「話しかけるたびにスタッフが減っていきます(笑)」 自由奔放な街歩きが人気!高田純次の冠番組『じゅん散歩』撮影の裏側
高田純次さんの街歩き番組『じゅん散歩』(テレビ朝日系)から、高田さんが番組中で描いた絵を厳選した画集「じゅん散歩画集 一歩一絵」(文化工房)が4月13日から販売されている。テレビ朝日の通販サイトで先行販売している分はすでに「ほぼ完売」と好評だ。
2015年10月から放送開始した本番組は平日の9時55分から30分間の放送。街行く人や入った施設の人たちと高田さんが交流し、最後には絵をかいて終わるというのがお決まりのパターンだ。平日午前という放送時間にもかかわらず着実にファンを増やしてきた本番組の制作の裏側を、チーフプロデューサーの江頭孝之さんとチーフディレクターの林大輔さんに聞いた。
「高田さんはスケジュール見てないです」
御徒町を歩く高田さん(2018年12月放送)
『じゅん散歩』は地井武男さんが歩く『ちい散歩』(2006年4月~12年5月)、加山雄三さんが歩く『若大将のゆうゆう散歩』(12年5月~15年9月)の跡を継いで始まった。高田純次さんは3代目の散歩人で、22年10月からは遠方の町を旅する『午後もじゅん散歩』(金曜13時54分~14時52分)もスタートし、人気を博している。
高田さんに散歩人が代わってから、徐々に今の番組スタイルになっていったようで、
チーフディレクター・林大輔さん「番組が始まる時に高田さんに伝えたのは、街を楽しんでくださいということくらい」
チーフプロデューサー・江頭孝之さん「街歩きの楽しさだとか出会う人との楽しい会話とか、そういうものを楽しむという方向に自然と流れて、同じ尺の放送でも笑っている時間が長い、面白いシーンが多いといったふうになっていきました」
しかし高田さんも最初は試行錯誤していたという。ロケから放送までは、タイムラグがある。何度かのロケ後に初めてオンエアを見た高田さんは、
林さん「ようやくどんな番組かわかった、と(笑)。それ以降、お店に行っても“ここはいつから?”とか、そういう情報を自然と聞いてくれるようになりましたね」
1週間5本分を1日で撮るという『じゅん散歩』。それができるのも、高田さんだから。
江頭さん「人との触れ合いがスムーズというか。初対面で相手の心を掴んで、そのまま話の本題に入り、笑いに持っていき……。ロケ歴も長い方ですし、すごいとは聞いていましたが、目の前で見ると本当に天才としか言いようがない。編集で捨てるところがない感じです」
番組の最後に書く風景画が画集に(2019年12月放送分)
撮影のスケジュールはあるものの、“一応”レベルで
林さん「高田さんはスケジュール見てませんね。」
江頭さん「流れの中で人に話しかける。それでも断られませんし、向こうも面白がってくれて、会話が成立するんですよね」
林さん「話しかけた後は、放送許可などを取るためにスタッフを一人ずつ残していくので、だんだんスタッフの数が減っていきます(笑)」
突然の街の人への声かけから、その後のスケジュールが変わっていくこともあるという。
林さん「僕らは街を用意するだけです」
江頭さん「ちょっとドキュメンタリーみたいなところもあるかもしれませんね。何が起こるかわからないっていう。撮影前に、ディレクターは何度も同じところを歩いて街の様子をみたり、商店街の方々と人間関係を作ったり。でも当日、高田さんが全部ひっくり返す(笑)。それが結果として面白かったりすると思いますね」
変わりゆく街を定点観測
調布の母校を訪ねる高田さん(2019年12月放送)
林さんは「街を用意するだけ」と言うが、今夏には放送2000回を迎える。制作上、難しいと感じていることを尋ねると、
林さん「同じ街が多くなってきてしまうことですね」
江頭さん「3年くらい番組が続くと、だいたい街を一巡して、そこからが腕の見せどころというような引き継ぎを受けました」
林さん「例えば10月はスポーツの日があるので国立競技場、高田さんの誕生日あたりに調布というような、なんとなくの決まりがいくつかあります。なかでも高田さんが生まれ育った調布は特別な味わいが出る街ですね」
加えて、新しいスポットは優先的に取り入れるという。その点では、「幸いなところもある」といい、
江頭さん「東京がこの数年、ものすごく変わっていて。渋谷、有楽町、虎ノ門……。再開発で話題になる街以外にも小岩とか津田沼とか、番組が続いてく中で最初に行った時と次に行く時では全然景色が違っていたりする。それが散歩の楽しみ方の一つに、最近はなっていますね」
林さん「定点観測の楽しみがありますね」
江頭さん「そういう楽しみ方ができるのは、長く続いているからということもあり、毎日放送しているからのような気もします」
渋谷を定点観測する高田さん(2019年12月放送)
例えば、渋谷。100年に一度といわれる再開発は続く。では、『じゅん散歩』も……?
林さん「最近も、“あとできて30年だな”って高田さんが。まだ30年できると思ってくれているならうれしいです」
変わりゆく東京の街を見守る『じゅん散歩』。高田さんと一緒に街の変化を楽しめるのも醍醐味だ。
出典:ロケーションジャパン5月15日発売号