『あまちゃん』の監督最新作が劇場公開 福島の立ち入り制限区域内を描く
連続テレビ小説『あまちゃん』や『その街のこども 劇場版』の井上剛監督の最新作、『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』が今月23日から順次全国にて公開される。
本作は、東日本大震災の影響でバラバラになった同級生たちが再会し、福島の立ち入り制限区域内にある母校へタイムカプセルを掘り起こしに行くロードムービーだ。福島から避難して神戸で暮らすヒロイン・朝海を石井杏奈(E-girls)が演じているほか、渡辺大知(黒猫チェルシー)、木下百花(NMB48)、柾木玲弥、前田航基らが出演している。
昨年3月に全国放送されたドラマに未公開シーン26分を追加して、兵庫と福島で限定的に放映された再編集バージョンが劇場公開となる。
取材などを含めると3ヶ月ほど福島に滞在したという井上監督は、南相馬市でお気に入りのバーを見つけて地元の人との交流を楽しんだそうだ。そこで出会った人の印象を聞いてみると「明るかったですね」と井上監督。「くだらない話ばかりしました。そこに来る人たちもやっぱり、なんだか、くだらなさを求めていらっしゃって」。
本作では、そのバーで出会った人をはじめ地元の人が出演しているお祭りのシーンがある。
「夜は入れないエリアで特別に許可を頂いて撮影したんです。浪江を去った人たちや、南相馬にいらっしゃる人たちが、震災以降に初めて顔を合わせて『元気だった?』と盛り上がっているところを撮影してるのがあのシーンなんですよね。一晩だけ自分の故郷に戻ってきた人たちなんです。そのシーンの撮影は終わっても延々と祭りが続いていましたね。自分たちの祭りをされていました」。
本作では冒頭で、夕日に染まる被災地に対してヒロイン・朝海から「変だよ、すごくきれい」というセリフが登場する。複雑な感情とジレンマを含んだこのセリフについて、井上監督は「言っちゃいけないんだろうけど、きれいに見えたんですよね。思っちゃったものはしょうがないですもんね。実際に本当に綺麗だし。このセリフが言えるようになるまで、何が必要だろうと思いながら撮影を進めていました」と話した。
本作は、被災後の福島に初めて足を踏み入れた登場人物のリアクションが、ドキュメンタリーのようにとても自然に映っている。そのポイントを井上監督は「なるべく役者に“想像させる”というか、“見せない”」ことだと明かす。
「僕らが先回りして撮影隊が待ち構えていてそこに役者が現れるというのではなくて、彼女たちを先に行かせて後ろからカメラで撮りながら徐々に撮影隊がその場所に入っていくという撮影をしていましたね。シーンだけを切り取ってそこだけを撮影しようとすると出来ないもんなんですよ。だからカメラが数時間回っていることもありました」。
『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』は、今月16日よりフォーラム福島、シネマート心斎橋、元町映画館にて先行公開され、今月23日より東京のシアター・イメージフォーラムほかにて順次全国公開される。
『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』
【スタッフ】監督:井上剛/脚本:一色伸幸/音楽:大友良英、Sachiko M
【キャスト】石井杏奈 渡辺大知 木下百花 柾木玲弥 前田航基
津田寛治 二階堂和美 皆川猿時 ともさかりえ 南果歩 中村獅童
【制作・著作】NHK
【協力】NHKエンタープライズ
2015年/日本/カラー/DCP/100分
配給:トランスフォーマー
(C)2015 NHK
公式HP:http://livelovesing-movie.com/
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