連続テレビ小説『なつぞら』
歴代朝ドラの中でもスケール感の
大きい作品です…磯さん
画面に映らない地元の人たちの
力があるのですね…八木さん
10年後を見据えて
地元の盛り上がりを支えたい…川口さん
記念すべき朝ドラ100作目。
舞台となる北海道十勝で人情あふれる美味しいロケ!
今年4月から始まるNHK『なつぞら』。朝の連続テレビ小説1 0 0 本目となる本作の舞台は北海道・十勝です。
制作統括を担う磯智明さん、NHK初の広報プロデューサーとして番組と地元を盛り上げる川口俊介さんに、制作の裏側とロケにまつわるアレコレを八木さんが聞き出します!
朝ドラの王道をいくヒロインの成長物語
八木:今日は、4月から放映が始まる朝の連続テレビ小説『なつぞら』について、制作統括の磯さん、広報プロデューサーの川口さんお2人にお話をうかがおうと思います。朝ドラ100作目ということで、やはり特別な想いはありますか?
磯:100作目というより、まず意識したのは99作目の『まんぷく』です。本作をオリジナルのヒロインの成長物語にしたのは、前作が実在のモデルのいる夫婦の物語だったから。ヒロインの成長を中心に、家族の絆や夢を描く物語にしました。
八木:朝ドラの王道ですね。
磯:そう、『おしん』『あさが来た』の路線ですね。100 作目と聞いて何かすごいことをしないといけないかと思ったのですが、上に予算を聞いたら変わらないと言われまして(笑)。
八木:そうでしたか!?(笑)
磯:どれだけ「100回」の特別感を出せるかは、アイデア勝負ですね。
八木:磯さんは制作統括というお立場ですが、具体的にはどのようなことをされるのですか?
磯:簡単にいえば、複数いるプロデューサーのまとめ役です。最近、プロデューサー業が細分化されてきたので、統括する役が必要になったわけですね。
八木:その中で広報を担当しているプロデューサーが川口さんなんですね。実は私、『真田丸』に出演させていただいたとき、お会いしているんですよ。当時は広報部でしたよね?
川口:そうです。もともとスティールのカメラマンとして朝ドラや大河ドラマに長年関わってきて、どうすればドラマが売れるのか自分なりの答えがあったのです。その経験を生かして広報を担当していました。前々作の朝ドラ『半分、青い。』からドラマ部に所属しています。
八木:ドラマ部所属の広報プロデューサーは初?
磯:そうです。もともとはプロデューサーが広報も担当していたのですが、だんだん抱えきれなくなってきて、広報プロデューサーを立てたという経緯です。
八木:新たな試みですね。そうした色々な仕事をまとめ、番組の方向性を決めるのが磯さんのお仕事。
磯:そう、企画の立ち上げとキャスティングが一番大きな仕事ですね。
八木:今回、小林綾子さんや松嶋菜々子さん、山口智子さんなど、かつて朝ドラでヒロインをされた人たちもキャスティングされていますね。
磯:朝ドラの王道でもあるオーソドックスなストーリーを、「100回」の意味も含め、華やかなパッケージにするにはキャスティングが大切です。主役の広瀬すずさんの世代に見てもらえるよう、その層を厚くすると同時に、要所要所で過去のヒロインに登場してもらい、従来のファン層にも楽しんでいただく。現在の視聴者のコアは40〜50代の女性なので、自分の人生を重ねられるような同年代の歴代ヒロインたちを意識してキャスティングしました。
八木:私の母のように、あの時間、習慣として見ている人には「あのヒロインがこんなに立派になった」という楽しみもありますね。朝ドラは、オーディションで新人を発掘してヒロインを応援してもらう事が多かったと思いますが、最近はベテランの起用が続いています。何か理由があるのでしょうか?
磯:視聴者に近いヒロインを据える時代もありましたが、今はもっとドラマチックなものや作家性を見せるスタイルに変わってきています。とにかく視聴者の目が肥えている。昔はゆるさを許してくれる部分もあったと思いますが、今はクオリティや感動が期待されていて、それに最低限応えられるものを作らないといけない。朝ドラに求められるクオリティとともにヒロインに求められるものも上がっているということですね。
八木:朝ドラや大河は、地域の盛り上がり方もまた一段とすごいですよね。
磯:今回、北海道の十勝でロケをしていますが、食事の時間になると、毎日ものすごい差し入れがあるんです。
八木:地域のご厚意で?
磯:そうなんですよ。日本一寒いといわれる陸別町でロケをしたときは、いつでも飲めるようにと、豚汁、パンプキンスープ、ホットミルク、中華スープを用意してくれました。帯広市では、地元のパン屋さんが石窯を現場に持ってきてパンを焼いてくれて。地元の小麦粉で作ったチーズ入りのパンにさらに5種のチーズをのせて焼くんです。
八木:凝っていますね!
(続きは本誌を御覧ください)
STORY
戦争で両親を失った少女・奥原なつ。彼女を癒し、育てたのは、北海道・十勝の大自然と開拓者精神あふれる優しい人々だった。やがてなつは、十勝で育まれた想像力とたくましさで、当時「漫画映画」と呼ばれていたアニメーションの世界に挑む。
連続テレビ小説『なつぞら』
脚本:大森寿美男
キャスト:広瀬すず、岡田将生、草刈正雄、松嶋菜々子、藤木直人、
清原翔、福地桃子、小林隆、音尾琢真、
安田顕、高畑淳子、山田裕貴、吉沢亮、戸次重幸、小林綾子 ほか
【磯 智明(いそ ともあき)さん】
1990年NHK入局。ドキュメンタリー番組を制作後、ドラマ部に異動。助監督を経て、連続テレビ小説『こころ』(2003)、大河ドラマ『毛利元就』(97)、『風林火山』(07)などを演出。08年、チーフ・プロデューサーに。大河ドラマ『平清盛』(12)などの
制作統括を担う。受賞作も多数。
【川口 俊介(かわぐち しゅんすけ)さん】
1998年NHKサービスセンター入社。カメラマンとして雑誌やポスターの撮影を担当。2014年からNHK広報部にて連続テレビ小説『まれ』(15)、大河ドラマ『真田丸』(16)等の広報を担当。17年、制作局ドラマ部所属の広報プロデューサーに就任、『半分、青い。』(18)を担当。
【八木亜希子(やぎ あきこ)さん】
神奈川県出身。フジテレビアナウンサーとして活躍したのちフリーランスに。キャスター、女優。フォニックス所属。かながわ観光親善大使も務める。ニッポン放送『八木亜希子 LOVE&MELODY』ほか、ドラマ『陸王』でナレーションを担当、女優としても、映画『みんなのいえ』(01)、連続テレビ小説『あまちゃん』(13)、ドラマ『昼のセント酒』(16)、大河ドラマ『真田丸』(16)、ドラマ『カルテット』(17)、映画『サクラダリセット』(17)、ドラマ『トットちゃん!』(17)、ドラマ『黄昏流星群』(18)ほか出演。