■LJ特派員★伊庭野はるかのバルセロナ日記 Vol.37
【洞窟住居が立ち並ぶ 南イタリアの奇妙な町・マテーラへ!】
今回は、前回に引き続き南イタリアの旅行記をお送りしたいと思います。
前回の記事はこちら!
http://locationjapan.net/interview/20190304/
アルベロベッロの次に訪れたのは、こちらも世界遺産の町、マテーラ。
丘に沿って建てられた小さな建物が特徴的なサッシ(石、岩という意味)と呼ばれる旧市街の小さな町です。
遠くから見ると、山に建物が貼り付いているように見え、なんとも異様な雰囲気を醸し出しています。
なんとこの町は、大きな岩の塊を掘って作られた洞窟住居からなる町なんです。
8世紀以降、イスラム勢力を逃れた修道僧が棲みつき、この洞窟住居に住んでいたそうです。その後、一般の農民も住むようになり、町として繁栄していました。
近代では、スラム化し衛生面に問題が出ていることを懸念した政府が住民を強制的に移住され、一時期は廃墟と化していたそうです。
しかし、90年代に世界遺産の登録が決定し、今では南イタリアの一大観光スポットとして脚光をあびるようになったのです。赤茶色の四角い建物の数々と、入り組んだ階段でできた町を歩いていると、どこの国でもない、別の時代に迷い込んでしまったような気分になり、時間を忘れてしまいます。
町には、「洞窟教会」と呼ばれる、岩を掘って作られた教会もあります。教会は山のてっぺんにあるので、たくさんの階段を上り、岩をよじ登っていきます。
この町に訪れるたくさんの観光客のために、洞窟に住んでいた人々の暮らしぶりがわかる小さな博物館もありました。
ここに住んでいた農民たちは、家畜と一緒に洞窟に住み、雨を洞窟の地下に貯めてそれを濾しながら飲み水にしたり、壁にハシゴや様々な生活道具をかけたりして、狭い空間の中で工夫をして生活していたことがよくわかりました。
この旧市街がある地区から、渓谷を挟んで反対側の山を見渡してみます。
目をこらして見ると、崖のような急斜面に、ポツポツと小さな穴があいています。
これは、なんと旧石器時代に掘られた洞窟住居なのだそうです!目の前に現れた巨大な岩の山と、それを掘って作られた住居は、そこだけまったく異世界のような、まるでスクリーンで映画を観ているような、何となく現実味のない奇妙な気持ちがしました。
家を「建てる」のではなく「掘って作る」という発想、現代に生きる私たちにはなかなかピンとこないかもしれません。「洞窟に住むなんて!」と浅はかな私はつい思ってしまいましたが、穴を掘って雨をしのいだり、暖をとったりするのは、生き物が「住む」ことを始めた歴史の始まりの重要な一部分。人類の住環境の歴史について、たくさんの学びを得られた旅でした。
薄暗くなると灯り始めるオレンジ色の夜景も幻想的で素敵です。
さらに、ここから車で1時間ほどのところにある不思議な八角形のお城、「カステル・デル・モンテ」へ。
建物の形がとても印象的ですが、この13世紀に建てられたというお城は、なぜここに建てられたのか、どんな目的で使われたのか、詳しいことがわかっていないそうなんです。
でも、この神秘的な外観の美しさに目を奪われます。
思わず時間を忘れて佇んでしまう南イタリアの歴史ある小さな町をめぐる旅、イタリアの多彩な魅力を再発見することができました!