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バルセロナ日記

LJ特派員★伊庭野はるかのバルセロナ日記 Vol.51

【料理が国の景気を変えた!?
年間100万人が予約を争う デンマークの伝説のレストラン「Noma」へ】

 

バルセロナもすっかり晩秋となり、夜になるとだいぶ冷え込んでいます。ところどころ黄色く染まった木々が、秋の深まりを感じさせます。

 

さて、今回はところ変わって、先日訪問したデンマークのコペンハーゲンにある「世界一を4回獲得した伝説のレストラン」の訪問記をお届けします。

 

そのレストランは、コペンハーゲンの中心部から車で15分ほどの田園地帯にありました。
ハーブのある温室や薪が出迎えます。

 

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そして、外に置かれた台に並べられた色とりどりの野菜。

 

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今日のメニューに使われるのでしょうか?期待が膨らみます。

 

今回訪れたのは、デンマークのコペンハーゲンにあるレストラン「Noma」(ノーマ)。

 

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「世界のベストレストラン50」のランキングで、これまでに4回の第1位を獲得したレストランとして、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このレストランの様子は、ドキュメンタリー映画「ノーマ、世界を変える料理」(2016年公開)で観ることができます。

 

こちらはオープンキッチンの様子。

 

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料理を待つ席へと、美味しそうな香りが漂ってきます。

 

シェフのレネ・レゼピはもともと移民でしたが、味覚と料理の才能をデンマークで開花させ、今や伝説のシェフとしてデンマークで知らない人はいないそう。その“伝説のシェフ”レネ・レゼピと、“デンマークのレストランビジネスのカリスマ“と呼ばれたクラウス・マイヤーが立ち上げたのがこのレストランです。

 

最初の料理はこちら。

 

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蝶の標本のように演出された、ガレットの上に食用の花びらが飾られた料理です。花びらの下には、地元で昔から食べる習慣があったという蟻のペースト。(柑橘類が育ちにくい北欧では酸味はとても貴重なため、蟻酸の酸味も料理に有用とのことです)

 

この料理を作っているキッチンはこちら。

 

 

 

料理人たちがピンセットで花びらを1枚ずつ丁寧に敷いていました。

 

彼らは、それまで魅力に乏しかったといわれるデンマーク料理を「新しい北欧料理」として進化させて国の観光資源を創り出し、その結果デンマークへの観光客が11%も増えたとして、世界中で大きな評価を得ているんです。どうしてそんなことができたのでしょうか?その秘密は料理にありそうです。

 

こちらはオニオンスープ。

 

 

こちらはカビを繁殖させて発酵したアスパラ。

 

 

このような実験的な料理も並びます。最初は「カビ!?」と驚きましたが、口にするとふわっと溶ける優しい味わい。納豆のような味噌のような複雑な味が後からやってきて、とても愉しい料理でした。(つまり発酵食品の味、ということでしょうか…)

 

そして、植木鉢のように見えて土の部分がポテトになっている料理と、美しい野菜とハーブ、花の料理の数々。

 

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いずれも美味しいのですが、一筋縄ではいかない複雑な味わい。食材や調理法を推理したり、それを話したりしながら、あっという間にランチタイムが過ぎていきました。

 

Nomaが目指したのは、北欧らしさや地域の文化、食材の新鮮さを表現すること。そして、地元で採れた食材にこだわり、野菜やハーブの生産者、漁師、さらには建築家、政治家まで、あらゆる人々が一緒にレストランを創り、地元に利益を生み出すという大きな目標なのだそうです。

 

その取り組みが功を奏し、Nomaは世界中で注目されるレストランとして予約が殺到するようになりました。
Nomaが年間で予約を受けることができる2万席に対して、なんと100万人以上の予約希望があるというのだから驚きです。

 

Nomaに影響を受けたレストランも続々と現れ、数々のシェフや経営者が切磋琢磨することで、デンマークは「美食を求めて訪れる街」に変貌して観光業が活性化したのだそうです。

 

もちろん、いただいた食事は決してリーズナブルとはいえません。でも、地元にある食材や地元の食文化、歴史を踏まえた製法にこだわり、美味しさと見た目の美しさを備えた料理を生み出し続けることは、並々ならぬ探求心と精神力が必要なことだと思います。その努力を惜しまず世界中の人々の期待に応えてきたNomaの世界を覗けたことは、とても良い経験になりました。まさに、食はエンターテインメントですね。

 

何でもネットを繋げばできてしまう時代だからこそ、「そこでしか味わえない料理」は、観光業の大きな武器になるのだということをあらためて実感した食体験でした。

 

※前回までの記事はこちら!

 


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