一歩前に踏み出す勇気をくれる 門脇麦主演映画『世界は今日から君のもの』
『梅ちゃん先生』『結婚できない男』などの人気脚本家・尾崎将也さんの映画監督第2作目となる『世界は今日から君のもの』が、明日7月15日(土)に公開される。
尾崎監督は、不器用な女の子が一歩外の世界に足を踏み出す姿を、時に微笑ましく、時にウルッとさせながら温かく見守る成長の物語を、門脇麦さん主演で描き出している。
高校の頃から5年間、引きこもりとなった小沼真実(門脇麦)は、好きなマンガやイラストを正確に模写することで現実逃避をして過ごしてきた。心配性の父が、ゲームのバグ出しの仕事を見つけ、真実はその仕事をスタートさせる。ある日、ひょんなことからゲームのイラストに手を加えた真実は、それをきっかけに、少しずつ閉じこもっていた殻を破っていく…。
尾崎監督は「『結婚できない男』が自分の成人後の姿を阿部寛さんに託して描き、『世界は今日から君のもの』は自分の若い頃の姿を門脇麦さんに託したもの」と語る。自身が脚本を務めたTVドラマ『ブラック・プレジデント』に出演した門脇さんの演技と個性的なオーラに一目ぼれ。当て書きをする形で、どことなく風変わりでピュアな女の子を創造した。
長編映画の監督2作目ということだが、尾崎監督は「普段、脚本家の仕事をしながらも、つねにチャンスがあれば映画を撮りたいと思っています」と語る。
「どんな映画を撮りたいのかというのは、そのときどきで色々ですが、例えば『アメリ』(01)のような風変わりなキャラクターの女性を主人公にしたコメディータッチの作品が好きで、そんな映画を撮りたいという思いはあったんです」(尾崎監督)
そんな尾崎監督が主演に選んだのが門脇麦さん。門脇さんの出演は、まさに尾崎監督の念願だった。
「門脇さんに対する演出は特に苦労せず、やってほしい事をお願いしたら、意図するイメージ通りにやってくれました。そして撮影が進むうちに、次第に自分と彼女との境界線があいまいになっていくような不思議な感覚がありました。これは監督と俳優の関係性としてはどうなんだろう? という気がして、ある日の撮影が終わった時に、あえて門脇さんにその日の表情が良かったと声をかけることで、自分ではない他人がやっているんだ、という感覚を取り戻そうとしたくらいです」
ヒロインが周りの人に支えられて、ほんの少しだけ前に踏み出すというストーリーは、とても身近で、ありがちな恋愛モノに陥らない共感を呼びそうだ。尾崎監督は続けてこう語る。
「この物語は、ヒロインが自分の道を見つけられるのか? というのがテーマなので、恋人ができてハッピーになって終わりというものではありません。彼女にとってハッピーエンドは何かと考える中で、プロットの段階で出て来た一案としては、真実が行方不明になり、どこかの外国で落書きをして回っているというラストも考えたんです。それは制作費等々の問題で却下となりました。結果として、今のラストは観客の皆さんに”自分にも起こることかもしれない”という共感をもってもらえるようなものになったのではないかと思います」
本作で特に注目したい点の一つが、作品に登場するロケ地だ。
今作のロケ地は各所に渡っているのも特徴。
マキタスポーツ演じる父親がよく通っている屋台は深川不動(江東区)の参道にある焼鳥屋台「松川」。感度か登場するので、観ているうちに通ってみたくなる人も多いはず。
そして、真実や三浦貴大さんが演じる矢部遼太郎が歩くシーンで度々登場する、真実のアパートまでの坂道は藤が丘駅(横浜市青葉区)近辺で撮影された。
ほか、真実が夜に走る川辺は佃大橋(中央区)、真実が歩くイチョウ並木は、これまで多くの作品に登場している外苑いちょう並木(港区)と、都内の人気のロケスポットも多数登場する。
一般人も気軽に立ち寄れる場所も多い今作のロケ地。この夏、尾崎作品を肌に感じながら、現地を歩いてみてはいかがだろうか。
自分の将来に迷っていたり、何となく生きづらいと感じていたりする方に、ぜひ観ていただきたい作品。
「基本的には若い女性に共感してもらえたら嬉しいです。でも知り合いの40代の劇作家の人が、クリエイターとして真実に共感したと言ってくれて、なるほどそういう見方もあるのかと思いました。色々な見方が出来る映画だと思うので、広い層の観客に面白がってもらえる可能性があるのではないかと思います」と尾崎監督は語る。
『世界は今日から君のもの』
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監督:尾崎将也
キャスト:門脇麦、三浦貴大、比留川游、マキタスポーツ、YOU ほか
(C)クエールフィルム