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インタビュー&コラム

脚本家・一戸慶乃さん

柳楽優弥主演TBSオリジナルドラマ『ライオンの隠れ家』/『おっさんずラブ』徳尾浩司と「映画脚本界の芥川賞」城戸賞入賞・一戸慶乃がバトンをつなぐ脚本づくりの裏側

TBSドラマ『ライオンの隠れ家』(毎週金曜よる10時)の第一話がついに今夜スタート。

兄弟の前に突然現れた「ライオン」と名乗る謎の男の子。この出会いをきっかけに彼らは“ある事件”に巻き込まれていく—— 完全オリジナルのヒューマンサスペンス!脚本をつとめた一戸慶乃(いちのへよしの)さんに今作の脚本づくりの裏側について聞いた。

 

Q1今作は完全オリジナル脚本ということで、企画を初めて聞いたときの印象はどうでしたか?

元々プロデューサーの松本友香さんにお声掛けいただいた時点で、兄弟の話や、家族愛の話というのは決まっていました。お話を聞いたときは自分も視聴者として、すごく面白くなりそうだと思いました。そこを崩さないように自分も携わりながら膨らませていけたらなと思い、ぜひ参加したいとすぐにお返事させていただきました。始めは脚本開発を行うのですが、主人公はどういうキャラクターかなとか、元々どういう思いで生きてきたのかなどを二年半くらい一緒に膨らませながら物語を作っていきました。

 

Q2今作の脚本は『おっさんずラブ』シリーズや『私の家政夫ナギサさん』などの徳尾浩司さんとの共同脚本ということですが、どのように進めていったのですか?

脚本家が何人かいる場合、プロットと各話など分担して進めることが多いです。
しかし今回は、どちらかが話の大まかな方向性や流れを決めたら、次はもう片方がその話にちょっと新しい色を入れるというか、こういうふうにしたらいいのでは?というアイデアを入れます。そして打ち合わせをして、また交代して…という形で進めています。
毎回の打ち合わせで今後どういう方向性にするかを共有しているので、全然違う方向に行ってしまうことはなく、アイデア出しと方向性の確認を順番にやっていく感じです。

―かなり時間がかかる作業なのではないですか…?

たしかに時間は結構かかっています。自分の番になったら頭から最後まで一気に見直し、行ったり来たりしながらブラッシュアップして、いい意見を残すように進めていますね。
『ライオンの隠れ家』はヒューマン×サスペンスですが、「ヒューマンドラマの部分を大事にしよう」と意思統一を行い、台本作りを進めました。私としてもヒューマンドラマの部分はいろいろな展開を作れるので、大事にしようとしっかり時間をかけています。

―徳尾さんはヒット作を多く手掛ける脚本家ですが、ご一緒してみていかがでしたか?

徳尾さんは本当に心の広い方で、絶対自分のものじゃなきゃ駄目という考えではなく、本当にいいものはいいって言ってくださる方なので、ドラマが良くなるアイデアであれば受け入れてくださいます。私はうまくまとめ上げるというよりは、却下されてもいいからアイデア出すというマインドを心掛けました。
徳尾さんから回ってきたアイデアを本打ち後の修正の流れで変えたりすることもあるのですが、それもいいよと言ってくれて。自分が担当して書いた後に、徳尾さんがまた担当して脚本に加えてくださることがわかっているので、そういう意味でも安心して、自由にやらせていただいています。

 

Q3まさにリレーでバトンを交わすように進めたのですね。その中で一戸さんがご自身の色が出ているなと思う部分をぜひ教えてください。

ネタバレにならないようにお伝えするのが難しいのですが…。笑 例えば主人公たちの気持ちが動くきっかけを、こういう情景で表したらいいんじゃないかと提案させていただきました。タイトルの『ライオンの隠れ家』や第一話を見ていただけると分かるのですが、動物が絡んでいるお話なので、動物を連想する要素が主人公の心情と絡む要素であったりします。
私が参加している意味としては、新しい視点で意見を出すということなのかなと思います。なので、図々しくてごめんなさいって毎回言うのですが、遠慮なくやらせてもらっている感じです。笑

 

Q4今作の舞台である主人公たちが住む町はどこか特定の場所をイメージして書いたのですか?

