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権利処理
2023.07.14

「権利処理」の駆け込み部屋 VOL.37  “屋外撮影で周囲の建物が映り込んだ場合、建物の管理者に許可取りは必要?”

ロケーションジャパンの人気連載、「権利処理」の駆け込み部屋をWEBで一挙公開!「撮影風景を写真で撮ってもいいの?」「お店の宣伝に使ってもいいの?」など、ロケの受け入れを行う自治体担当者やお店などから届く「権利処理」の疑問に対して、田中康之さんと國松崇さんが回答してくださいます!

 

Q
屋外での撮影で周りの建物が写り込んでしまいます。建物の管理者に許可を取る必要はありますか。

 

A  写真撮影だけであれば、許諾の必要はありません。

 

 

田中 まずは、建築物に著作権があるのか。そして写真として撮影するのには許可が必要なのでしょうか。

國松 創作性のある建築物は「建築の著作物」として著作権が発生します。ただし、著作権のある建築物であっても写真を撮影するだけであれば、著作権第46条に基づく権利制限の適用により、特に許諾なく行うことができ、当該写真の商用利用も可能です。

田中 建物を撮影するだけであれば著作権法第46条(公開の美術の著作物等の利用)の適用により許諾を得る必由生はないということは、屋外に恒常的に設置されている芸術作品や建築物は、「写り込み」の概念を適用せずとも写真撮影の許諾は不要ということですね。

國松 一般的な居住用建物などは、そもそも創作性がないので著作権自体が認められず、その意味で許諾は必要ありません。ある程度創作性のある「建築の著作物」に当たる場合には、著作権はあるものの、制限規定の適用により、許諾を得ずとも撮影や商用利用が認められる、という説明になります。一方で、「建築の著作物」を超えて特に美的観賞の対象となる創作性、美術性をぐびしている建物の場合は、同時に「美術の著作物」にも当たることになり、その場合は販売目的での写真撮影やその他の複製や販売を行うには、著作権者の承諾が必要ですから注意が必要です。(同法46条4号)

田中 建物や外壁の著作権法による判断基準は分かりましたが、古い寺社仏閣で、敷地内や建物内が無断撮影禁止になっているのは、どのような法的根拠があるのでしょうか。

國松 著作権法ではなく、民法206条の土地の所有権に基づいていると考えられます。著作権法的に何ら問題がないとしても、例えば「撮影目的」での敷地内の立ち入りを禁止することは所有権者自由な判断に委ねられます。

田中 なるほど、それならば敷地外からの撮影は大丈夫とのことになりますが、法律で割り切れることと、そうでないことがありますので、撮影の判断には配慮が必要となる場合があります。建築の著作物の写真撮影以外の知的財産としての取り扱いの注意点についてはWebで詳しく解説します。

=====以下、Web版のみ掲載=====

田中 観光地では、著名な建物や塔のミニチュア複製品やシルエットを利用したお土産が売っていますが、これらの知的財産権はどのように考えればいいでしょうか。

 

國松 「著作権者に与える影響が大きいだろう」ということで自由利用が禁じられているのは、建築物を建築により複製する(46条2号)、つまり無断で同一の建築物を建設するようなケースです。それ以外は、例えば、建築物のミニチュアを作成することも著作権法上は自由に行うことができます。商用利用であっても同様です。

 

田中 著作権法第46条(公開の美術の著作物等の利用)は、自由利用を原則としつつ、例外的に「次に掲げる場合」としてやってはいけない例外を定めていますが、美術の著作物と建築の著作物とでは著作権法上の扱いはどのように異なるのでしょうか。

一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合

二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合

三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合

四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

國松 同法46条第4号に定められているように、公開されている美術の著作物は、販売目的の複製や複製物の販売行為は認められていません。一方で、建築は同法46条第2号に定められているように、建築の著作物を「建築」により複製したり、その複製建築物を不特定多数にさらしたりしてはいけないというだけです。建築に当たらない精巧なミニチュアを作成(複製)することや、その商用利用は何ら禁止されいません。

 

田中 分かりました。建築の利用に関して著作権法以外に考慮が必要な項目はありますか。

 

國松 著作権は問題ないとしても、商標権には注意が必要です。例えば、東京タワーや東京スカイツリーは、その名称、ロゴ、シルエット、立体形状などが、グッズ販売などのジャンルで商標として登録されています。したがって、ミニチュアを作成したり、Tシャツにロゴ、シルエット、立体形状を無許諾でプリントしたりすることは、商標権侵害となります。

 

田中 建築物をミニチュア的に複製する行為については著作権法では問題なくても、それを商用利用する場合には商標権にも配慮する必要があるということですね。ところで、建築物の撮影規模や写真と動画撮影の違いはありますでしょうか。

 

國松 著作権や商標権では、撮影規模や写真と動画の区別はしておりません。例えば、ゴジラが新宿の高層ビルを破壊するシーンや映画『日本沈没』の津波シーンでフジテレビの建物が流されるシーンなど、商業的に大きなケースであっても、実際にフジテレビの社屋を建築してしまうような場合は別ですが、そうでなく、CGやミニチュアで再現する範囲であれば特に許諾を得る必要はありません。ただ、法律的な問題かどうかは置いておいて、劇中での使い方などによっては、場所のイメージが悪くなる、居住者や利用者が良い気持ちがしないといった反響に繋がることがあります。そのため、トラブル回避のために関係者への事前説明など、ケースによっては一定の配慮が必要な場面はあるでしょうね。

 

 

 

■ 回答者プロフィール
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