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インタビュー&コラム

■クリエイターインタビュー

日曜劇場で『VIVANT』や『マイファミリー』『ドラゴン桜(2021)』『義母と娘のブルース』シリーズなどヒット作を次々プロデュースする飯田プロデューサー。「今日から観始めても間に合う。今までの事件が総括される6話。」と語る。これからのストーリー展開の見どころや未だ謎に包まれる主人公・明墨とはどんな人物なのか、作品の制作のこだわりを聞いた。

――長谷川博己さん演じる主人公・明墨の目的は一体何でしょうか?タイトルの通り『アンチヒーロー』として、主人公像はどのように作り上げたのですか?

企画としては「犯罪者を無罪にする弁護士のドラマ」というところからスタートしました。しかし取材を進めたり、法律監修の國松先生と話していると、これって、弁護士なら普通にすることだよな、というハードルにぶつかってしまって。最初はかなり尖ってる企画のつもりだったのですが、それほどでもない?脚本の打ち合わせでも「アンチって何?アンチ感足りなくない?」と常に話しながら作っていました。その中で見えてきた事なのですが、決して、悪徳ではないし、やり方も多少ダークだけど、それよりも自分の目的のために身内を利用したり、人の心を利用する主人公という方向性に定まってきました。それが、キャラクターの行動とも相まって、「この話の先に何かがあるんじゃないか」と思わせるアンチヒーローたる所以をまとわせたと思っています。

「何か普通だよね」という意見をSNSでも目にしていますし、「アンチでダークと言われてもそこまでじゃなくない?」という意見はある種想定内で、その後に広がっているストーリーを見てくれたらいいなと思っていました。

©TBS

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皆さんお気づきの通り1、2話でいうと検察や科捜研などの不正を暴くことによって、緋山(岩田剛典)を無罪に持っていきました。これは、組織に蔓延っている問題、日本の現実を突き付けています。例えば、大きな組織の中に属している人がパワハラに対し声を上げづらかったり、または上司が優秀な部下を自分の都合がいい位置に置いておく状況など、今の日本の世の中の現状を表しています。

3話は無罪にすると思いきや、有罪にすることによって政治家の悪を暴く。悪いものは悪いんだっていう。そのあたりから「アンチな主人公」というところの裏切りを、視聴者は感じられたのではないかと思いますね。

4、5話では紫ノ宮(堀田真由)を使って父親を落としたように、ターゲットを味方に引き入れて利用するなど明墨の手段を選ばない部分が徐々に見えてきていると思います。

そうはいっても、相手の弱みを握って優位に立つというのは、別に弁護士に限ったことではないですが、そこの先にある、絶対に主人公が成し遂げたい“何か”というところがこのドラマの一番の軸になっています。ある目的のために主人公・明墨がどう突き進んでいくのかを視聴者の方に見守ってもらうために、徐々にストーリーが繋がっていくような展開を目指しました。5話まで放送され、徐々にドラマのパズルが集まってはまり始めたというのがここまでですかね。

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――その中で6話というのは、全体の中でどういう位置づけですか?

ずばりターニングポイントですね。岩田剛典さん演じる緋山を無罪にした理由が6話から暴かれ始めます。緋山と明墨が結託して何かをしているらしいというところで、5話は終わりました。1、2話で無罪にしたことにも目的があったのか、それは一体何なのか、緋山の事件って終わったんじゃなかったのかと疑問が出てきたと思います。一般的な裁判で考えてみると、確かに無罪にはなりましたが、検察は控訴するでしょうね。控訴したことが、どういうふうにこの後に繋がっていくのかは一つ大きな見どころじゃないかなと思いますね。

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5話までの前半戦はそのお膳立てという形でさまざまな事件が続いていたんですが、ここから本題に入っていきます。明墨が追いかけている12年前の糸井一家殺人事件に関わった人物が出揃ったということがわかるはずです。

6話でも全く新しい事件に取り掛かっているのですが、やっぱり明墨は全部12年前に関わることを選んで行動しているんだということがはっきり感じられるでしょう。

今までドラマを観てこなかったとしても、こういう作品だったんだとわかる構成になっています。全部観てきた人も今までの事件の振り返りになりますので、フレッシュな気持ちで6話を観てほしいですね。6話からでも追いつけます!

