新しい旅行の形に「ロケツーリズム」を 首長自ら映像制作者に町をPR
コロナ禍になって4年目を目前に、観光需要の高まりがみられる昨今。観光地はもちろんのこと、それ以外の地域も誘客と地域活性につなげるべく動き始めている。
そのフックの一つとなるのが「ロケツーリズム」。映画やドラマ、バラエティー番組の撮影が来ることで宿泊費・食費等の直接的経済効果があることはもちろん、作品やキャストのファンが「ロケ地巡り」に来ることで地域のファンになってもらうというものだ。
自治体と情報交換、制作者同士の交流も
そんなロケツーリズムによる地域活性化に力を入れる自治体と企業、ロケ地を探す映像制作者が集う「ロケツーリズム協議会」が11月17日にリーガロイヤルホテル東京(東京都・早稲田)にて開催された。
今回のロケツーリズム協議会は年5回開催の第4回目。アフターコロナを見据え、過去最大人数の220人が全国から集まり、会場は熱気を帯びていた。
一番の目玉は、長崎県島原市や静岡県西伊豆町をはじめとした12人の首長と、TBS系、WOWOWなどに所属する45人の映像制作者による「マッチング大会」だ。
自治体側は限られた時間の中で、ロケーションや協力体制の充実度を制作会社関係者に対してPR。映像制作者は自身の企画と照らし合わせ、積極的に質問を投げかけていた。
参加した映像制作者の中には、「これほどの人数の首長と直接会って話せる機会は他にはない」と驚く人も。「自治体だけでなく、制作者同士のつながりができる貴重な経験になった」と話す人もおり、本来の目的以外にも得られるものがあったようだ。
観光庁観光資源課文化・歴史資源活用推進室室長・遠藤翼氏は、
「水際対策の緩和などにより、訪日観光客が増えています。観光庁では、特別な体験や、新たな切り口・アイディアで地域を売り出していこうという取り組みが生まれることを期待しています。ロケツーリズム協議会のように自分たちでお金を集め成果を上げる自主自立の形を重要視しており、自治体・制作者・民間企業が一体となって活躍されていることをありがたく感じています」
と会の冒頭であいさつを述べた。
マッチング大会に参加した長崎県島原市の古川隆三郎市長は、
「かつての島原はロケが来ていただけで終わっていました。しかし、協議会に参加することで、ロケに来たCMや番組を今後にどうつなげていくかを考えるようになりました。協議会はいろんな自治体のチャレンジの集まりです。各首長や関係者の皆さんと協議会をもっと大きく育てればもっと良い結果が全国から出てくると考えています」
と、ロケツーリズムの今後に対し期待を込める。
一方、静岡県西伊豆町の星野淨晋町長は、
「先進事例を近い距離で知ることで、まちづくりの参考になっています。西伊豆町は観光が主産業なので、いろいろなメディアを通じてPRすることで、一人でも多くの人に来てほしいです。
その根底には、町から出た人が映像を見てふるさとを思い出したり、田舎に帰ろうと思ってくれるきっかけづくりになれたらいいとも考えています。持続可能な地域でずっとあり続けられるように、これからも協議会でタッグを組んで先進事例を取り入れながら発信していきたいです」
と、まちづくりに対する思いを語った。
新型コロナウイルスの影響が長引く中、ロケツーリズムは大型観光地でない地域に人を呼び込む手段として注目されている。「自分の地域には特に何もない」と感じている自治体の観光起爆剤となるものであり、地方創生に向けて国も注目している観光施策の一つともいわれている。新しい旅行の形として浸透していくことに、期待がこめられる。