企画プロデュース・平野隆さん映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』
自らもそうでありたいという願いで「舞台裏の英雄たち」と名付けました/ 映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』の企画プロデュース・平野隆さんに『映画製作の醍醐味』を聞く
――どのような経緯で作品が生まれのですか?
映画制作を行っている株式会社ダブの宇田川さんと企画のやり取りをしているときに、“長野オリンピックスキージャンプ団体金メダル”の話を聞いたのがきかっけです。当初の企画でも、出来上がった映画と同様西方仁也さんが主役でしたが、物語は西方さんと原田雅彦さんの友情に軸が置かれていました。西方さんは1994年のリレハンメルオリンピックで、原田さんとともにスキージャンプ団体で銀メダルを獲得した方で、長野オリンピックにはテストジャンパーという裏方として参加されていました。その“テストジャンパー”という言葉が私には強く引っ掛かりました。そして何故か数年後に開催される東京オリンピックが頭の中でリンクし始めました。
25人のテストジャンパーの物語がおもしろいものになるなら映画としての可能性がある、と企画開発をスタートしました。そこから、西方さんの挫折と再生の秘話があること、他の24人のテストジャンパーにも様々な苦悩の物語があるということ、彼等が長野オリンピックの金メダルを大きく支えたという事実が次々とわかり、真実の物語として極めて力強いものになることを確信しました。
調べていくうちに、たくさんの魅力的な方がいることがわかりました。小坂菜緒さんが演じた、賀子は、女性として唯一のテストジャンパーである吉泉賀子(旧姓:葛西)さんをモデルとしています。女子スキージャンプがオリンピックの正式種目でなかった時代に、将来的にその扉を開きたいという夢を抱きつつテストジャンパーに志願した方でした。彼女の存在がテストジャンパーの物語を鮮やかに彩り、西方さんの物語を別角度から支えてくれる予感がしました。
同じくテストジャンパーの中に、高橋竜二さんという聴覚障害のある方もいました。この方は名だたる大会でオリンピック選手を抑えて優勝するような実力の持ち主でした。吹雪の中、150Mのジャンプ台から飛び立つ、音のない世界を想像した時、この映画に大きな拡がりを感じました。
そうやってピースを一つ一つ組み合わせながら、主軸である西方さんの物語を重層的に作り上げていきました。リレハンメルオリンピックでの銀メダル獲得の後、「次は長野で金メダルだ」という強固な思いからの代表落選という挫折(リレハンメルで金を逃す失敗ジャンプをした原田さんは代表に選ばれる)、屈辱的なテストジャンパーとしての長野オリンピックへの参加、そして24人のテストジャンパーと共に奇跡を起こす。これで完全な人間物語が構築できると確信しました。“人間物語”と言ったのは、この映画を単なるスポ根ものにしたくなかったからです。
映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』
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長野オリンピック・ラージヒル団体で日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。そこに、エース原田のジャンプを複雑な想いで見つめる男――元日本代表・西方仁也(田中圭)がいた。前回大会・リレハンメルオリンピックで、西方は原田とともに代表選手として出場するも、結果は銀メダル。4年後の雪辱を誓い練習に打ち込んだが、代表を落選。失意の中、テストジャンパーとしてオリンピックへの参加を依頼され、屈辱を感じながらも裏方に甘んじる。そして迎えた本番。団体戦の1本目のジャンプで、日本はまさかの4位に後退。しかも猛吹雪により競技が中断。メダルの可能性が消えかけた時、審判員たちから提示されたのは、「テストジャンパー25人全員が無事に飛べたら競技を再開する」という前代未聞の条件だった…。命の危険も伴う悪天候の中、金メダルへのかすかな希望は西方たち25人のテストジャンパーへ託された―――。
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【作品情報】
2021年6月18日(金)公開
出演者: 出演:田中圭 土屋太鳳 山田裕貴 眞栄田郷敦 小坂菜緒(日向坂46)/濱津隆之 / 古田新太 他
監督:飯塚健
脚本:杉原憲明 鈴木謙一
音楽:海田庄吾
企画プロデュース:平野隆『余命1ヶ月の花嫁』『チア☆ダン』『8年越しの花嫁』
製作:映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』製作委員会
制作プロダクション:ダブ 配給:東宝
(C)2021映画「ヒノマルソウル」製作委員会
大分県生まれ。一橋大学卒業後、TBSに入社。
実話の映画化だけでなく、『黄泉がえり』(03)、『どろろ』(07)、『64 -ロクヨン- 前編/後編』(16)、『忍びの国』(17)、『スマホを落としただけなのに』(18)、『糸』(20)などヒット作が多数。公開待機作に『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ファイナル』(21 8月20日公開予定)、『老後の資金がありません!』(21 10月30日公開予定)、『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』(21年冬公開予定)など。