今回そういった場所はないんです。キャラクター同士の関係性や心情を際立たせるために、海辺の町という舞台がぴったりだったという感じでした。
柳楽優弥さん演じる主人公の小森洸人(こもりひろと)は市役所勤務で、淡々と生活をしている青年で、むしろ誰にでも馴染みのあるような風景が大事なのかなと。
途中でロケ地が決まってからはロケ場所の写真などを参考にしながら企画を膨らませました。

―一方で“ある事件”が起きるのは「山梨」と名指しですが…?

事件が起きるのはたしかに山梨なのですが絶対にここじゃないと駄目っていうことではなくて、どちらかというと距離感を意識しているというのが大きいかなと。海のある町と海のない山梨。海辺の町に住んでいる小森家と、また別の事件が起きる場所があって、主人公たちがだんだんそこに食い込んでいくみたいな感じです。

 

Q5ところで一戸さんはどういった経緯で脚本家になったのですか?

幼い頃からテレビっ子で、漠然とこの世界に憧れがありました。10代になってから、俳優を目指してみたいなと思い専門学校に通ったのですが、メンタル的にもフィジカル的にも自分には向かないと感じました。
そこから何年か迷いの時期があって、はたから見れば結構フラフラしている感じだったと思うのですが、いろんな寄り道をして。
26歳のときに、吉本の番組制作や構成作家などを目指す人たちが行く学校に入りました。そこで起承転結で物語を考えてみましょうという脚本の授業が一コマだけあって、それが自分の中で楽しすぎて、そこからですね。
独学で勉強したり、コンクールにとりあえず応募してみようという感じでやっていました。もちろん受賞したいという気持ちでやっていたのですが、本当に右も左もわからなかったので、とにかくやってみようと。城戸賞を受賞したときはびっくりの方が強かったです。
俳優を目指していたときに、こう“なりたい”みたいなものが強くて実際にやってみて理想と現実のギャップがあったので、何かに“なりたい”っていうよりは、やっていて楽しい方を優先すべきだと学びました。なので、有名な脚本家に“なりたい”ということではなく、ただ自分が楽しく生きるために脚本を書いていければという感じです。

 

Q6普段はどういうときにアイデアが生まれるのですか?

具体的な会話を聞いて着想を得るというよりは、割とイメージや景色からというのが多いかもしれないです。以前、お台場にあるガンダムをずっと見上げている少年がいて、なんかいいなって。本当にただ見上げていただけなのですが、何を考えているのかなとか、そういうのを妄想したりします。あとは男性が2人でガードレールに座ってお酒を飲みながら話している後ろ姿なんかを見て、何を話しているのだろうと。

 

Q7今後やってみたいことはありますか?

映画や舞台やドラマとジャンルにとらわれず、いろいろ経験をしてみたいと思っています。私自身どういうふうに生きていこうかと迷いの時期があって始めるのも遅かったので、そういう人たちに一瞬でも寄り添えるような作品を作れたらなという思いがあります。今回のドラマ『ライオンの隠れ家』でもそこを目指しています。淡々と生きてきた主人公の洸人がある出来事を通じて悩み、どのような選択をしていくのか、ぜひ注目していただきたいです。

 

【タイトル】金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』

【放送日時】10月11日(金)スタート 毎週金曜よる10:00~10:54

 

【あらすじ】

柳楽演じる市役所で働く平凡で真面目な優しい青年・小森洸人(こもり・ひろと)と坂東龍汰演
じる自閉スペクトラム症の美路人(みちと)の兄弟が、突然現れた「ライオン」と名乗る謎の男の子との出会いをきっかけに“ある事件”に巻き込まれていくヒューマンサスペンス!

 

【スタッフ】

製作 TBSスパークル TBS
脚本 徳尾浩司 一戸慶乃
編成プロデュース 松本友香
プロデュース 佐藤敦司
演出 坪井敏雄 ほか
編成 吉藤芽衣 中野翔

【出演者】

柳楽優弥  坂東龍汰  佐藤大空(子役) ほか

【公式サイト】https://www.tbs.co.jp/lionnokakurega_tbs/
【公式X】@kakurega_tbs
【公式Instagram】lionnokakurega_tbs

【Interview】一戸慶乃

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