのくらい取材に繋がっているのでしょうか?

 

松葉:今はすごく投稿に頼っています。番組が続くことで視聴者の皆さんも一緒に育ってくれてる感じですかね、面白い投稿をたくさんいただくので堂々と投稿に頼っています(笑)。

 

いただいた投稿はすべて目を通してて、実際話を聞いてみると「え、面白いんじゃないか?」っていうようなこともあります。初めて知る仕事もたくさんありましたし、「この地域でもそれ名産なんだ」という新たな発見が多くあって、我々スタッフのリサーチでは見つけられないネタに出会えるのが投稿の良いところですね。

 

――インタビューでは好きな有名人や好きな本など、昼ごはんや仕事以外のお話もされていますよね。

 

松葉:テロップのモチーフを名刺にしているんです。でも住所などは書けないので、その代わりにキャラが感じられる情報をきかせてもらい、そこから一番共感できたり意外性がある回答を抜き出しています。

例えば、岩手の漆職人の旦那さんに、毎日素敵なわっぱ弁当を作っている奥さん。好きな映画が『死霊のはらわた』だったんです。めっちゃ面白いと思って、好きな映画『死霊のはらわた』ってあえてちゃんと入れたら、ネットの人達もちゃんと反応してくれました。

 

タワークレーンの運転席の人も登場(2013年9月2日放送)

 

番組の信条は「嘘をつかない」

 

――番組としてのNGはあるのでしょうか?

 

松葉:「食事は食べません」と「働いていません」以外に基本NGはないです。それが仮に、「仕事はすごく面白いけど、昼食は毎日コンビニの3個入りのお稲荷さんなんですよ…」と残念そうに報告してくる若いディレクターもいますが、「それで何が悪い?それが好きなんだったらいいじゃん!」と。テレビのステレオタイプに陥らないこと、取材相手の方々の暮らしを‟肯定“することを一番大事にしています。

 

――ここだけは譲れない、というポリシーはありますか?

 

松葉:嘘をつかない、でしょうか。それは最初から意識しています。テレビって編集で嘘をつくのは簡単ですからね。そこには中井貴一さんも共有してくれてて、微妙な違和感も指摘してくれるし、じゃあどう表現するのが一番正しく伝わるか…ナレ録りのスタジオで一緒に悩んでくれることも少なくないです。

 

当然、取材相手がテレビ用に飾ってくれたり、奥様がかなり気合いれてお弁当を作ることもあります。そうすると、下見の時と違うお弁当なことにディレクターは気が付くんですよ。そういう部分は確実にオンエアに載せています。

 

テレビが取材にきてテンションが上がるのは至極自然なことじゃないですか。テンションの上がり方もその人のキャラだったり職場の雰囲気そのものだと思っているので、可能な限りツッコむようにしています。「絶対にこれは撮影用だろう」とちょっと疑って見ていた視聴者の方が、中井さんのナレーションでばらされて、つい笑ってくれてたら嬉しいですね。

 

――これまでのお話にも出てきた、中井さんの明るいナレーションが特徴的ですよね。これは番組側から指定されているのでしょうか?

 

松葉:ナレーション原稿は毎回、事前にお届けしています。伝え手であると同時に、我々にとって中井さんは最初の視聴者でもある。だからその両面ですごく丁寧に読み込んでブラッシュアップの提案をしてくれます。実は、僕たちは最初、もう少し別の雰囲気のナレーションを想定していました。ですが、当初土曜の23時台での放送だったので、中井さん自身考えてきてくれて、「ランチの番組なんだから土曜の深夜を真昼間のようにすればいいんじゃない?」と。正直違和感はありましたが、今となっては大正解、あのナレーションのノリが番組に一番の個性になってますよね(笑)。

 

――明るくテンポの良いナレーションは中井さん発案だったのですね。 最後に、これからの番組の展望を教えてください。

 

松葉:長期展望を考える余裕は正直ないですが、少しずついろいろなことを試しています。ビル上のクレーンの中、国会、刑務所、裁判所、アメリカ大使館、皇居を守る皇宮警察…。普段はなかなか見れない職場にも「昼ごはん見せて」と言えば、結構どこでも行けるようになってきたので、取材欲は増してます。去年ようやく全ての都道府県に取材に行けましたが、まだまだ取り上げていない仕事も行ってない町もいっぱいありますし。

いま番組12年目ですが、まだまだ飽きなさそうですね。

 

(出典:ロケーションジャパン12月号)

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