LJ特派員★伊庭野はるかのバルセロナ日記
【『イッテQ!』にも登場したカタルーニャの真髄!
無形文化遺産「人間の塔」の練習に潜入!】
バルセロナの冬は終わりに差し掛かり、昼間はコートがなくても過ごせるようになってきました。でも、日の出時間がとても遅く、8時頃になるまでは薄暗いので早起きするのが億劫になってしまいます。太陽がさんさんと降り注ぐ季節を待ち遠しく過ごしています。
今回は、昨年9月に放送された『世界の果てまでイッテQ!』に登場したカタルーニャの伝統的な活動である「人間の塔」を紹介します!
「人間の塔」は、その名の通り、人々が集まって体を積み重ね、高い塔を作る活動です。スペインのカタルーニャ地方で200年以上続く伝統的な活動で、ほぼ1年を通じて様々な祭りで披露されています。
カタルーニャには100ほどのチームがあるのですが、その規模はチームによってさまざま。数十人のチームから、多いところでは二千人にも及ぶチームもあるそうです!一人で参加する人もいれば、カップルや家族ぐるみで参加する人々も、多様な人たちが集まっています。チームごとの練習は1年を通して毎週行われ、2年に1度、チームが集まって競技会を行うなどとても活発な活動が行われています。
さらに2010年にはユネスコの無形文化遺産にも登録され、「人間の塔」はまさにカタルーニャの象徴ともいえる活動なんです。
今回私が見学したのは、バルセロナにある「Colla Castellera Jove de Barcelona」というチームの練習。このチームでは、バルセロナ市の建物を借りて、平日の夜に週2回の練習をしています。仕事を終えた親や、学校帰りの子どもたちが19時くらいから続々と集まってきます。
建物の中に入ると、天井の高いスペースに見慣れない設備がたくさん。こちらは、練習用のハシゴ。
そしてこちらは、2メートルほどの高さのところにネットがついた設備。これらを使って、どんな練習をするのでしょうか?
塔を作る人々は、本番のときには同じズボンとチームごとのカラーシャツを着ます。腰にはファイシャと呼ばれる長い布を着物の帯のようにきつく巻きます。この腰布は、上の人が登るときの足場にしたり、体幹を整えたりという重要な役割があるんです。
高い塔を作るためには、体重の軽い女性や子供の存在も欠かせません。
家族ぐるみで参加する週2回の練習には子どもがたくさんおり、常に賑やかです。みんなで空き時間に宿題をしたり、遊んだり、元気な声が響き渡っています。
でも、塔を作る練習が始まると、1人1人が体幹を保ち、塔全体のバランスを整えるために神経を研ぎ澄まします。練習の前とは打って変わって静けさが当たりを包み込み、熱気だけが伝わってくる不思議な空間が生まれます。
『イッテQ!』で挑戦した宮川大輔さんも「皆の真剣な気持ちが伝わった瞬間に泣きそうになる!」と言っていましたね!
先ほどのハシゴやネットは、こんなふうに使います。
さて、私が体験したのは、人間の塔を作るときに演奏するグラヤという木管楽器。
バグパイプのような、あたたかみのある素朴な音色です。
竹でできたリードを使って吹くシンプルな構造なのですが、息の勢いや向きによって音程が変化してしまうので、とても難しい楽器なんです!私もさっそくやらせてもらいましたが、正しい音を出せるまでがとても大変!
楽器チームは、隣の部屋で練習します。ベテランの演奏者は澄んだ音を大音量で演奏し続けることができ、部屋の中はトランペットの合奏のような大音量が響き渡ります!
こちらは、先日行われたお祭りでの様子です。練習でハシゴを使っていたような変わった形の塔を披露しています!演奏チームも、土台の人々の横で塔の完成を盛り上げます。
実はこの演奏、ただのBGMはなく、塔を建てるプロセスをフレーズや音で知らせるという役割もあるんです。塔を建てている人々は、塔が今何段目までできているのか、その進行状況を見ることができません。演奏チームは、その情報を音でチームの皆に伝えているんです!
地域の人々が一丸となって作った塔が完成した姿は圧巻の一言!小さな子供がスルスルっと登っていく姿は頼もしく、感動してしまいます。それに演奏が加わることで、辺りはとても神秘的で荘厳な空気に包まれるんです。ちなみに本番で着ているチームごとのカラーシャツはチームの誇りをあらわす大切なもので、普段は絶対に着てはいけないという掟があるそう!
誇りに満ちた彼らの目の輝きが印象的なカタルーニャの伝統的な活動、ぜひ応援してくださいね!