他には、明墨と若者チーム(赤峰(北村匠海)や紫ノ宮)との関係性も見どころのひとつですね。4,5話では、紫ノ宮が抱えていた問題(大学の卒業式に見た父親に明墨が詰め寄っている姿)を理解することで自分を取り戻し、やっとスタート地点に立ちました。6話以降は、赤峰や紫ノ宮が、明墨にぐっと追いついてくる姿に成長というか、事務所の仲間としての頼もしさを感じられるようになっていきます。二人のバディを見守ってほしいですね。

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――撮影現場には、ほとんど帯同するとお聞きしましたが、どうしてですか?

現場にいる方が心地よい、というのが一番ですかね(笑)。俳優さんが現場でどう感じて演じているかとか現場のスタッフの動きや様子だけでなく、世の中の人の様子も見ています。オンエアに対する反応を実感できるのが良いですね。

例えばお墓を撮影していた時、参拝者の方が「これアンチヒーロー(の撮影)よね」みたいなこと言ってくれたりするんです。「すいません、お邪魔してます」と返すと「観てるわよ」とか「ここのお墓新しく買うの」とお話を聞くこともありました。「アンチヒーローに出てた場所だもんね」と言ってくれるので、もしかしたら作品を見て、ここにお墓を決めたのかなって勝手に想像したり(笑)。そういうような視聴者の声を現場で聞くと嬉しいですね。

 

 

――ロケ地で言うと『アンチヒーロー』の中でも、VFXも使いながら撮影されていると聞きました。ロケ地かセットのどちらを使うかという判断は飯田さんがされているんですか?

例えばオフィスと法廷はスタジオセットにするとか、予算に関わってくるので、大まかには僕がディレクターと美術プロデューサー、デザイナーと話して振り分けています。画の繋げ方などはディレクターが考えています。

ロケーションの選定は映像になった時のディレクターなりのプランがあるので、全てディレクターにおまかせです。「この場所だとこういう画が撮れる、そうするとこのスタジオセットと繋がる」といった段取りは、最初の段階で美術部やカメラマンも含めてみんなで考えています。

裁判所として撮影されてきた建物は今まで数え切れないくらいの撮影がされてきて、今まであまり出ていない場所で古く重厚感のある建物はないだろうなと思っていたところ、制作担当の石渡(VIVANTも担当)が静岡県庁を探してきたんです。法廷の撮影の量が多いことや、距離としても無理のない範囲だったので決定しました。

 

 

――新橋駅前ビル1号館は、やはり明墨のキャラクターを考えて決まったのですか?

そうですね。霞が関との距離感を踏まえつつ、明墨の法律事務所として適したサイズをまず考えました。建物の中の一部屋の事務所なのか、1棟丸々なのか。

いろいろ決めていく中で、田中監督から「あの新橋の1号館ってところがロケできるらしい」と。

朝ドローンを上げることができ、前に車をつけたりできるところも良かったです。エレベーターまでの道や、ビルの1階に入っている周りのお店も面白いということで決まりました。ロケ誘致に積極的な自治体や施設は本当にありがたいです。

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ロケ地で撮影することで現実に起きているように感じられ、作品に深みや世界観を作り出す。日曜劇場『アンチヒーロー』でも魅力的な登場人物が生き生きと描かれているが、その後ろでロケ地が支えているのだ。「6話はターニングポイント」と話す飯田プロデューサーは、今後の明墨がどうなっていくか楽しみに観てほしいと語った。

 

【あらすじ】

長谷川演じる弁護士は、たとえ犯罪者である証拠が100%揃っていても無罪を勝ち取る、「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士。ヒーローとは言い難い、限りなくダークで危険な人物だ。しかしこのドラマを見た視聴者は、こう自問自答することになるだろう。「正義の反対は、本当に悪なのだろうか・・・?」

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日曜劇場『アンチヒーロー』
放送:毎週日曜 21時00分~21時54分(TBS系)
現在放送中
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎 ほか
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