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権利処理
2023.05.16

「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.36 “映画タイトルを模したPRポスターを作る際、権利元への確認は必要?”

ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!

Q

ロケ地の映画作品のタイトルの一部を変えたPRポスターの作成を考えています。その場合、権利元への確認は必要でしょうか。

 

 

A

著作権侵害のリスクが高いため、権利元に確認する必要があります。

 

 

 

田中 パロディに関しては、著作者人格権の同一性保持権を侵害する著作権侵害を判示した最高裁判決の「パロディ・モンタージュ」事件(最判昭和55年3月28日)が有名ですが、法律の定めという意味では、我が国の現行著作権法ではパロディに関する言及はなく、権利制限規定もありません。

 

國松 そうですね、諸外国のパロディに関する扱いをみてみると、たとえばフランスでは、「批判・風刺のための権利」としてフランス知的財産権法の中で一定の行為が許容されています。ほかにドイツでは明文規定こそないものの、判例において保護範囲論(パロディ利用は著作権の保護範囲に含まれないとする考え方)によって許容するという一定の整理が行われており、同じように米国でも、公正な利用にあたるかどうかを広く一般的に判断する枠組み、いわゆる「フェア・ユース」によって許容するという考え方が存在します。

 

田中 なるほど、諸外国では、ある程度確立された手法のもとで一定程度パロディが認められているんですね。一方、このようにパロディを許容する枠組みは、日本ではまだ確立していないと理解して良いでしょうか。

 

國松 はい、日本にはパロディであることを理由にこれを許容する法理論は確立していません。なので、著作者や著作権者に無断で行うパロディは、理論上は著作権侵害となるリスクが高いと考えてください。

 

田中 そうすると、絵画や写真、映画などのポスターをパロディとして改変することは、日本では簡単にできることではなさそうですね。

 

國松 そうですね。日本では「チーズはどこへ消えた?」のパロディ作品「バターはどこへ溶けた?」に関する裁判でも「表現として許される限界を超える」としてパロディという手法を認めませんでした(東京地決平成13年12月19日)。

 

田中 日本ではパロディに関する裁判例が商標、不正競争防止法を含めて多くあるものの、著作権法には明文化はこれからのようです。コラボレーション、タイアップなど権利処理をして利用することが現実的ということですね。Web版では、なりきり、タイトルやロゴ、著作物として保護期間が切れた作品の利用事例を紹介します。

 

=====以下、Web版のみ掲載=====

 

田中 映画『君の名は。』アニメのロケ地となった飛騨市に国内外から多くの誘客につながりました。また、映画の映像を使ったコラボレーションやタイアップ商品も多く生まれました。

【飛騨市がアニメ映画『君の名は。』コラボポスター作成】

https://hida.keizai.biz/headline/800/

【君の名は。×飛騨市 のタイアップバス】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(出所:飛騨市)(出所:濃飛バス)

そもそも、コラボレーションとタイアップに違いがあるのでしょうか。言葉の解説によると、コラボはお互いが対等な形で連携することで、タイアップはどちらかがメインとなり、どちらかが関わることで連携することとあります。同じ飛騨市でも、「飛騨の旅」と『君の名は。』のポスタービジュアルがコラボレーションして、お互いのPRになるコラボポスターと、バスの後部に『君の名は。』をラッピングした記念バスがあります。有償か無償では、タイアップは利用費用が発生するケースが多いですが、バスのラッピングは視認性が強く「君の名は。×飛騨市」と表記せず、ラッピングが後部だけにすれば映画とのコラボと見えますね。

 

國松 法的な観点からは、コラボレーションもタイアップも定義ありません。有償か無償かといった内容は契約によって取り決められます。

 

田中 さて、東京都の坂本龍馬の写真を使った「時差BIZ」は、坂本竜馬が生きていた時代背景からしてコラボではなく、「日本を変える」という坂本龍馬の意志を強調したタイアップですね。しかし、こちらの有名な坂本龍馬の写真は、本人の肖像権と坂本龍馬を写した写真家の写真の著作物となりますが、肖像利用についてと写真の著作権保護期間についてはどのように考えればよいでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(出所:東京都)

國松 まず写真の著作権に関してですが、坂本竜馬が存命中に撮影された写真だということになると、著作権の保護期間は満了し、PD(パブリックドメイン)と考えてよいでしょう。一方で肖像に関してですが、坂本龍馬が故人であることから、存命中の本人専属の人格権をベースとする肖像権は既に消滅しているとの考えが一般的です。ひとつだけ、「死者に対する名誉棄損」という法理があり、虚偽の事実を摘示して故人の名誉を棄損した場合は、遺族に対する損害賠償の対象になることがありますので注意してください。

 

田中 ロケ地での俳優の「なりきり写真」には肖像の許諾は必要でしょうか。

 

國松 俳優になりきって同じポーズをして、同じシーンのような雰囲気で写真を撮る許諾は、アップロードも含め、不要です。ただし、なりきるための模倣するロケ地写真は写真には肖像も含まれているので、「なりきり写真」といえどもSNSでアップロードするのはNGです。取り扱いには気を付けましょう。

 

田中 芸術文藝の世界では、主に揶揄や風刺、批判などの目的を持って原作品を模倣することを「パロディ」、尊敬・敬意を表して似たような作品を制作することを「オマージュ」と呼び、その作品における利用様態によって呼び方を変えますが、日本のでは、このような区別にあまり意味はありません。すべて複製(あるいは翻案)行為として判断され、個別具体的な権利制限規定の適用を受けない限り、著作権侵害になり得る行為になります。アメリカのようなフェア・ユース(公正利用・公正使用)規定の適用もありませんので、日本では、このような芸術文藝の概念に基づいた著作物の利用については、事前に著作権法の専門家に相談することをお勧めします。

 

 

 

 

 

■ 回答者プロフィール
権利処理_20190912_01 (1)

 

 

 

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